3/30/2014

As It Is

落ち着くところがない空虚な洞をこころに残したまま春を迎え、年度が変わろうとしている。

子どもはしっかりと幼稚園の年中さんを終えた。レゴを組み立てたり、スイミング教室の春休み教室に参加したり、遠目に傍目に子どもの表情や仕種を眺めていても、しっかりと成長してくれていることを感じる。
一方で僕は何らの手応えもないまま仕事で新しい年度を迎えることに。家を離れて仕事場に向かうと急に空気が薄くなったように自分の存在が希薄になる。慌てて呼吸量を落としてボンベをつける。だけど時間は長くは持たない。

仕事場に向かう、あるいはそこから帰る際に極大化するこころの洞を、ちょうどいい塩梅にジョン=ケージのピアノ音楽が静かに鳴り響いてくれて、その空間の虚しさを浄化してくれている様に感じる。

"As It Is"は非常に優れたケージ作品集。ピアノとヴォイスための作品のみだけど、絶妙の選曲とパフォーマンスはさながら優れた映像を観ているようなしっかりとした感想を残してくれる。

日の出がずいぶん早くなった。平日早々に出勤する時間でも現れたばかりの朝日を見る様になった。休日朝の大さん橋からも日が昇る様を眺める様になった。日は何度も繰り返し、照らす先にあるいろいろなものを都度諭し、勇め、促す。


3/22/2014

5才になりました

春一番が吹いて、子どもが5才の誕生日を迎えることに。おめでとう。そして、ありがとう。

ここまでの5年間はその長さに相応しく時間が流れた。早くもなく遅くもなく。自分もそのなかでしっかり5年の人生を過ごしたように感じる。

でも子どもと一緒に過ごす5年間は、やはり素晴らしい5年間。別のところでは(子どもとは無関係に...たぶん)つまらなさが増大したけど、それをはるかに上回る充実があったのは大きな支えだった。

プレゼントはレゴの青バケツ。クリスマスには夢を感じられるものを、そして誕生日には成長につながるものを、というつもりである。結局、その区別はあってないようなものなのだけど。

さっそく説明書にあったお家と飛行機と自動車を製作...したのはパパでした(笑)。なかなか楽しいものだ。
ママが色紙を使って即席で部屋の飾り付けを作ってくれた。なかなかの出来映えでここに載せたかったのだけどできないので、代わりに作業中の様子を。
子どもは工作が大好きなので、ぴったりママの横に張り付いてお手伝いという名目のお騒がせ。興味津々のご様子。

お昼を関内のビアレストラン「澤の食卓」で食べて(お昼はかなりお得)、その後みなとみらいと元町をブラブラ。少し風が冷たかったけど清々しい春の空気だった。

夜はお家で僕のお手製ミートソースでパスタ、サラダ、パンにワインで乾杯。その後は買ってきたケーキにキャンドル5本立てて、はっぴばーすでー!本当におめでとう。そして、ありがとう。

一瞬次の5年のことを考えようとしたけど、楽しみ、喜び、不安、寂しさ...いろいろな気持ちがわあっと一気にわき出してくる気配を感じて、すぐ扉を閉めた。

このところ目まぐるしくいろいろな音楽を聴いてきたけど、やはりというべきか、いまはジョン=ケージの音楽に浸っている。少し前に出て気になっていたECMの"As It Is"を購入したのがきっかけかな。

ケージの音楽は、いろいろな音楽を聴いて耳と頭がちょっと疲れてしまったとき、ある方向に延びきってしまった頭の中の何かを、ストレッチみたいに元の状態に戻してくれる様な作用がある。

彼の音楽が志向する「偶然」と「静寂」という特質が、あたかもそれ以外の音楽で疲れた耳や頭を中和してくれるかの如くだ。

5才の子どもに何か音楽のプレゼントをあげるとしたら、いまはこれがいいと思う。"As It Is"...これからの人生もそれでいい。というか、それしかないのだから。

オマケ:先週初めて行った、よこはま動物園ズーラシアにて。
(いずれもつくりものの動物です、ご安心ください)

3/16/2014

ペーター=ブロッツマン@横浜ドルフィー、そして、ももクロ@国立競技場初日

自分は多くを求めすぎているのだろうか。それとも何かのバランスを欠いているのだろうか。悪いのは自分だと思うのだが、一体何をどう直せばいいのかわからない。

木曜日の夜に、野毛のドルフィーでペーター=ブロッツマンを観た。箏奏者の八木美知依さんとドラムの本田珠也さんの2人を加えたトリオ。

ついにペーターを生で観ることができたのは幸せだった。非常に密度の濃いレヴェルの高い即興音楽だった。特にほぼ1時間ぶっ通しの演奏となった第2部は圧巻だった。

ちょっとお疲れ気味の様子に見えたが、テナー、ソプラノ、E♭クラリネットを駆使するペーターはもちろん、21弦と17弦の箏を操る八木さん、そしてシンプルなセットで縦横無尽のパルスを叩き出す本田さんの演奏も本当に素晴らしかった。

この日は午後から風雨が強まるあいにくの天気で、その所為もあってか観客はたった8人。初めてドルフィーで前列に座り、お店には申し訳ないけど、ゆったりと他のお客との距離をとってこの演奏を楽しませてもらえた。

そのおかげというわけではないのだが、少し心身が疲れてしまって体調を崩す予兆を感じたので、金曜日は特に会議などの予定がないことを理由に仕事を休んだ。

そして土曜日は、代々木の国立競技場でももクロの「ももクロ春の一大事2014 国立競技場大会 NEVER ENDING ADVENTURE 夢の向こうへ」の初日に参加。

今回は昨年の日産スタジアムとは打って変わって、かなり純粋なコンサート(音楽会)だった。ストリングスとブラスセクションを加えた総勢約40名の生バンドに、合唱団も入った超豪華演奏陣。

これをバックに、デビュー曲から最新シングルまでを歌い、中島みゆきさん作による次のシングルのお披露目や、この日が誕生日の杏果ちゃんへのハッピーバースデイなどなど、余興的なアトラクションなしに彼女達の音楽をしっかり聴かせてくれた。

日産スタジアムの時に比べて、音響はまだ少しマシで演奏や歌声もしっかりと楽しむことができたのはよかった。しかしやはり音楽会の会場ではないので、その意味ではもったいない感は相変わらず否めない。

3月半ばでやや暖かい日ではあったがやはり夜は寒かった。だけど、ももクロちゃん達のパフォーマンスにしっかり心が熱くなった。

しかし、自分は観ていないのだが、2日目の内容に比べるとセットリストや彼女達からのメッセージの重さという意味では、2日目の方が羨ましい内容だったようだ。来月下旬にはファンクラブイベント、そして夏の7月には大型イベントの告知なども出され、まだまだ彼女達の活躍は続くということである。

現時点で何か具体的な発表や「国立の次の目標」みたいなものが示されたわけではないが、ももクロの活動は明らかにここで一つの区切りがついたのは間違いないと感じた。

たぶんそれは、ここからは彼女達自身にプロデュースの手が委ねられていくということになるのだと思う。その意味でももクロは、メンバーの脱退で「ももいろクローバーZ」という名称になった2011年4月以来の新しい段階に入ったのだろう。

初日を鑑賞し終えてしばらくはその「終わった感」が中途半端な感じで、今朝になってもまだもやもやとしていたのだが、2日目の速報などを見て、そのあたりが徐々にすっきりしてきた。

僕は引き続き推しメンの杏果ちゃんを中心にこのグループを見続けていくだろうが、音楽という意味で彼女達の世界がさらに深くしっかりとしたものになること(それはいわゆる「アイドル」としてとは違う見方になるのかもしれないけど)を願いながら、新たなももクロに注目していきたい。

余談だが、その意味ではこの日もう一つの新曲として披露された「堂々平和宣言」については、スタジオ作品を聴いてみるまではわからないが、ちょっと外れてないかなと思った次第。

1日置いて、ある意味(表面的なことに過ぎないのだろうが)非常に対照的な音楽体験をした1週間だった。僕からすればどちらもとても大切な出来事だったのだが、ちょっと心か身体かが振れすぎたのか、不安定になってしまったのかもしれない。

それともそれらの音楽体験に比べて明日からのことがあまりにも、何と言うか自分にとっての意識の拠り所となるところを見いだせない状況が辛いのか。たぶんそうだろう。

それから、こんな僕の生活と性格から直接的な影響を家族に与えることになってしまっている点、お詫びしておきたい。ごめんね。


3/09/2014

ギャリソンの入ったコルトレーンを

またコルトレーンばかり聴いている。ジミー=ギャリソンのベースが持つ重い響きはハマると病みつきになる。このところは彼の長いソロがフィーチャーされた後期のライヴ演奏ばかりを聴いている。ラシッド=アリのドラムもいい。

必然的にそれは"Live in Japan"に帰着してゆくわけだが、今回は"Live in Seattle"とか、もうずっと聴いていなかった"Live at the Village Vanguard Again!"なんかも、じっくり楽しんでいる。あとは1965年のアンティーブ・ジャズ・フェスティバルで録音された2枚の作品もいい。

"...Again!"については、LPでは持っていたがCDは持っておらず、今回初めて購入した。"Live in Japan"に比べると、編集はされているし、もの足りなさはあるのだけど、改めて聴いてみると非常にコンパクトにこの最後期クィンテットの魅力がまとめられているなと感じる。初めてこのユニットの演奏を聴くには一番いいと思う。

"My Favorite Things"でのファラオのソロの後ろで、コルトレーンがフルートとアルトを吹くのがしっかりと収録されていて、モノラル録音である"Live in Japan"とは違って、そのトレーンの姿をよりはっきり感じ取れるのが大きな魅力だと知った。

しかし、このことに触れているのをあまり読んだことがない。特に後半のアルト演奏については、ファラオと丁々発止に白熱する場面で、録音技師のヴァン=ゲルダーがまたしてもトレーンを追いかけようと、マイクの入力をあげるのが収録されている。フルートはドルフィーが使用していたものだと言われるが、アルトはどういうものだったのだろうか(東京公演で吹いたアルトは工場を見学したヤマハから贈られたものらしい)。

トレーンについては、もはや完全にインパルス時代のものしか聴かなくなった。以前にも書いたと思うが、高校時代に彼の音楽に出会って、大学時代に書店で購入したジャズ批評のコルトレーン特集に、ある人が「若い頃にはフリー時代の作品が平気で聴けたのに、いまこの歳(たぶんいまの僕と同じくらいなのだと思う)になると、聴くのが辛くなった」とか書いてあって、自分もゆくゆくはそうなるのかなと思っていたのだが、どうもそんなことは杞憂だったようだ。

1940から50年代のジャズについては、パーカーとかパウエルとかエヴァンスといった人たちの優れた演奏は、これからも聴くことになると思うけど、コルトレーンについてはたぶん聴くことはないだろう。なぜならそれよりはるかに素晴らしく多くのものを受け取れる彼の姿を、後の時代の演奏に求めることができるからだ。

この週末もウォーキングはさぼった。しかし日曜日の今日は、思いつきで伊勢原の大山(おおやま)に行ってみることに。

相鉄と小田急とバスとケーブルカーを乗り継いで着いた阿夫利神社からの眺めは素晴らしかった。けど、山道は思ったより険しいのとまだあちこちに雪が残っていて、軽装の僕らにはちょっと無理と判断して、ちょっとだけ山道をうろうろしただけで下山することに。もう少し暖かくなったらまたリベンジしたいと思う。

阿夫利神社からの山道はこんな感じ。足下は融けた雪でべちゃべちゃでした。
山道を阿夫利神社に戻る階段で。これを登り降りするだけでも結構足にキマす。
結局、神社から途中の大岡寺まで「女坂」を歩いて登山気分を味わうだけに。ケーブルカーの駅で一息。
五蘊の色を示す旗と大山ケーブルカー。なかなか貴重な体験でした。

ギャリソンのベースが入ったコルトレーンをもっと聴きたいね。越後で買った「越の誉」寒仕込み搾りは美味しかったでありやす。生酒は鮮度が命ですから、土日ですっかりごちそうさまでした(笑)。

3/05/2014

越後でスキーとお酒

ちょっと更新が遅れてしまいました、すいません。

月曜日に仕事をお休みして日曜日から1泊2日で家族でスキーに行ってきました。場所は上越新幹線で越後湯沢まで行ってそこから送迎バスで15分ほどのところにある、ファミリー向けスキーリゾート「エンゼルグランディア越後中里温泉」。

妻と子どもは幼稚園のお友だち達と去年から2、3回ここにお世話になっていて、1ヶ月ほど前にも行ったばかり。もうすっかり馴染んでいました。
子どもはスキーにもなかなか慣れたもので、最初はちょっとしりもちついてたりしてたけど、すぐに下のゲレンデにリフトであがって楽しそうに滑り降りてくるまでになっていて(ほとんど直進なのだが一応止まることもできる)、これにはビックリしました。

ここから200mほど滑り降りて右に曲がってさらに3〜400m下るのですが、転ばずに一気に滑り降りてはまたリフトに乗ってを何度も繰り返してました。ゴーグルもなかなか様になってます。
僕は「スキーはやんないよ」と、初日は見ているだけだったんだけど、そういう子どもを見ているうちに自分も少しやってみたいと思う様になって、人が少なくなった月曜日にとうとう30年ぶりのスキーをやりましたよ。
雪のうえになんとか立てましたが、歩くのが一苦労。ちょっと憧れていたクロスカントリーなんてとんでもないと思いました。結局リフトには乗らずに1.5時間ほど下の方のゲレンデを、途中まで歩いて登っては滑り降りを数回繰り返しただけだったのですが、楽しかったです。ゲレンデを登るのに疲れて大汗をかきました(笑)。

お世話になったホテルは、食事はファミリー向けのバイキングですがいろいろなメニューがあって、妻もこれまではお友だちとのグループ旅行で子ども達がはしゃいで落ち着いて食べるどころではなかったらしいのですが、今回は「いままでで一番ゆっくり食べられる」と、茹でたカニの足を何本もひたすら食べまくっていました。結構身が入っていて美味しかったです。

子どもはというとスキーで空いたおなかを満たそうと、ここぞとばかりに食べまくり。まあいつものことですがいい食べっぷりです。普段は飲めないメロンソーダとかデザートも取り放題だし、まあ今回は大目に見てやるか。

スキーともう一つのお楽しみは、越後湯沢駅構内にあるみやげ物コーナー。そのなかに新潟の美味しいお酒やお土産を販売する一角「ぽんしゅ館」というのがあります。ここで試飲しながらその折々の名酒を売るコーナーに2日続けてお世話になりました。ここいいですよ!

500円でお猪口に5杯試飲できるコーナーも楽しいのですが、やっぱりその日限定の「推し酒」を試飲して買える「駅の酒蔵」がいいです。越後に着いたその日は「良寛」の純米酒を購入。それは半分以上宿で呑んでしまいました(笑)。

帰りにはまた立ち寄って今度は「越の誉」の寒仕込み生搾り原酒を購入。これは今度のお休みまで冷蔵庫にとってあります。明日が仕事という夜に呑むのはもったいないですからねえ。いずれも720ml瓶で1700円前後と、いつも家で呑んでいる安酒に比べるとお高めですが、うまいですなあやっぱり。

昨秋は、ももクロのコンサートなんかもあって長野新幹線と東北新幹線で、そして今回は上越新幹線でスキー旅行をしましたが、やっぱり共通するのはお酒のおいしさですよね。北への旅の楽しみに目覚めましたよ。住むのはちょっと厳しそうですけど。

お酒はともかくスキーにはもう縁はないかなと思ってたんですが、家族のおかげでまたこういうことも楽しむことができました。また行ってみたいと思います。ありがとう。