7/02/2013

CT

5月に会社で受診した定期健康診断の結果を受け取ったのだが、これまで言われたことのない警告がそこに出ていた。

血液の何とかの値が基準より高めなので気をつけましょうとか、視力がまた少し衰えたとかいうことではなく、ある検査結果に対して「精密検査を要するので速やかに社内の担当医を受診して説明を受けよ」というものだった。

まあはっきり言って僕の脳裏をよぎったのは僕の両親のこと。月曜日に産業医との面談を予約して話を聞きに行くことにした。

週末はウォーキングや子どものプールやらいつものお休みだったのだが、やはりついそのことが何かにつけ気になってしまう。妻にはとりあえず産業医との面談を終えるまでは何も話さないことに決めた。

ネットで少し情報を集めてみたが、この種のことについてはいくら楽観的な情報を目にしたところであまり気休めにならないものだ。

産業医の説明は、慎重に言葉を選びながら淡々と、という感じだったのだが、要するに会社にある装置を使った結果としてある種のものが出てしまっているので、早期発見の意味も含めてより専門的な診断のできるところで精密検査をすべき、という模範的な内容だった。

彼は十分によい仕事を果たしたと思うのだが、僕が両親の病歴を話すと少なからずの動揺を示したので(少なくとも僕にはそう受け取れた)、そのことが余計に僕の不安を増幅させたことは仕方のないことではある。

紹介状を用意するというので、少し考えを巡らせて自宅に近い総合病院で受診することに決めた。本当はその日のうちにでも検査を受けたかったが、さすがに無理だったので今日仕事を休んで該当の科で検査を受ける予約を入れてもらった。

みなと赤十字病院はいままで何度も近くを通っているが中に入ったのは初めてだった。比較的最近に大きなリニューアルがあったようで、僕が想像していたよりもずっとキレイで合理化された設備やシステムが備わっていた。

僕を担当してくれた先生の判断で、すぐに生まれて初めてのCTスキャンを行うことに。これで何か異常が出たら次は...そんな想像も膨らんだが、何はともあれ先ずは検査を受けることだと諦める。

検査室に行ってみると、来院の患者さんに混じって、入院されている患者さんの姿も見え、それを見ていると大変失礼ではあるが、どうしても入院していた頃の父や母の姿を思い出さずにはいられない。

CTスキャンとレントゲンの撮影を終え、再び担当医のところに戻って結果を聞く様に指示される。今日は比較的空いていたようで、すべてのことはとてもスムーズに運んだ。

再び担当の先生に呼ばれ中に入ると、開口一番「何も心配されるようなことはありません」という言葉が彼女の口からもたらされ、ここ数日の心配と気苦労はそこでようやくにして晴れた。

会社で見せてもらったものよりもはるかに鮮明なX線写真に加えて、生まれて初めて見る自分の身体を輪切りにした連続画像に見入りながら、ここ数日間に考えたいろいろなことが自然に次々と思い返され、心に立ちこめた暗い霧がさあっと晴れていった。

結局、会社で検診を受けた時点では確かに何かがあったのだろうが、それはその後の1ヶ月ほどの間に自然に治癒されたものだと考えられる、というのが医師の結論だった。

たった1週間前後のことではあるのだが、何かが変わった様に思う。もう少し明確な言葉で書くこともできるのだが、ある意味で個人的なことでもあるので、ここではこの程度にしておく。

病院を出て包まれた初夏の空と日射しは、いままでになく僕の心と身体の奥底から何かを引き出そうとする様に感じられた。

歩き出しながらイヤフォンを耳に押し込むと、このところ急に聴きたくなってiPodに入れていたチック=コリアの"Three Quatets"に選曲を合わせた。

チックが取り憑かれた様に果敢に攻めた楽曲が、メンバーの神髄を見事に引き出して素晴らしい。ブレッカーやガッドはもちろんのこと、エディー=ゴメスのベースは数ある彼の演奏の中でも白眉である。

いい歩みだしに相応しい音楽だ。

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