6/26/2016

オーネット・コールマン「クライシス」

先週末はイギリスの国民投票の結果を受けてなんとも息苦しいような気分で週末を迎えることになった。週明けの展開がいやでも気になるがだからと言って早く休みが終わって欲しいと思うことはない。

チャーリー・ヘイデンに関連する作品をYouTubeでいろいろと検索しているうちに、オーネットの幻の(?)アルバムの音源をみつけて何度も聴いた。1969年のニューヨーク大学でのライヴ盤「クライシス」がそれ。

ジャケットで燃えているのは、アメリカ合衆国「権利章典」である。このタイミングでなんとも奇遇な巡り合わせだと感じる。

このアルバムと同じインパルスレーベルの前作「オーネット・アット・12」の2枚は、CDやダウンロードで発売されていない。僕は学生時代に「アット12」を中古屋で何度か見たことがあるけど、結局買わずじまい。「クライシス」に至っては見たこともなかった。

ネット上のディスカッションによると、版権がオーネット自身にあり本人があまり過去の作品の再発に乗り気でなかったことが原因なのだと言われている。彼の音楽について考えるとわからないわけではない。

僕が注目したのは、このなかに僕も大好きなヘイデンの名曲で、キューバの反政府活動を指導したチェ・ゲバラに捧げた"Song for Che"が収録されていること。権利章典を燃やすアルバムジャケットにしても、この曲にしても、オーネットが作品で政治的なものを取り扱うのは極めて珍しい。

アルバムに関する情報が非常に少ないので詳しくはわからないのだが、主に当時の政治、人種、民族に関連する不安定な時代背景に加えて、オーネット自身が関わることになった事情(ブルーノートレーベルのアルバム「エンプティ・フォックス・ホール」で若干9歳の息子デナードをドラマーに起用したことに端を発する)などが影響しているとの見方があるようだ。

デナードはこの作品収録時はまだ12歳。信じがたいことだけど、「エンプティ」よりは格段に進化したドラム演奏は、もう立派に新たなオーネットの音楽ユニットの一員として確立している。デナードはこの後オーネットが2015年に亡くなるまでほぼ50年にわたって、彼の音楽を支え続けることになる。

一部から言われているように、この作品では確かに全般的にオーネットらしい「陽気さ」は影を薄めているようにも感じられる。しかし演奏の素晴らしさは数ある彼の作品のなかでもかなりクォリティの高いものだと僕は感じた。



今の時点ではアルバムに収録されている5曲すべてをYouTubeで聴くことができるが、オーネットの新しい音楽を聴くことができなくなったいまとなっては、本作含めた未発売作品の正式発売を強く願うばかりである。

やっぱりオーネットが好きでよかった!


(おまけ)日曜日の午後、自転車で横浜港シンボルタワーまで出かけてみました。そろそろ暑さで小まめな給水を意識しないといけない季節がやってきました。港はやはり素敵であります。




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