9/08/2013

映画「オン・ザ・ロード」!

金曜日に会社を半日お休みして、日比谷のTOHOシャンテで上映中の映画「オン・ザ・ロード」を観に行ってきました。

よかった!素晴らしい!ウォルター=サレス万歳!ジャック=ケルアック万歳!

もはや多くは語りません。僕にとってはまったく素晴らしい映画でした。原作の世界観が本当に見事に映像化されています。不満はありません。139分間の上映時間は、まるで通勤電車のなかで原作を読んだあの時間と同じ様に過ぎていきました。

内容は原作の主要な場面を中心に、本当に忠実に映像化されたものになっています。原作を読んで心に憧れを持って思い描いた、アメリカのロードの姿が実際の情景となってスクリーンに鮮やかに蘇ります。

キャスティングの一人一人も見事です。これはひとえに最近映画をほとんど見ていない僕にとって、彼らに関する情報というか先入感がゼロだったことも、大きな要因だったと思います。

事前にちょっと読んだレビューの一つでは、映画での描写が「大人の世界」の内容にやや偏りすぎているのでは、というものがあったのですが、そんなことはありません。サレス監督の感性に僕は完全に同意します。これがケルアックの世界なのだと思います。自分の思い込みでできた部分を勝手に原作に加えてはイケません。

スクロール版を読んだのは半年前ですが、あの時の満足感がそっくりそのまま、否、映像による表現であのとき以上にしっかりとこみ上げてきました。冒頭からラストシーンまで僕には何の疑念も迷いも浮かびませんでした。シーンの移り変わりが、本のページを次々になめらかに自然に鮮やかに繰ってゆくような感覚は、愉快そのものでした。

原作をベースにこんな風に映画を楽しんだのは初めての経験。「ノルウェイの森」の映画版もとてもよかったけど、やっぱり原作への愛着が違うだけに、この映画に贈る賞賛は桁が違う様に思います。

午前中にあたふたと過ぎた会社の幹部達とのちょっとした雑用の打ち合わせ(ほんとに雑用です)の顛末も、久しぶりにお昼に食べたお気に入りのチャーシュー麺の味も、直前になって携帯に届いた仕事に関係したくだらないメールのことも、すべてはロードの埃にもならず映画の疾走に見事に吹き飛ばされてしまいました。

上映終了後にどうやってビルの5階の劇場から日比谷の街に戻ったのか覚えていません。気がつくと有楽町駅まで歩いて戻ってきていました。

原作を読まれていない人がこの映画でどこまで原作の世界を体験できるのかはわかりません。個人的には「読んでから観る」ことをお薦めしますが、まあケルアックの世界に触れられるという意味では、映画を先に見るのも悪くないと思います。この作品に触れるきっかけとなる素晴らしい入り口がまた一つ増えたことを、ファンとして素直に喜びたいと思います。

そうは言っても、ロードショーの世界ではマイナー作品ではありますので、興味のある方は上映期間中に是非ともごらんになってください。後にブルーレイとかで真夜中に自宅のテレビで視るのも悪くないですが、劇場という日常と隔絶される場所の役割を再認識する意味でも、うってつけの作品だと思います。

この映画はR15+指定になりましたが、実際にはかなりハードな内容です。審査はそれなりに揉めたのではないかと思います。映像表現は原作のスクロール版の文章表現同様、かなりストレートです。局部を意識させるような映像表現はありませんが、様々な行為そのものを一切婉曲せずに映し出します。想像力の出番はほとんどありません。登場人物達の生き様を一気に描き切るうえで、不可欠な表現なのだと思います。そしてそれがこの映画の魅力であり醍醐味なのだと思います。

人間のエネルギーとはこういうものなのだと思います。

いい映画を観ました。

 

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