ろぐを書こうとサイトを開いて日付を確認したら、早いものでもう12月である。そう思うと、つい振り返ってしまいたくなるのだが、まあ概して嫌なことはなかったはずだと開き直って向き直る。
今回は溜まっていた音楽ネタの大物として、イギリスのサックス奏者ルー・ゲアについて書いておこうと思う。
僕が彼のことを知ったのは数ヶ月前。ウィスキーを呑みながらApple TVを使ってYouTubeで気ままに映像や音楽を流し視していた時に、たまたま彼の演奏に巡り逢った。
僕もフリー系を含め幅広い意味でのジャズという音楽を聴いてきたけど、今に至るまで彼の名前にはまったく馴染みがなかった。何かの記事で見かけたとか、誰かの話の中で耳に挟んだとか、そう言う記憶も一切ない。単にまだ経験が浅いということか。
サックスの世界でルーと言えば、間違いなく最初に名前が挙がるのはルー・ドナルドソン、次いで出るのはおそらくルー・タバキンだろう(カタカナでは同じルーでも綴りは異なるのだが)。3番目のルーについては、ゲアのことを知るまでの僕の頭のなかには名前のストックがなかった。
興味を持って調べたところ、ルーはヨーロッパ即興演奏の草分け的グループ"AMM"の初代メンバーとのこと。僕自身はその頃のAMMの音は聴いたことがなかったので、知らなかったのも仕方ない。
そういう経歴なので彼についてはフリー系の演奏家という記述が目立つが、実際に手に入れることができるいくつかの演奏を聴いてみると、ロリンズやコルトレーンをベースにサックスの腕を磨いた堅実なジャズプレーヤーであることがわかる。
"No Strings Attached"はルーが2005年に発表したテナーサックス1本のソロアルバムである。この時彼は66歳。先のYouTube動画にある演奏に近い内容で、彼の豊かな音色とフレーズにどっぷり浸ることができる。これを作品として遺してくれたことに大きく感謝である。
ルー・ゲアについて一番まとまった記述があるのは、おそらくジャズオーケストラの主催者であるマイク・ウェストブルックのサイトにあるこのページだろう。
マイクがルーとの共演のなかから選んだ彼のベストテイクで構成されたアルバム"In Memory of Lou Gare"も、聴き応えのある素晴らしい作品である。サイトには彼のオーケストラで演奏するルーの貴重な映像も視ることができる。
なお、今回の"No Strings Attached"を含むAMM時代のルーのいくつかの作品は、イギリスの音楽サイトCafe OTOからダウンロードで購入できる。
ルーは昨年の10月に78歳で他界したが、音楽人生においてはいろいろな遍歴があったようで、時には対立や袂を分かつこともあったようだ。晩年はイギリスで日本の柔術を教えたりして暮らしていたそうだ。
54年目の師走にふと振り返りかけた人生。いろいろと思うことはあるけれど結局は生きて行く限りは時の流れる方向をしっかり見ながら運転を続けるしかない。
高村光太郎の有名な詩の一節が浮かんだりもしたが、とてもそこまで誇れるものはまだ残せていない。
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