1/31/2010

ほやの薫製

この土曜日は仕事で参加している団体の研修があり、土浦にある某生活用品の企業が運営する研修センターに日帰りで出かけた。自宅がある山手から、京浜東北線で上野まで行って、そこから常磐線の特急列車で45分行くと土浦に着く。そこから送迎バスで20分程走った、霞ヶ浦の湖畔にその施設はある。

本来は合宿研修なのだが、翌朝朝食を食べたら解散ということを聞いて、週末2日がつぶれるのはいやだなと思い、土曜日の懇親会が終了したらすぐさま帰宅するというプランを強行することにした。朝8時に自宅を出て、家に帰ったのは夜の11時だった。

なかなか楽しめた研修だった。プレゼン大会で僕のグループが1位になり、商品のドンペリを生まれて初めて(少しだけだが)飲んだ。モエ・シャンドンをもっと研ぎ澄ましたような、まろやかな味わいだった。

ところで、行きの常磐線特急列車のなかで、下車間際に車内販売でやってきたワゴンのなかに「ほや」と書かれたキャラメルの様な箱を見つけてとても気になっていた。帰りの列車でもやはりワゴンが回ってきたので注意深く観察するとやはりそれはあった。僕はすぐにワゴンを押す女の子を呼び止めて尋ねた。

「すいません、(箱を指差して)これは一体なんですか?」
「え?あ、あの、こちらは『海のパイナップル』と呼ばれているものでして・・・」
「ええ、ホヤでしょ、知ってますよ。それでこれはそのホヤをどういう風にしているものなんですか?」
「(箱を手に取り何か答えがないかと捜しながら)ええ、あのこちらは『海のパイナップル』と呼ばれているものでして・・・」

このお嬢さんはホヤが何であるか知らないらしい。これ以上問うてもかわいそうなだけなので、僕は320円を支払ってそれを買った。どうやらホヤの薫製らしい。

家に帰って食べてみたが、これがなかなか美味しかった。確かにあのホヤ独特の風味はあるが、薫製にすることで臭みの様なものはかなり抑えられて、代わりに甘みが出てまるでウニの様な味わいである。

少し調べてみると、三陸方面では結構ポピュラーな産品らしい。初めて食べたのだがなかなかの珍味である。ドンペリと並んで休日出張の意外な成果であった。

エヴァンスの話をもう少し

予想通り、この1週間は明けても暮れても、前回ご紹介したエヴェンスのライヴ盤をひたすら聴きまくった。たぶん全体を通して10回は聴いたはず。そうして見ると、演奏は時を追うごとに凄みを増していくのがよくわかる。5枚目6枚目になってくると、それはそれは凄まじいエネルギーである。

ラストの"My Romance"は演奏が終わっても熱の冷めやらぬエヴァンスが、クロージングテーマで演奏する"Five"をそのまま次の演奏曲としてなだれ込んでしまい、テープが足りなくなると判断したエンジニアが、やむなくフェードアウトする様で終わる。本来なら不満の残る終わり方だが、何か「この凄まじい演奏は永遠に続きましたとさ」と思わせるようで、それさえも許せてしまう気分だ。

ここまで来ると、このトリオに対する興味は否が応でも高まる。このトリオでの他の作品といえば、過去にご紹介した"Paris Concert"の他に、死の2週間前に収録されたキーストンコーナーでのライヴ盤がある。このときの録音は2種類のCD8枚組で発売されている。しかし、僕はこのセットは買わない。

確かに聴いてみたい気はするが、既に多くのレビュー等で書かれている通り、演奏時のエヴァンスの状態はかなり悪い。当初はその中から厳選した演奏がアルバム"Consecration I, II"という2枚にわけて発売されたが、2000年以降8枚組のボックスセットが相次いで発売された。

そのことを知ったベーシストのマーク=ジョンソンは「反則だ」と叫んだという。案の定、世の中には「自らの死を予感したかのような鬼気迫る演奏が感動を呼ぶ」とかいった、宣伝文句やレビューが溢れている。僕は正直なところあまりそれを信用する気にはなれない。

こういう作品のことで僕の脳裏を横切るのは、チャーリー=パーカー絶不調時の演奏で有名な"Lover Man"とか、ディープ・パープル最後の日本公演時における、トミー=ボーリンの悲惨なギター演奏を収録したライヴ盤といったものだ。最近では少し前に触れたスタン=ゲッツの"People Time"のコンプリートセットもそうだと思う。

もう何度も書いていることだが、アーチストの意向を無視して発売された音楽には気をつけなければならない。それが死の直前の演奏だとか、ある種の苦境に苛まれている時の演奏であれ、アーチストにとって満足のいくものであれば構わないが、多くはアーチストのコントロールが及ばない状況で、権利者とある種の取引の結果として発売されるケースがほとんどである。

そして、そういう演奏を売り込む手段として、お涙ちょうだい的な文言が飾り立てられることになる。確かにその話を聞いて演奏を聴けば、そういう気持ちになることができる場合もある。そこに芸術本来のものとは別の種類の感動が生まれることも否定はしない。

しかし、確実に言えるのはそうした音楽は決して長く顧みられることはない。つまり、買った人の元でも結局は「お蔵入り」になるのである。それらはパフォーマンスでありドキュメンタリーなのだから。

ちょっと話題がそれてしまったが、僕はとりあえずこのトリオのライヴ映像を収録したDVDがあったので、それを注文することした。内容が素晴らしければまたこのろぐでご紹介したいと思う。

いまもこれを書きながらその演奏を聴いている。エヴァンスがこのトリオを当時から20年前のトリオに引けを取らないとした言葉は、ますます強く実感される。本当に素晴らしい演奏だ。来週もまだ十分楽しめるような気がする。「聴かずに死ねるか」とは、まさにこういうアルバムのことを言うのだろう。

(追記)
文中で触れたディープ・パープルのライヴアルバムは、最近になってサウンド面での問題とドキュメンタリーとしての本来の内容(往年のヒット曲ではない当時のバンド本来のレパートリー)を復元することで、一定の評価を得るものとして再発されていることを知った。しかし、それとてトミー=ボーリンの意志には反したものであることには変わりないだろう。

1/24/2010

これがビル=エヴァンスだ!

おかげ様でお腹の風邪はすっかりよくなりました。子供もまだ少し便通が緩い状態ですが、食欲の方も少しずつ取り戻しています。ご心配おかけしました。

年始にディスクユニオンの買取キャンペーンがあるというので、正月休み明けから妻と子が広島の実家に帰った間にせっせとCDの整理を行い、ジャズ関係のものばかり130枚くらいをまとめて処分した。

査定結果は6万円と少し、まとまったお小遣いとしては悪くない結果だ。やはり買取の事情も確実に変わってきている。全体的な査定水準が下がってきているし、フュージョン色の濃いもの(例えばブレッカー・ブラザーズ・バンドなど)は買取を断られるようになった。

もちろん、いまもっているすべてをいずれ手放すというつもりは毛頭ない。一時期、興味の赴くまま手当り次第に蒐集してきたもののなかから、印象が薄いものや完全に興味を失ったものなど、僕にとって価値が無くなったと思われるCDをリサイクルするということだ。

そんな「この先もうあまりCDを購入することはないのかなあ」、という雰囲気が充満するなかにあって買ってしまった、僕にとって「最後の箱モノ」になると思われる作品を今回はご紹介したい。ジャズピアニストのビル=エヴァンスが最晩年にヴィレッジヴァンガードで行った演奏をCD6枚組にまとめた、"Turn Out the Stars: Final Village Vanguard Recordings"がそれである。

「ビル=エヴァンスの最高傑作は?」の問いに、リヴァーサイドに残されたラファロ、モチアンとのトリオによる一連の作品、とりわけ"Portrait in Jazz"と"Waltz for Debby"をあげる向きはいまも圧倒的に多いと思う。

もちろん僕自身も少し前まではそう信じていたのだが、今となっては、エヴァンスの黄金期は、マーク=ジョンソン、ジョー=ラバーベラとの最後のトリオだというのが僕の考えになっている。これは以前このろぐで"Paris Concert"をご紹介した頃からそう思う様になったのだが、今回改めてこのボックスセットを聴いてみてその思いはさらに確たるものとなった。

エヴァンスの音楽を、ラファロの死で進化の時間が止められてしまったかの様に考えるのは、彼に対して失礼だ。その後本当にいろいろなことが彼の人生には起こるが、ピアノを追求し続けるなかで再び訪れた大きな巡り合わせが、この素晴らしいトリオだと思う。

残念ながら、ラファロ、モチアンの次に人気が高い(と思われる)ゴメス、ディジョネットとのトリオによる作品、例えばお城のジャケットで有名なモントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ盤も、このトリオの演奏の前にはかすんでしまう。おそらく次にCDを処分する機会でおさらばとなるだろう。

"My Romance"や"Autumn Leaves"、"Nardis"といった往年のレパートリーから、"Theme from M*A*S*H"など最新のものまで、とにかく強力にドライブするトリオ演奏はただただ感動的である。これこそがビル=エヴァンスだ。

断っておくがこれはいわゆるコンプリート盤の類いではない。4夜に及んだ演奏のなかから選りすぐりのテイクを集めたらCD6枚になったというものであり、まったく無駄のない内容である。当初高価だったこのセットも今回は非常にお求めやすい値段で復刻されている。少しでも興味のある方は、この機会に是非聴いてみて欲しい。

1/19/2010

おなかのカゼで総倒れ

先週もいろいろなことがあった。ご紹介したい音楽もタマったまんま。しかし・・・。

日曜日の夕方から家族揃っておなかにくる風邪に罹ってしまい、一家総倒れとなってしまった。一番症状の軽かったのは僕。一番重かったのは(たぶん)妻だった。妻が満足に活動できなくなると、それはそれは辛い状況である。

本能の赴くままの子供は、容赦なく吐くわ下痢をするわで、わずか2、3時間であっという間に2日分くらいの洗濯物の山ができあがってしまった。離乳食を始めて以来、久しく見ていなかった軟らかいウンチ。成長して量が多くなったからか、簡単にオムツから溢れ出してしまう。やれやれ。

結局、月曜日は仕事を休んで家族3人で病院へ。ノロウィルスとかインフルエンザではないとわかって少し気が休まった。それでも家に帰ると大人2人はしっかりと発熱。結局子供が夜にミルクを少し飲んだ以外は、家族揃ってお茶とかスポーツドリンクを口にしただけで、あとはひたすら眠った。

親2人とも子供を抱っこするのが少々つらい。僕の体重は2日前に比べて1.5キロ減った。絶食の効果は凄まじい。幸いにして子供はお腹の調子が悪い以外はいつもとそれほど変わらずに、笑ったり泣いたりしているのだが、心なしか子供も少し軽くなった様に感じられて、やっぱりかわいそうになってくる。

火曜日の今日も仕事はお休み。熱はだいぶん下がり、昼にはようやく食欲らしきものがでてきた。しかしまだお腹はきゅるきゅるなっていて便通らしいものがない。朝昼おかゆと梅干しで過ごし、果たして夜は何を食べられるのか。そろそろうどんでも食べたいなあ。

とまあ、こんな状況でありますので、今回のろぐはここまで。

1/12/2010

ヘイリー=ローレンの歌声

今回はヘイリー=ローレンという女性ヴォーカルの作品をご紹介。

昨年の秋頃だったか、ディスクユニオン新宿ジャズ館のブログで紹介されていたのが気になって購入した。買ったといっても残念ながらユニオンでは既にCDは売り切れ、アマゾンやアランの店でも状況は同じだった。そしてたどり着いたのが、アップルのiTunes Storeだった。思えば、これが僕にダウンロード販売への改心を決定づけた作品だった。

これは2008年発表された2枚目のアルバム。ヘイリーはピアニストでもあるのだが、本作品ではヴォーカルに専念して、オリジナルやスタンダードソング14曲を歌っている。スタンダードは"God Bless the Child"や"As Time Goes By"のようなものから、オーティス=レディングの"The Dock of the Bay"やプロコルハルムの"A Whiter Shade of Pale"といったものまで様々であり、察するところ「私の大好きな歌のアルバム」といった趣向である。

どちらかというと個性の強い作品ばかりなのだが、いずれの曲もさらりと歌ってのける風に仕上がっており、それでいて不思議と印象に残る。決して彼女の歌声に際立った強い個性があるわけではないのだが、選曲や曲順も含めどこかのジャズバーでのライヴの様な雰囲気のうちに引き込まれ、気がつけばワンステージが終わっているという感じである。

iPodにダウンロードされたこのアルバムを、12月以降僕はちょくちょく聴いている。場所は自宅のリヴィングだったり、仕事帰りの電車の中だったり。どこで聴いても彼女の歌は僕の中にいいブレイクをもたらしてくれる。いまのところはホームであるオレゴン州を中心に活動しているそうだが、この不思議な爽快感はやはりオレゴンで育まれたものなのだろうか。

年が明けてもなかなか新しい気分に切り替えられずにいる方も多いことだろう。彼女の歌を聴いて束の間のリラックスを楽しむのは悪くないだろう。幅広い方におすすめしたいヴォーカル作品である。

Halie Loren - They Oughta Write a Song ←iTunesでダウンロード

1/03/2010

謹賀新年 2010

新年あけましておめでとうございます。

サブタイトルを「音楽で綴る僕の1週間」から変更。完全なる思いつきだが、こちらの方がこのろぐの内容にあっていると思う。酒に関するキーワードを入れようかとも思ったが、それは別のところで表現することに。

それとともに少しサイトのデザインにも手を加えた。タイトルの背景に、この正月に港の見える丘公園から臨んだ日の出前の横浜港を入れ、それに合う様にページの背景色を少し色褪せさせて、自分の年齢と酒酔いを表現してみたつもりである。

いやあ、正月休みは本当にのんびりしました。9日間のほとんどを横浜近辺で過ごし、毎日子供を抱っこして散歩して、ご飯を食べさせ、お風呂にも入れた。体重が10キロを超えた子供を長時間の抱っこするのは肩や腰にかなりくる。妻と2人でピップエレキバンの効能を実感しながらも、ストレスにまみれた仕事疲れとはまったく異なる、心地よい疲れを毎日楽しんだ。

夜を中心にいろいろと音楽も聴いたし、もちろんほぼ毎晩酒も飲んだ。いろいろとご紹介したい音楽があるので、次回以降少しずつ書いていきたい。今回は写真を少し。


元日の朝、2階のバルコニーから撮影した自宅の裏の隣地に自生する樹。枯れ葉の掃除は大変だしみなとみらいの景色は遮られるしなのだが、やはり樹はいいものである。これだけの大きな樹をなんの義務を負うこともなく、庭木のつもりで窓から眺められるのはやはり有難いことである。


正月の2日の朝、日の出を見るために独りで港の見える丘公園にウォーキング。これはそこで観た日が昇る10分程前の横浜港の風景である。とてもきれいだった。しかし寒かった。15分程歩くのをやめて日の出を待ったら身体が冷えてしまい、あやうく風邪を引くところだった。それにしても横浜はやっぱりきれいな街だ。


2010年もえぬろぐをよろしくお願いします。(^^)/