10/27/2007

スティーヴ=コールマン!(その後)

 台風が近づいていて、土曜日の今日外は大雨である。お出かけをあきらめて、久しぶりに朝は遅くまで寝た。家で洋服の整理をしたり、このろぐを書いたりして過ごしている。そうした作業中にも音楽は聴いている。iPod touchにはだいぶん慣れた。以前のnanoに比較して、音は少し良くなったように感じるのだがどうだろうか。

さて、実は結局この1週間というもの、会社の行き帰りには前回取り上げたコールマンの"Invisible Paths"をず〜っと聴き続けてしまった。家に帰っても、ビールを飲みながらまた聴いた日もあった。金曜日の朝などは、会社の最寄り駅を降りて歩く途中、その時聴いていた10曲目"Facing West"の演奏に合わせて、思わず歌ってしまった程だ。う〜ん、やはり予想通りハマッてしまいましたよ。これは素晴らしい!

前作の"Weaving Symbolics"もよかったが、いろいろな編成の音楽を含んだ2枚組だったので、時に耳にするのがしんどいこともあったのは事実だ。その点、今回の作品は全くのソロ演奏のみ。しかも演奏時間は最も長いものでも7分半、たいていは5分以下というシンプルなものばかりだ。

もちろん、ある程度彼の音楽に馴染んだ人の方が喜びは大きいとは思うが、初めての人でも一聴して何かが引っかかったら、とりあえず繰り返し聴いてみるといいだろう。お勧めとしては、3曲目"Possession of Images"、8曲目"Fecundation:070118"、10曲目"Facing West"あたりを差しあたっては聴いてみてはどうだろうか。

というわけで、今回の音楽は前回と同じ。来週もまた同じとなるのが怖いので、ネットで注文している新しい音楽が早く届いて、耳をいったんこの空間から連れ出してくれることを願うばかりだ。

10/21/2007

スティーヴ=コールマン「インヴィジブル パス:ファースト スキャッタリング」

 MacOSの新版"MacOS X 10.5"のリリースが10月26日と発表され、10月1日以降にMacを購入した人には、安価に新OSへのアップグレードが提供されることも発表された。この報を受け、我が家に新しいMacを迎え入れることを決めた。

当初"iMac"にするつもりだったのだが、以前使っていたiBook以来、会社から借りていたWindowsマシンでしのいできた食卓上で使うことを考え、結局"MacBook"を購入することにした。新しいMacを買うのは5年ぶりだった。これが長いのか短いのかは微妙なところだ。アマゾンで「お急ぎ便」を選択、十数万円の買い物に三百円の追加料金は安いものだ。金曜日の夕方に注文し、土曜日の夜には新しいMacが届いた。

いまさら改めて言うまでもないのだが、やはりMacはいい。使いやすいし、持つ喜びが深い。今回から無線LANを本格的に使うことにもなり、ワイドスクリーンの見やすさや新しいキーボードなども含め、使いやすさはいままで以上だ。そんなわけで今回が新しいMacでの初めてのろぐとなる。

仕事がまた少しずつ忙しくなってきていて、また少し緊張が抜けない独特の疲労感を残す週末である。それでも土曜日は渋谷に出かけてみた。前回とりあげたザキール=フセインのもう少しピュアな演奏を収録したCDを求めてみたのだが、結局渋谷では見つけることができずネットで取り寄せることにした。

日曜日には、仕事の知合いで以前から交流のある男が、横浜のみなとみらい地区にマンションを買ったというので、訪問することにした。行ってみると、クィーンズスクェアのすぐ隣にある30階建てのマンションの一室だった。奥様と2歳の娘さんとともに食事をとりながらくつろがせてもらった。

みなとみらいに住むというのは、ある種の憧れ的なことかもしれない。彼らはまだ住み始めて半年だそうだが、やはり一長一短ではあるようだ。何と言っても素晴らしいロケーションはそれとして、生活のためのインフラという面では毎日の食材を買うお店や、病院、学校などの点ではまだまだ課題はあるようだ。

みなとみらい地区の居住施設はこれからも増え続けるというわけではなく、結果的にそうしたインフラが今後どの程度まで整備されるのかについては、不透明な部分もある。過去の例として、神戸のポートアイランドや六甲アイランド、あるいは東京のお台場などのことを考えると、少々気がかりな感じもしないわけではない。

週末は気持ちのよい秋晴れになった。先日買った新しいブーツを履いて気分もよかった。渋谷も横浜もたくさんの人でにぎわっていた。街を行く人の格好もぐっと秋らしくなったように感じた。

僕のアイドルミュージシャンの一人、スティーヴ=コールマンが新しい作品をリリースした。今回は、何とCD1枚に収録された16曲すべてが、彼のアルトによるソロパフォーマンスになっている。こういう企画に僕はとにかく目(耳)がない。発売の事実を知るや、すぐさまネットで取り寄せた。アメリカの業者だったが品物が届くのは早かった。

スティーヴの音楽に特に大きな変化がある訳ではない。しかしソロというスタイルをとることで、僕の耳には彼の音楽の構造美が、よりはっきりと伝わってくるように感じられた。全編通して、目に見えないが確実に存在する「道」に沿うかたちで、滑らかに音の列が紡ぎだされていく。

この手の音楽はできればある程度大きな音でスピーカーと対峙するような姿勢で、さもなくば装着感のよいヘッドフォンでじっくりと味わいたいものである。僕はサックスのソロ演奏によるCDを数枚持っている。そのどれもが非常に素晴らしい音楽であるが、この作品はその中にまた新しい世界を押し拡げてくれる。

これまでのスティーヴの音楽を総括するうえでも、あるいは21世紀の新しいジャズを感じるうえでも、これはきわめて重要な作品であることは間違いない。まだ3回しか聴いていないが、この先聴き重ねていくことに、ある種恐れにも似た期待感がこみ上げてきている。やはりスティーヴ恐るべしである。

10/14/2007

タブラ・ビート・サイエンス「ライヴ イン サンフランシスコ」

 たぶん最初はベースの練習のつもりで、そういうことをし始めたのだと思う。弦を弾く右手の人差し指と中指で、机やら畳やら手が触れたものの表面をリズミカルに叩いていた。そのうちベースの演奏とは無関係に、より細かいリズムを求めてそこに中指が加わり、3連や6連あるいは5連といった細かいリズムを叩くようになった。そこに小指と親指が参加するようになるまでに、そう時間はかからなかったように思う。

いろいろな音楽を聴くようになってインドの音楽に触れたとき、シタールとともに打楽器であるタブラのことを知った。この楽器はとてつもなく多様な表現ができるのだが、その奏法は手で叩くというより、鍵盤楽器のように指先で弾く物に近い。その凄さを知ったのは、ラヴィ=シャンカールがモンタレーポップフェスティヴァルに出演したライヴ映像で、タブラ奏者のアラ=ラーカを視たときだった。

シャンカールの超絶技巧のシタールに勝るとも劣らない技で、メロディとリズムを同時に演奏するそのパフォーマンスに僕は度肝を抜かれた。指先の動きに目がついていけない。右手と左手の指で音を出すギター等と違って、指1本で音をたたき出し、しかもピアノのように重い鍵盤を叩くわけでもない。これは指の動きの細やかさをフルに引き出せる理想的な楽器である。

ザキール=フセインはアラ=ラーカの息子である。彼の死後その道を継いで現在はインドの人間国宝として、タブラ界の頂点に立つ重要人物である。彼は1970年以降、インド音楽だけでなく世界の様々な音楽との交流を進めている。ジャズの世界でおなじみなのはギタリストのジョン=マクラフリンとシャンカール等とのユニット「シャクティ」がある。

今回の作品は、ザキールがエレクトリックベーシストのビル=ラズウェル(この人のことをどう紹介したものか難しいので、ここでは名前だけにしておく)と組んだユニット"Tabla Beat Science"によるライヴ演奏である。このユニットはザキールをはじめとするインド系アーチストと、テクノ・エレクトロニカ系アーチストからなるハイレベルなコラボレーションである。週末に出かけた渋谷でタワーレコードに入り、試聴器にあったこの作品を耳にしてためらいもなく買ってしまった。

こういう異種交流企画は最近では何も珍しくない。しかし思いつくのは簡単でも、結果を出すのはまったく容易でないというのが、音楽に限らずどのような世界においてもこの手の企画の常であろう。もともと異なる文化を背負って長年営まれてきたものだから、それを簡単に混ぜ合わせて表面をつくろっても、結局は内容の薄っぺらなものになってしまうのは当たり前である。

このユニットについても試聴してみるまでは半信半疑だったのだが、その心配は無用であることはすぐにわかった。やはりそこはザキールやラズウェルといった人の凄いところだろう。僕は試聴器で彼等の代表作"Tala Matrix"を最初に聴いたのだが、DJ Diskのスクラッチとそれに絡むアジアンパーカッションの饗宴はまったくもって壮絶である。さっそくiPodにこれを入れると同時に、彼等の演奏を収めたDVD作品も注文した。

だいぶん気温が下がってきて、いろいろな意味でいい気候である。味覚と食欲が旺盛になる、いい音楽との出会いもある。それでも自分の内には、まだ何かを捜し求めている様なところがある。それが何なのかをわかっている自分がいる一方で、それが出てこないように抑える自分がいる様にも思える。それは何かを捜しているのではなくて、何かを避けようとしている自分であるようにも思える。秋は微妙だ。

10/08/2007

ジョン=コルトレーン「ライヴ トレーン:ヨーロピアン ツアーズ」

 9月の連続3連休に続いて、またまた3連休である。確実に涼しくはなっているが、まだいつもよりも気温が高いように思う。さすがに半袖で出かけることはなくなった。

iPodをiPod touchに買い替えた。iPhoneが発売になって、すぐにこういう商品が出るだろうだと予想はしていた。仕事柄綿密に情報の収集もしていたので、発表日だった9月5日の早朝にアップルのオンラインストアにアクセスして購入した。商品が届いたのは先週の初めだった。

先週はいろいろと準備やらトラブルでしばらくは振り回された。古いOSのMacをいつまでも使っていて、今度新しいOSが出たらMacごと買い替えようと思っていた矢先だったので、先ずはそこでつまづいた。ならば会社から借りているWindowsマシンを使ってと思ったのだが、これも古いマシンなのでソフトは最新でも動作がびっくりするほど鈍い。

結局、なんとか満足に使えるようになったのはこの3連休になってからだった。通勤にデビューするのは今週からにしようと思う。それにしてもあのタッチスクリーンのインターフェースは、事前にいろいろな写真や映像を見ていたものの、やはり実際に手にしてみると大きな衝撃である。やはりアップルはすごい会社だ。

iPod touchは無線LANが使えるので、これを機に自宅に無線LANを導入したのだが、これが思いのほか便利である。決して先端を行っているわけではない僕だが、いろいろなものが便利になっていくことをこうしていまさらながらに実感した週末だった。

土曜日には新宿に買い物に出かけた。まだ少し季節は早いのかもしれないがブーツを買った。前回と同じお店で同じようなデザインのもので今回は茶色にした。去年買った黒のブーツともども今年は積極的に使ってみようと思う。会社に履いていけないのがつくづく残念である。

日曜日はステーキのチェーンレストラン「フォルクス」に行きたくなり、東急線の上野毛まで行って久しぶりにあの雰囲気を楽しんだ。少し前にテレビで人気の大食いの女性タレントが、美味しそうに大きなステーキを何枚も食べるのを見て以来、気になっていたのだ。別にお店は何でもよかったのだが、「ステーキ=フォルクス」という単純貧素な発想でこうなったしまった。

最近あまり見かけないなあと思っていたら、少し経営にリストラがあってフォルクスそのものはいまは独立した企業になっていないのだそうだ。おそらく数年前のアメリカ牛肉騒動の煽りを受けたのだろうと思う。

上野毛のフォルクスは静かな住宅街の中の幹線道沿いにある。休日の午後1時過ぎだったが、お店の中は程よい人の入りだった。ランチタイムでメニューが少し限定的な感じになっていて、お目当ての大きなステーキは残念ながら食べられず、150gのサーロインステーキで我慢した。それでも恒例のサラダバー(これがなかなかしっかりしている)もあって、1600円と昼飯にしてはちょっと贅沢だったが、おなか一杯になって満足した。おなじみの牛の形をした鉄板皿も愛嬌があっていい。

満腹感を少し落ち着かせようと、僕等はそこから自由が丘まで歩くことにした。気候はちょうどよかった。自由が丘では「女神まつり」の最中で、何のどういうお祭りかは理解できなかったが、いつもの倍以上の人手で賑わっていた。予想外の出来事だったので、どこかでのんびりお茶を飲もうとはなしていたのだが、それもあきらめて田園調布駅の方に移動し、駅にあるカフェでコーヒーとケーキを食べた。この連休はちょっと食べすぎたようだ。

愛用してきたiPod nanoの最後のお勤めとなった先週は、コルトレーンの1961~1964年のヨーロッパツアーの音源を集大成したセットを楽しんだ。音はさほど良くないがライブならではの緊張感と解放感が混在する奔放な演奏は最高である。やはりコルトレーンはいい、素晴らしい。いつか聴かなくなるのかなあなどと考えた頃もあったが、やはり当面はやめられそうにない。

新しいiPodにはいままでの倍の音楽が入るので、これを含めたくさんのコルトレーンをとりあえず放り込んだ。他にも先に取り上げたクリフォード、定番のマイルス、キース、ビルをはじめジャズやら現代音楽やらポップスなど手当たり次第に放り込んだ。アルバムのアートワークをめくって選べるインターフェースは本当に楽しい。

新しいiPodに最近お気に入りで聴いている音楽を半分、残り半分はこれからの音楽のために空けてある。それもすぐに一杯になるのだろう。