本牧山頂公園へウォーキングした土曜日、午後はママと子どもがお友だちのお宅に遊びにいくとのこと。暑い日で結局、家でうたた寝したりしてのんびり過ごさせてもらうことに。
夕方になってくると、少しは涼しい風が窓から入ってくる。それとともに家の前で遊んでいる近所の子ども達の声が聞こえてくる。誰ともなしに唄い始めたのをいつの間にかみんなで合唱になっている。
「ありの〜 ままの〜 すがたあ みいせえるのよお〜」
「アナと雪の女王」の主題歌である。うちの子どもも2ヶ月程前に映画を観てすっかり魅了されたよう。歌自体は、「プレーンズ」を観に行った時にすでに予告編で流れた英語版が印象的だったようで、「れりごー れりごお〜」と口ずさんでいた。
それがいまでは日本語の歌詞をほとんど覚えて何かの折に口をついて出てくる。あとよく口ずさんでいるのは「妖怪ウォッチ」のアニメ主題歌かなあ。歌をしっかり覚えてカラオケに連れて行ってみようかなと思っている。
僕は映画の方は観ていないのだけど、歌はダウンロードで購入して聴いている。確かにいい歌である。松たか子が唄う劇中歌と、May.Jが唄う日本語版のエンディング挿入歌の両方を持っているのだが、いずれも日本ポップミュージックの高い実力を示している名演だと思う。
最初、あまりよく分からずにMay.J版を購入し、テレビ番組で視たあの歌唱そのままなのをじっくりと聴いてやっぱりスゴいなあと思った。原曲にはない「ずうっとお〜、泣いてえい〜たけえどお」からエンディングに至るエスカレーションはお見事である。
名前が売れるのと引き換えに、ほとんど「カラオケの女王」みたいなイメージがついてしまって、ご本人としてはどう思ってるのか少し気になるところだが、そういう意味でも期待される彼女らしさが存分に発揮されたこのバージョンは間違いなく秀作である。
しかし、映画の物語に使われる歌にしては歌詞がずいぶん単純なんだなあと思っていたら、実は劇中歌は松たか子版の方で、May.Jのは映画のイメージソングとしてリメイクされているのだと知った。
松たか子の歌はあまりまともに聴いたことがなかったのだが、こちらは役になりきった熱唱で、スクリーンを視ながら聴いた人の多くがこちらの版を推すというのはよくわかるところだ。
歌詞も訳詞とはいえストレートな言葉なので、メロディーに乗せるのが結構難しかったと思うけど、そこはやはり女優の底力で見事に演じきったというところだろう。ラストの「これでえ〜」のところで絞り出されるエモーションは涙腺ものである。
こんな素晴らしい2つのヴァージョンを楽しめる日本は幸せな国だ。
映画は世界中で大ヒットしているらしいが、歴代の国内映画興行成績で3位になった(1位は千と千尋の神隠し、2位はタイタニックだそう)理由には、これらの歌の素晴らしさが少なからず影響しているのは間違いないだろう。
しかし、子どもや妻から少し聞いて想像する映画の物語を考えると、松たか子が謡う歌詞は僕にとっては非常に切ないものがある。
子どもにはありのままで、素直に育って欲しいと願う一方で、いまの自分が「ありのままで」生きられるのかと自身を考えてみると、やはり切ないというかやりきれないような感情を抑えるのに心にわざと大きな空洞をあけるような想いがする。
それは単に時を遡ることはできないのだと片付けられることではなく、自分のなかにある様々にある自身をどのように組み合わせて生きていくのが幸せなのか、それを模索することを続けることに苦悶して一生が終わるのだと言うことに対する漠とした畏れのように思える。
触れるものすべてを凍らせてしまう不思議な力は確かに恐ろしいが、人が心の奥に秘める望はそれと比較しても劣らぬ不思議で不可解なものなのだと僕は思う。気圧の様に中身は違えどそれは誰にでもあるのだと思わなければ、外とのバランスを保って自分が存在することは難しいのだろう。
「ありのままで」という言葉そのものが実は禁断の呪文なのかもしれない。
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