6/19/2016

1972年のキース・ジャレット・トリオ

週末がくるたびにやっとゆっくり自分の時間が持てるとの期待に迎えられる解放感がみなぎり、案外できることは限られてしまううちにそれが終わっていく閉塞感が浸み出してくる。

こういう繰り返しで人生を捉えるようになってしまってどのくらい経っただろうか。

先週とりあげたキースのDVDに触発されて、主に1970年代の彼の作品を漁って楽しんでいる。この時代のキースの音楽活動においては、彼のクリエイティビティは様々なスタイルの上で尽きることなく溢れ続けた。

今回注目しているのは、チャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンとのトリオ。1968年の"Somewhere Before"が有名だが、1972年の秀逸な2つの演奏記録も世に知られている。ドイツのハンブルグでのライヴ、そしてフランスのパリでのライヴ。

ハンブルグの音源は比較的最近になって一部がECMから正式に発売されたが、それ以前はいずれもブートレッグで知られていたもの。どちらの演奏も僕は今回初めて聴いた。

現時点では以下のYouTubeにあるコピーが良好な音質でこの記録の全てをカバーしている。

Paris 1972


Hamburg 1972


キースはピアノの他にもソプラノサックスやパーカッションを演奏。いずれも数十分に及ぶ即興演奏。3人の並々ならぬテンションの高さはやはりこの時期の音楽における充実ぶりを物語っている。

いまに考えると1980年代からの「スタンダーズ」の時代は、円熟という言葉を借りたある種の停滞だったのかなとも思える。あれほど多くのアルバムが発売されたけど、今の僕はほとんどそれらを聴かないし、興味もそそられない。

しかし、こういうものは十数年前では中古屋巡りの醍醐味であったのだろうが、今はネットを捜せば1分もかからずに実際の音や映像で視聴できる。本当にすごい時代である。

同時に、僕のまだ知らない過去のこうした優れた音楽の存在を考えると、これからの時代の創造するということにある種の困難というものを考えざるをえない。

土俵や枠組みの様なものを変えるのが一つの考え方だが、もはやそれすらも限界ではないかとさえ思える。これは音楽に限ったことではないのだろうけど。


(おまけ)

先週のある日の朝、勤め先の窓辺から撮った朝の空と、勤め帰りに降りた最寄駅で撮った夕方の空。空を眺めている限りはどちらも魅力的なんだけどね。




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