11/25/2018

鈴木秀美「J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全集」

3連休は冷え込みも強まったけど秋晴れの過ごしやすい3日間だった。

子どもの野球で試合が2戦あり、応援に行きがてら歩いたり、家で音楽を聴いたり少し本を読んだりベースを弾いたりして過ごした。

日曜日は近所のチーム同士の因縁?の一戦があって、監督やコーチ、子どもたちも意気込んで臨んだのだけれど、こちらのチームにはよいところがなく、力の差を実感させられる形で終わってしまった。子どもも頑張ったとは思うけど悔しさは忘れないでほしい。

勤労感謝の日の夕方に試合があった産業振興センター野球場での1枚。秋の空独特の青である。


土曜日の夕方にウォーキングに出かけた本牧山頂公園からの夕暮れ。時間に余裕があるならこの時間に歩くのもいい。



さて音楽の方は3週続けてこうなってしまった(先週のろぐタイトルを変更しました)。ヴィオラ、コントラバスと続いたのでやはり締めはオリジナルにということで、前回のろぐで紹介した鈴木秀美のバロックチェロによる2004年の全曲演奏。

これ、冒頭の第1番プレリュードの弾き出しを聴いただけで、もう「かぁぁぁぁ!」と極上のノックアウト。演奏はもちろん音色が本当に素晴らしい。ハイレゾとかである必要はない。

聴き進めていくうちにやっぱり気になったのが第3番。冒頭のプレリュードはバッハのメカニカルなアルペジオが独特の拡がりを響かせるのが魅力なんだけど、どうしてこんなに速く弾くのかなあ...。やっぱり僕も歳とったのかなあとか想いながら、ちょっと残念な気持ちがした。

まあそれでも全編通して極めて素晴らしい演奏。今回のバッハ祭りで巡り会えた一生の宝物である。

本来なら年明け早々に横浜でこのバッハの無伴奏チェロ組曲の演奏会を予定されていたらしいのだが、体調の不良で公演がキャンセルになったのだそう。今61歳とのことなのだが、なんとか生で鑑賞できる機会があることを望んでいる。

芸術の秋。バッハのこの作品をどれか1セットということならば、迷わずお勧めしたい作品である。

11/18/2018

ゲイリー・カー「J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全集(コントラバス版)」

寒さが少しずつ増してきているけど、この土日は横浜で過ごしたおだやかな週末だった。

土曜日は12キロのウォーキングの後、野球から帰った子どもに合流する形で近所のお友だちがやってきて、家でゲームに興ずるのを見守る午後だった。

無邪気ながらもこれから大人になっていく個性の片鱗を感じさせる年頃の男の子2人が部屋で遊んでいる空気の中で過ごすのは、懐かしさと緊張が入り混じった不思議な感じがした。

日曜日は久しぶりに子どもの野球の試合を応援に、歩いて30分ほどの小学校へ。

今後に行われる他の大会への出場権もかけた大切な一戦ということで、新しいコーチのもと、ある程度の準備と戦略を立てて臨んだ試合だったが、結果は見事9対0で勝利を納めた。

子どもも不得手なバッティングはともかく、スクイズやベースカバーなどで地味ながらもそれなりに活躍し、家に帰って褒めてあげた。

夜のお楽しみは、先週訪ねてきてくれた知人が、お土産代わりにと贈ってくれた、ケンタッキーウィスキーのジェントルマンジャック。

若い頃ならならストレートで飲まないと勿体無いと思ったものだが、さすがに身体への負担も厳しいので、ジンですっかりお馴染みのソーダ割りで楽しませてもらっている。

このところの世の中のハイボールブームで出回っている居酒屋とか缶入りで飲むものは、あくまでもハイボールであって、要するに種になっているウィスキーはある意味でどうでもいい、言わばウィスキー味の酎ハイである。ウィスキーの味はするけど当然のことながら薄い。

僕がソーダ割りと言っているのは、食堂などで水を飲むのに出てくるものと同じくらいの大きさのグラスに、氷を数個入れてウィスキーをワンショット注いで、そこに同量か少し多い程度のソーダを注ぐもの。

ダブルの水割り程度の濃さがあるのでウィスキー本来の味はしっかり残り、それにソーダの清涼感が醸し出すかすかな甘みがプラスされることで、少しお高い酒でも本来の風味を豊かな味わいで楽しめる。

お酒はいいんだけど、最近はちょっと飲み過ぎかなと思わないでもない。禁酒日を思い切ってあと1日増やしてみようかななどとも思っている。


さて、溜まった音楽ネタをと思ったのも束の間、いつものことではあるのだけど、現在、僕の中では「バッハ無伴奏チェロ組曲祭り」が絶賛開催中である。

今回はそのお祭りの最中に出会った、ちょっと変わった同曲の作品を2点ご紹介しておきたい。

最初は、オランダのNetherlands Bach Societyの企画による、6人のチェロ奏者が1人1曲で6つの組曲それぞれに取り組んだ超個性的な作品集。全編がYouTubeで公開されている。

曲の個性と演奏家の個性が、全曲集に比べて際立って濃く出ていて面白く、6曲まとめて聴いてみると、こういう楽しみ方もあるんだなと気付かされる。

例えるなら、バーで同じウィスキーで杯を重ねるのではなく、1杯ずつ品を変えて6杯楽しむようなものだろうか。ちょっと違うか…。

以下にその中から2つの演奏をご紹介。

日本人バロックチェリスト鈴木秀美による第5番。



めっちゃ重厚!これ観てやっぱり彼の全集が欲しくなった。

それと、ヴァイオリン奏者セルゲイ・マロフが、”violoncello da spalla”と呼ばれる5弦の肩掛け型チェロを使って取り組む第6番。アムステルダム郊外の古い巨大なガスタンクを元にしたホールで演奏されている。



こちらはもう痛快!ヨーヨー・マの演奏を初めて聴いて以来、この6番に関しては彼の演奏に迫るものがなかなかないと思っていたけど、このマロフの演奏はなかなかのものである。

しかし、バッハが作曲した当時はこれらの作品はもっとゆっくりした演奏だったのだろうね。それとこんなにも抑揚やら強弱は付いていなかったのではとも思う。

1番から4番も含めて、かなり個性的な演奏のオンパレードであり、かつまた映像作品としても優れていて楽しめる。


もう一つは、コントラバス奏者ゲイリー・カーによる全曲集。以前から気にはなっていたのだけど、今回の祭りを機にとうとうCDに手を出してしまった。

ジャズのベースで聞かれるアルコ(弓弾き)演奏が、多くの場合、音がズレていてそれほど魅力的でもないのが多く、ベースの弓弾きはクラシック出身であるミロスラフ・ヴィトウスを聴くまで好きになれなかった。だからカーのことを知ったときもCDにはあまり触手が動いてこなかった。

実際に聴いてみると、さすがにクラシックの大御所。高音で速さを求められる6番のプレリュードなど苦しいところもあるけど、ときにはチェロかと思わせるくらいの雄弁でしっかりとした演奏が繰り広げられている。

前半と後半で録音年が異なるのでかなり演奏の印象が異なる。

一応、僕もエレキベースでちょこっと第1番の第1曲を演奏してみたことがあるのだけど、同じ4弦楽器でも、バイオリン、チェロ、ヴィオラとコントラバス(ベース)は、調弦が5度と4度で全く異なるので、チェロ曲をベースでやろうとするとたとえ練習曲でも運指がエラく大変なことになる。

ベースの調弦に合わせて一部の曲の調をずらして演奏しているのだけど、それ以外はほとんど原曲そのまま弾ききってしまう実力は大変なものである。

ベースに興味がさほどない人にはおすすめしないけど、低音がしっかり出るスピーカーで聴くと、また一層魅力が増すのだろう。

僕もまた少しチャレンジしてみたくなった。もちろんこんなレベルは毛頭不可能だけど、即興演奏の対極にあるものとして何かに取り組むなら、この作品はとても魅力的であることを再認識した次第である。



11/11/2018

キム・カシュカシャン「J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全集(ヴィオラ版)」

週末、大学来の付き合いである音楽仲間が神戸から来訪。付き合いの長さや深さを考えると、ほとんど幼馴染と言って差し支えない人である。

土曜日の夜に石川町の料理屋で僕の家族と会食したり、翌日曜日には横浜のスタジオで久しぶりの音合わせをしたりして楽しんだ。

お互い仕事だ家庭だ趣味だといろいろあって、なかなかこうした機会を持つことができずないままかなりの年月が過ぎてしまったけど、今回こうして時間を持つことができたのは、僕にとっても本当によい機会となった。あらためてお礼を申し上げたい。

久しぶりの音合わせは、関内にあるレンタルスタジオで日曜の朝から2時間。僕にとってはほぼ十数年ぶりのスタジオとなった。愛用のTUNE WBをアンプにつないで大きな音で鳴らしたのは考えてみれば今回が初めてかもしれない。

家で独りで弾くのとは違って、やっぱりいろいろと思い知らされることしきりである。指は動かない、音程もリズムも不安定で、フレーズは弾くたびに「またこれか」と自分で呆れることの連続であった。やっぱり客観性を一人で保つのはほぼ不可能ということだろう。

スタジオを終えた後は関内から観光客で賑わう山下公園を回って2kmほど散歩を楽しんで、横浜の港を見物しながら遅いランチに僕がいつも行っているピースフラワーマーケットのハンバーガーを食べさせてあげた。

いつもだったらコーヒーかティーをセットにするのだけど、彼がビールをリクエストしたのでお店のお勧めでグースのIPAをやることに。


初めて飲んだけどキレとクリアな味わいは、スタジオ疲れで空いたお腹と頭にグッとキました。まあこんな機会がなければここでビールを飲むこともなかったかもね。ちょっとお高いけど。

そのまま彼とは山下公園の氷川丸でお別れして、僕はベースを背負ってバスに乗って家までフラフラと帰ってきた。

空いていたバスの中では音楽のことやら過ぎ去った時間のことやら妻や子どものことやら、いろいろな憶がIPAのフレーバに乗って頭の中を巡った。

おかげでとても思い出深い週末を過ごすことができた。



さて、ネタが溜まりに溜まっている音楽のことを少し書いておかねば。まずは新しいところから。

世界を代表するヴィオラ奏者のキム・カシュカシャンがECMからなんとバッハの無伴奏チェロ組曲全曲集をリリースした。付け加える必要もないだろうけどもちろん全編ヴィオラによる独奏である。

僕はこれをYouTubeのおすすめに現れたECMチャンネルの新作プロモで知った。



このたった1分間の映像で流れるのは、今回のアルバムの冒頭に収められた第2番の第1曲プレリュードの出だしの部分なのだけど、僕はこれだけでノックアウトというか何かとてつもない魅力を感じて、ダウンロードサイトで320kbpsのAACファイルを2600円で購入した。

記憶に間違いがなければ、ジャズ映画「真夏の夜のジャズ」のなかで、ジミー・ジュフリー トリオのベーシストが両切りのタバコを吸いながら上半身裸で練習するシーンでこれを演奏するのを観たのが、僕とバッハのこの作品の出会いだったと思う。まだ大学生の頃だ。

初めて全曲版に触れたのがヨーヨー・マの1983年録音の処女作。その後も元祖カザルスを含めていろいろな演奏作品を聴いてきた。楽譜も持っている。

彼女にとってはこの作品に取り組むことはライフワークであった様だが、今回それをレコーディング作品として発表したことは、やはり演奏家としての一つの節目となる何かがあったからに違いない。

ECMのサイトにある紹介のなかで、キムはビオラについてこんなことを語っている。
“The viola is still in a state of flux, of experimentation… It is an absolutely flexible tool that can respond to the player’s imagination perhaps more than any other."
ビオラという楽器についてここまで言い切るのもスゴイと思うし、そのうえで今回の作品を聴いて、僕はそのことにとても説得されてしまったと感じている。要するに彼女のファンになってしまったのだ。

この全集を収録した作品は、演奏者の意図なのか単に収録時間との関係なのかはわからないけど、必ずしも1番から6番までが順番に収められているわけではない。

しかし全集の中で重い短調の作品である2番を冒頭に置いたところに、彼女のこの作品に対する自信を感じる。それがあのビデオにもはっきり表れていて、僕はそれにまんまとヤラレてしまったのだろう。

全集で発表するには、どの演奏家も当然のことながらすべての作品の表現に一定の自信を持って臨んでいることと思うのだけど、ある種技巧的な観点で自信をみなぎらせてこれらを弾ききった作品という意味では、やはりヨーヨー・マの右に出るものはないと思う。

バロック作品して驚異の難曲である第6番の素晴らしさは、最初にヨーヨー・マの演奏を聴いてしまった耳には、他の演奏はどうしても一歩劣って聴こえてしまう。

しかし、このキムのヴィオラ作品はそうした技巧云々の問題を超えてしまって、先ほど彼女自身が語っているヴィオラの魅力をこの作品を通じて存分に発揮して表現しているという点で、従来僕が聴いてきた同曲の演奏とは全く異なる体験が素晴らしい。

少し前にヴィオラの魅力について書いたが、今回の作品でそれが僕の中で一気に確信に変わった。素晴らしいです!イチ推し!

11/04/2018

TOKYO DRIFT 2018

文化の日の週末は、以前から子どもと楽しみにしていたモータースポーツイヴェント"TOKYO DRIFT 2018"を、お台場特設会場に2日間かけて観戦に行ってきました。

11月3日の国内大会D1グランプリシリーズ最終戦の開会式。ゆりかもめ船の科学館駅とZEPPダイバーシティの間にある駐車場に作られた特設会場に出走する国内24台が集結です。


11月4日の国際大会FIA IDC 2018の開会式セレモニーの一環として行われた、D1選手によるデモンストレーションラン。さすがに巻き上がる煙の量も半端なかったです。


スマホで撮るのはかなり厳しい状況でしたが2日間に渡る熱戦をほぼ最初から最後までしっかりと楽しみました。

初日は子どもと2人で楽しみ、2日目は午後から妻も合流しての観戦でした。2日目ま冷たい小雨模様の時間帯もありましたが僕はさほど気にはならなかったです。


子どもがここで何を感じて学んだのか、いちいち確認はしませんが、日本と世界という社会の拡がりとそれをつなぐ人間の文化の存在を、様々な音や匂い、普段見ぬ人々の生き方を通じて感じてもらえたと思います。

遊びとか勉強には境目はないです。子どもの好奇心を遮ったり否定してはいけません。これは僕にとっても素晴らしい体験でした。来年また開催されるのであれば是非また観に行きたいです。

今度観るとしたら気になるのは国際大会FIA IDCの方かな。日本が発祥だと言っても世界の文化になってしまえばそこには何も奢ることはないのですね。

今回も非常に不本意な内容になってしまいました。音楽の話が自分の中でどんどん進んでいるのですが、なかなかここには書けませんね。