9/30/2012

労働讃歌

9月最後の日の夜。台風の接近で外は本格的な荒天になってきた。こんな時だけだからと、これを書いているBGMの音量はいつもより大きめ。

親の世代からすればずいぶんと世知辛い。僕の勤める会社では今年度に入って大規模な希望退職の募集があり、それに応じた人たちの退職がこの週末にあった。

僕はいまの会社に勤めて25年目であるが、これまでにも2回ほどこういうことがあった。しかしその当時は、僕自身がその対象(多くの場合こういうことには年齢の条件がつく)ではなかったわけだが、今回はまさにど真ん中の世代である。

「希望退職」というのはなかなか微妙な言い回しだ。

「希望する人にある条件で退職してもらう」ということなのだが、あくまでもその従業員自身が「退職を希望する」というだけでなく、企業の側も人件費を減らさねばならないので、従業員の誰かに退職してもらうことを「希望している」のである。

個人とその家族、職場の同僚や上司、そして会社という人格の、いろいろな意思や意図が混じり合いぶつかり合いすれ違う。そこには本当にいろいろなドラマが生まれる。

今回はそれなりに大規模な募集であり、僕が直接知る人だけでも20名前後の人が今回会社を去ってゆくことになった。そのうちの何人かの人とは、そこに至るまでにいろいろな話もした。結構しんどい場面もあった。

4月からの半年間、いわゆる企業の上半期において、このことは毒性のあるガスのように、つねに仕事に向かう(そしてそうでない時でも)僕自身の心に重く立ち籠めた。

金曜日の夜には、大手商社で管理職を務める音楽仲間が出張で上京していて、短い時間だが最寄りの駅でビールをやった。その後、妻が以前務めた会社の同僚で僕とは呑み友達でいる男と「えびす村」で酒を交わした。

土曜日は、昼間に家族で赤レンガ倉庫の広場で始まった「オクトーバーフェスト」を覗きにいって、ドイツビールをやり、夜は美幌町で歯科医を務める幼馴染みとスカイプで一杯やった。

それぞれに楽しく充実したひとときだった。だけど誰と酒を飲んでも、酔いのまどろみのなかに、会社を去っていった人たちのことがしっかりにじみ出てくる。

歯科医の幼馴染みとは、このことについてかなり具体的な話をした。彼は職業柄そう言う意味での会社生活というものに馴染みが薄いところもあったから。

彼はいつものように素直に興味を示し素直に感想を述べた。それは彼らしいまっすぐなもので僕の心を明るく照らした。そこから話は自分たちのこれからの人生のことや、子どものことや職業のことなんかに拡がっていった。

スカイプを終えてからまだ少し残った酒をちびちび口に運んだのだが、さっきまで彼と話したようなことを彼らももっと深く長い時間にわたって考えたに違いない。はっきりした結論が出ないままあの日を迎えた人も多かったことだろう。

彼らは皆これからも働くことを希望している。非常にあっさり雑駁な表現だが、いい仕事に出会いいい人生を続けていってもらいたい。それは僕自身のことでもある。

「労働讃歌」は、ももクロの音楽で僕が大好きな曲の一つだ。西武ドームで生に感じて一層好きになった。サビで讃えられる労働の本質は素晴らしくいい表現。そう、働くことでその人は輝き、生きていると知るんだ。

労働讃歌 - EP - ももいろクローバーZ

9/23/2012

修善寺虹の郷

23日の秋分の日が日曜日ということで、会社が気を利かせてか、その前の金曜日を休暇にしてくれた。そんなのんびりしている場合かな、という気もするのだが決まってしまったものはしょうがない。

この3連休を利用して、修善寺に1泊2日の家族旅行に出かけた。夏休みもどこへも行ってなかったしね。今回はその一部を写真でご紹介。

子どもの幼稚園が終わって、そのまま横浜駅から特急踊り子号で修善寺へ。しかし、毎度思うのだが静岡県に入るとICカード"Suica"が使えない。いつまで意地を張るのか・・・。

修善寺でお世話になったのは「かんぽの宿修善寺」。ニュータウンという住宅街のど真ん中にある。

建物は決して新しくはないが、露天風呂はきれいで温泉の質も温度もちょうどよく、料理もまずまずの味で満足できた。久しぶりに地元の日本酒をいただいた。部屋からは富士山も見える(右下です)。
翌日朝食バイキングで腹を満たして、向かった先は「修善寺虹の郷」。宿からは2kmほどの距離にある、山中に作られたテーマパークである。自然と文化をテーマにした広い園内にはいろいろな村が点在する。

ゲートをくぐって最初にあるのは「イギリス村」。近衛兵とスコットランド民族衣装を着た大きなベアがお出迎え。
クマさんにチューするというので子どもを抱きかかえてやったら、いきなり頭突きをお見舞いしてました(笑)。ごめんねクマさん。
こういう綺麗な洋館と庭園が整備されていていい雰囲気である。
虹の郷を訪れた最大のお目当ては、園内を走る「ロムニー鉄道」。

イギリスで実際に使われている15インチゲージの鉄道で、英国製オールハンドメイドの蒸気機関車3台とディーゼル機関車2台が、1キロ先にあるカナダ村との間を毎日せっせと客車を引いている。

真っ先に行った車両基地にて。子どもはもうクギ付けである。もちろん全部ちゃんと石炭を炊いて走る本物の蒸気機関車です。
館内の博物館にあった鉄道模型のジオラマにご満悦。この日はとても空いていて居心地がよかったでありやす。
この日運行していたディーゼル機関車の「ジョン・サウスランドⅡ号」。最初はこれに乗ることに。
駅舎やホームもなかなかいい雰囲気でしょう。子どもは見とれて立ち止まっては、お母さん促されて駆け足で追いかけます。
森をのんびりと抜ける約10分間の列車の旅。途中、トンネルや鉄橋もあって子どもは大喜びである。カナダ村は小川が流れて、水遊びが楽しめる。いくつもの間欠型の噴水を使った水遊びコーナーで大はしゃぎ。
当然こうなります(笑)。
随所に整備された庭園はちょうど晩夏の様相。最後の緑や花々を楽しませてくれました。
こういう石造りの段々も危なげなく渡れるようになったね。
いろいろな遊具をおいた公園もある。蒸気機関車型の遊具の先頭に陣取ってその気に浸っている。
こちらはちょっと変わったすべり台。頭をぶつけないようにね。
朝食バイキングのおかげでさほど空腹ではなかったものの、少し疲れたのでローズガーデンにあったカフェで休憩することに。

ローズジャムのパンケーキと、子どもにはローズフレイバーのソフトクリーム。なんちゅう食べ方しとるんじゃ君は(内側のクリームをなめ回しているところです、お恥ずかしい...)。
園内を歩いて日本庭園を目指す。幸いちょうどよい気候に恵まれ、程よい高低もあって気持ちのいい散歩道。
日本庭園にある菖蒲の池には鯉がいて、エサをあげることができるのですが、やってみたところこの有様に。よっぽど腹空かしてるんだね。これまで見たこともないある意味衝撃的な光景でした。アップの写真や動画も撮ったが掲載はやめときます。
カナダ村の池にはカモもいます。こちらは優雅に上品に。
そして再びロムニー鉄道でイギリス村のゲートに戻ることに。

今度は蒸気機関車「ノーザン・ロックⅡ号」で一番前の客席に乗車。石炭の匂いとボイラーの熱気に、運転手さんの操作もばっちり観察できていい雰囲気でした。
ホントにこの写真だけ見るとイギリスかカナダみたいでしょ。
というわけで、駆け足でしたが初秋の修善寺の旅はこれにておしまい。帰りもちょうど上りの直通特急に間に合い、自由席でのんびり帰路に。子どもはまだ興奮冷めやらぬ様子であります(笑)。
楽しかったね。やっと秋を感じる気候になってきたなあ。

9/15/2012

ケンとポール@横浜ドルフィー

フリージャズの大物リード奏者ケン=ヴァンダーマークが、ドラマーのポール=ニルセン・ラヴと共に日本にやってきた。新宿ピットインでの2日間の公演とその前日となる先週月曜日の夜に、横浜野毛のドルフィーにてデュオコンサートが行われた。

夏休みにたまたま同店のウェブサイトでスケジュールを見ていてそのことを発見した僕は、さっそくみなとみらいに住む音楽と酒好きの友人に連絡。携帯メール1往復で一緒に聴きに行くこととなった。意外にも僕にとっても初めてのガチンコフリーのライヴである。

前回のろぐで書いたとおりこの日は始発電車で出勤。お昼ごはんの前後はかなりの睡魔に襲われた。午後は外部での打合せなどもあってなんとか緊張感を保つことができ、終業のチャイムと同時に「さあさあフリーフリー」とばかりに、ヨタヨタいそいそと職場を後に野毛へと急いだ。

果たしてどの位のお客さんが来るのかなあ、やっぱりガチなフリーだしなあ、そうは言ってもケンもポールもその筋では有名人だしなあ、日本じゃ生で聴ける機会はまずないし、うーんもう行列待ちしてるのかなあ、急がなくちゃ…。

友人と桜木町駅で待ち合わせて早足でお店へ。しかしドルフィーのある通りには人の気配はない。「誰も並んでないなあ」とお店への階段を登ろうとすると、中から「ヴギョギョギョ↑~ビョロロルロろるろロぉ〜↓」とケンのサックスが聴こえてきた。リハ中らしい。

ドアを開けるとカウンターの向こうにいつもの店主とお姉さんがいるが、こちらに一瞥を送ることもない。お客さんは5、6人ほど…うーん不思議な安堵感を催した。まだ開演までは40分ほどあるからなあと思いながら、中ほどの広いテーブルにいい席を確保してビールを注文。

結局、開演までにお客さんは20名弱ほどになり、ゆったりと程よい入りになった。前回この店を訪れた森山威男の際は60名以上はぎっしりだったのとは違った雰囲気、いい感じだ。3万7000人の西武ドームなどまるで宇宙の夢の出来事である。

演奏は途中30分の休憩をはさんで2セット。前半はテナー→クラリネット→テナーと持ち替えて3曲を演奏。動、静、動の展開。これが生の即興か!と自分の身の中に長いことあった期待を融かし出す。ポールのドラムは初めての体験だったが、やっぱりイイ!イイ流れとイイうねり、これが音楽だ。

そして圧巻だったのは後半の演奏。待ちに待ったバリトンサックスを手に始まったケンの演奏は、ポールの凄まじいケツまくりで、これぞフリーの真骨頂と言わんばかりのところまで昇りつめ、店内の酸素がどんどん下がっていくトランス状態へ。僕の頭が身体が前後左右に揺れまくる。

演奏は、3種のリードを自在に操るケンと、ポロシャツから汗を滴らせながら暴れまくるポールの、圧倒的な世界が、結局切れ目なしに50分間続いた。スゲえ!スゴ過ぎる!やっぱり来てよかった!生きててよかったあ!そんな野毛の夜だった。

フリーの神髄である即興演奏は、まさに「その場で演奏その場で作曲」の真剣勝負。少々クサイが偶然と必然(確信)の織りなす芸術である。自分の演ずることに自信がない人にはできない。テキトーにやるとか言ってる人は退場である。

逆説的だが、完成されたコンポジション(作曲)でも、演奏する人や演奏の度に出来が大きく異なるクラシック音楽の世界となんら違うところはない。デレク=ベイリーが著書の中で語っている通り、すべての音楽は本来即興なのである。

時間をかけてアレンジされた曲でも、元々は一瞬の思いつきの産物なのである。そこで即演奏で勝負するのが即興演奏だ。時間をかけていじくった方がよくなるというのは幻想だ。いじくる能力を鍛えるか、一発勝負で鍛えるかそれだけの違いであって、そこに優劣や良し悪しはない。

そんなこんなで、僕は48歳になった。生の営みはすべてが即興であり一発勝負である。

9/12/2012

始発電車でヘッドフォン交代

先週はまた毎日早出で5日間。いろいろ重なって週内に決着をつけられず、週末に持ち越し。しかし、(まあこれは僕が悪いのだが)やっぱ家では仕事できないね。日曜日の夜に少し整理をして作るものの目処を付けるにとどまった。

そんなわけで週末の更新は遅れてしまいました。すいません。

その仕事の締め切りは月曜日の朝9時半からの、エラい人との打ち合わせに間に合わせること。一か八かで朝3時半過ぎに起床。始発電車に乗って朝5時過ぎにオフィスに入り、そこから3時間かけて8枚の資料を仕上げることで、なんとか30数ページのものをまとめることができた。

初めて職場から日の出を拝んだ。この朝は空気も澄んでいて朝日はとてもきれいだった。仕事はなんとか形をつけることができた。後でほころびが出るのだが。

昼前には睡魔がもわもわと降りて来て、お昼に何を食べたのかいまとなっては思い出せない。それでも、この日は夜にお楽しみがあった。それについてはまた次回。

朝、始発電車を降りたところで、愛用のヘッドフォン(ゼンハイザーのCX-300)の左側から出て来る音がブツ切れになった。夕方仕事を終えて、会社を出たところで試してみたら、もう左側からは完全に音が出なくなっていた。ケーブルが切れちゃったみたいだ。これはもう直せない。

次の日に量販店のヘッドフォン売り場を少し覗いてみたのだが、いまこういう売り場ってスゴいのね。ホントいろいろな種類のものが置いてある。だけど結局お店では買えなかったよ。

家に帰ってアマゾンで探したら、同じものが1999円で売られていた。これはもう生産中止になっているみたいで、CX-300-2というのがあるのだが、そちらは5000円くらいする。僕は迷うことなく同じものを買った。

ケチ?お気に入りがその値段で買えるなら、こんないいことはないじゃないか。新しいものはきっとイイに違いないけど、そのイイがいま僕がどうしても欲しいものとは限らない。これはもう何回も経験した。

アマゾンの商品ページで「お客様はこの商品を2006年11月○日に注文しました」と出ていた。3年くらい使ったのかと思ってたら、もう6年近く使ってたんだね。いやあご苦労様でした。これはもう天寿全うといっていいだろう。6年経ってまたお買い上げです。

ということで、品物が届くまでの間は、通勤時の音楽をガマンするという手もあるのだが、月曜日夜のお楽しみのおかげでそうもいかず、仕方がないので自宅で使っている、同じゼンハイザーのHD760というオープン型の高級ヘッドフォンを持って出かけることにした。

ヘッドフォンにはオープン型と密閉型の2種類がある。読んで字のごとく、耳の穴を塞ぐヘッドフォンが、外の音をある程度通すか、ほとんど通さないかの違いである。どちらの音がいいということではなく、それぞれに一長一短はある、そういうものだ。

だけど世の人には、そういう区別があるということも知らずに買って使っている人も多いと見受ける。当然ながらオープン型はヘッドフォンで鳴らす音も外に漏れやすい。そのことを知らないで大きな音を出して、周囲の人に迷惑をかけているのはよく見かける。

外の音もある程度聞こえるので、家の中などある程度静かで、周囲の人が話しかけて来た時に気づけるようにしておいた方がいいところで使うには向いている。ただ、通勤電車の中でははっきり言って音楽に集中できない。特に音の大小が激しい音楽(僕の好きなフリー系とかクラシック系はその代表だろう)を楽しむにはまったく向いていない。

そのことを今回は思い知った。確かに音はいい(それなりに高いヘッドフォンだしね)けど、電車がトンネルに入ったり橋を渡ったりすると音楽はほとんど聴こえない。仕方なく、音量が比較的一定しているトム=ペティーとかももクロを楽しんで、本当に聴きたかった音楽はガマンした。

とまあ、どうでもいいことなんだけど、突然訪れたヘッドフォンとのお別れのお話でした。

しかし、早出はもうリズムが結構身に付いちゃったかな。朝は自然に5時前に目が覚める。やっぱり電車が空いているのはいい。朝誰もいないオフィスもいい。

だけど、子どもがまだぐっすり寝ていて、寝顔にチューして「行ってきます」というのは悪くないけど、「いってらっしゃあい」と手を振ってくれたりチューしてくれないのは、やっぱり寂しいなあ。家族だからね。


9/02/2012

展望

このところちょっと仕事が立て込んでいて、先週は5日間連続で早出。そういう時は午前5時前に起きて、山手駅6時6分発の電車に乗る。これだとほぼ確実に座れて、さほど無理もかからない。周囲の顔ぶれは大体同じである。

午前7時前のオフィスはちょっと暑いが、誰もいない静けさはそれをはるかに上回る価値がある。そこからスタートすることで、作業は十分に自分のペースで動きだし、午前中の5時間で得られる成果は大きい。

しかし5日続くとさすがに後半は朝起きるのが少々しんどい。しかもある事情で木曜日の午後には、子どもの相手をしなければならなかった。そのことはスケジュール上は織込済みなのだが、やはり本来仕事をするはずの時間に、お台場のチャギントンランドで遊ぶ子どもを眺めるのは妙なものである。

この日のお台場は暑かった。ゆりかもめから眺める東京湾岸は相変わらずの眺望である。たまたま一番後ろの席に座れたので、子どもにとっては珍しい景色だったようだ。今度は一番前に座ってみるか。

結局土曜日の早朝は起きられず、ウォーキングは日曜日にと思って頑張って起きたのだが、不規則に降る大雨のおかげで断念。かわっていつもは夜に書くろぐを、この時間に書いている。

日本の作曲家、細川俊夫の作品を集めたECMの"Landscapes"を聴いている。こういう音楽を求める気持ちは常に心の底に澱みのようにあって、それが一定の周期(だろうか?)で具体的な欲望となって現れてくる。

この1週間はそういうタイミングだった。仕事がそう言う状況なのもあって、通勤電車のなかで聴くことも多かった。普段はあまり仕事の具体的なことは考えないのだが、これから取りかかる作業の続きをイメージする時は、こういう音楽は僕にとって相性がいい。

オーケストラに笙の演奏家宮田まゆみさんが参加していて、両者の共演が2曲、それぞれの単演が1曲ずつという構成。内容は静寂の響きを描き続ける細川作品の真骨頂ばかり。

このアルバムが初演になる後半の2曲「桜」と「雲と光」は特にいい、素晴らしい音楽。(笙の独演による「桜」はいわゆる「さくらさくら」の変奏ですよ)

アルバムタイトルにもなっている冒頭の細川の代表作「展望(Landscapes)」。いろいろな状況に左右されるものだが、「望」という文字があてがわれているのだから、そこにはやはりなんらかの好ましい拡がりが込められているのだと思うが、なかなか展けない望みが続いているのは現実。

まあ贅沢言っちゃイカンのかな。