1/06/2013

紅白歌合戦からの雑感

2013年のあけましておめでとうございます。本年もえぬろぐをよろしくお願いします。

今回は年末大晦日の「第63回NHK紅白歌合戦」を視て思ったことなどを少し。

ももクロちゃんが初出場ということで、本当に久しぶりに最初から最後まで視た。テレビを2画面設定にして、一方でMacでウェブ画面を開いて前回のろぐを書きながら、もう一方の画面で紅白をつけ、音声はそちらから流れて来るものを楽しんだ。

ももクロちゃんのステージはとてもよかった。後半紅組一発目の自分たちの出番では、最新曲の「サラバ...」(やっぱり最初はちょっと緊張してたね)と、グループの代表曲「怪盗少女」をメドレーでつないで、いまはもういない結成時のメンバーへのオマージュも併せ、ファンには嬉しい素晴らしいステージを見せてくれた。

加えて、前半での細川たかしのバックダンサーならぬフロントダンサーとしての応援では、やっぱりダンスのキレに彼女たちらしさがよく出てたと思う。あれはいい場慣れになったんじゃないかな。NHKさんの確かな気遣い(?)が感じられました。

彼女たちが出るというので、こうして久しぶりに視る気になったわけであるが、それがなければ僕はこの番組には結構冷ややかな態度を取り続けていただろうと思う。しかし、今回これを通して視ることで、ももクロちゃんのこと以外にもそれなりに得るところもあり、決して悪くない印象を持ったことは事実であった。

僕の感想はざっくりと2つの軸で整理できると思う。1つは「女性より男性」ということ。そしてもう1つは「量より質」ということだ。

ももクロちゃん達のことはちょっと別にして、今回の紅白におけるベスト3のパフォーマンスをあげるとするならば、僕は文句なしに、矢沢永吉、斉藤和義、美輪明宏をあげたい。この3者の音楽は僕にとっては圧巻そのものだった。

僕は決して永ちゃん推しの人ではないし、アルバムは1枚も持っていない。だけど会場のNHKホールで生で演奏された彼のパフォーマンスにはやっぱり凄まじい「本物」を感じた。バンドもスゴかった!(あのギターの人って山本恭司さんだよね?)申し訳ないが、続いて登場したEXILEが何とちっちゃく見えたことか。

同じ特別企画で出演したMISIAも確かにウマいが、やっぱりパフォーマーとしての人間的な存在感では、他の人と変わらず、壮大なアフリカの情景が演出上それを補った感は否めなかった。

斉藤和義もまともに聴いたのはこれが初めてだった。記者会見などで話す姿に(失礼ながら)何じゃこの人?とか思っていたのだが、やっぱり音楽はスゴかった。僕にはギターのイントロからもう引き込まれてしまった感じ。決してロックだけを贔屓にしているわけではないつもりだけど、やっぱりスゴい存在感だった。

美和明宏の「ヨイトマケの唄」については、以前にNHKの音楽対談番組でこの作品に関する自伝的なエピソードを、美和さん自身が語られていたので、ある程度は理解していた。

その所為もあって歌にはすんなりと入ることができたのだが、やっぱり生で歌う姿には、紅白に出場しているいわゆる「大御所」と言われる人たち、北島三郎とか五木ひろしとか、そういう人たちも手の届かない処に行ってしまっている美和さんの圧倒的な存在感に、もう黙って視ているしかないという感じだった。

「女性より男性」と書いたのは、紅白という番組の企画自体がそうなっているから余計にそう感じるのかもしれないけど、これがいまの日本を代表する歌い手たちなのだとすれば、女性の中にはこうした存在感を感じさせる人がいなかったということ。

プリンセスプリンセスはもちろん、和田アキ子も石川さゆりも、先にあげた3者に比べれば影が薄い。いきものがかりはさすがに紅組トリということもあって、何か不思議な存在感を感じないではなかったが、やっぱりまだ確たる感じにはつながらない。

もちろん、中島みゆきや松任谷由実、あるいは(もういないが)美空ひばりなんかが出てれば、また違う感想があるのかもしれないとは思う。今回については、白組が勝ってしまうのは仕方ないことだと思わざるを得ない。

「量より質」と書いたのは、ある意味「強い個性」で圧してくる僕がスゴいと感じた人たちに対して、なんと言うか事務所がビジネスで作り上げた様なアーチストたちの表現する内容の、見た目の派手さとは裏腹にある曖昧さや未熟さを強く感じた。

こういう人たちは、ビジネスの世界で音楽タイトルの売上げ数とか、ランキングとか、イベントの観客動員数と言ったような、物量的にはスゴい記録を持つ人たちなのだが、紅白のような場で演じる内容を視ていると、こういう人たちのやっていることと、そういう数字の関係がなんだかよくわからなくなってくる。

なぜそんなスゴい数字があるのか。数分間の歌では表現できないということなのだろうが、だとしたらなぜここに出てるのかとか、そんな(所詮意味ないのかもしれない)ことをどうしても感じざるを得なかった。

ひとつだけ例をあげるなら、SMAPなんか決して芸歴は短くはないし、アイドル界では間違いなく大御所なのだろうが、その人たちの歌がこんな程度の内容で、別の何かで存在感を示したかといわれればそう言うわけでもなく、これが番組のトリなのかという大きな物足りなさがあった。

ビジネスとして成功を収めることは重要だが、一方でこの世界ではそうした物量だけを追求するようなモデルは、芸としての実力や実体を伴わない、「そこそこの」結果を残すだけなのだということを、あらためて感じたように思う。だからやっぱり一生ものの仕事ではないのだろう。

その昔、テレビの歌番組が全盛だった頃、音楽にこだわる一部の大物アーチストがテレビ出演を拒み続けていた。その理由に「たった3分間で自分の音楽は表現できない」みたいなことを言った人がいて(永ちゃんではなかったと思うが)、カッコいいこと言うなあと感じたのを思い出す。

でも、今回こうして視てみると、永ちゃんなんかが1曲でスゴいと思わせてくれたのに対して、テレビ慣れしている若手タレントは、歌おうがしゃべろうが視ていてスゴいとは思わせてくれず、ただ「器用に」仕事をこなして時間が過ぎていったのは、なんとも皮肉さを感じた。

まあ、僕が好きなももクロも、結局いまのところはそうした世界の子たちなのだろうが、僕自身はそういうこととは違う目線で見ているつもりなんだけどなあ。まあ他のアイドルと言われる人たちのファンも、多かれ少なかれ同じようなものなんだろうけど。

結成4年目にして、紅白や武道館といった大きな目標を達成してしたももクロちゃんたちが、新年早々に次の目標を「国立競技場でのライヴ」に置いたと聞いたとき、僕も引き続き彼女たちを応援して行こうという想いの一方で、目標そのものにある種の違和感を抱いたのも、正直なところ事実ではある。

「大きな目標!うん、頑張れ!」の一方で、「なぜいまさら国立競技場?それがももクロらしさか?もっと他にあるんじゃないのか?」とも感じた次第。やっぱり事務所が掲げる目標なのだろうか。数は体を表すのは...必ずしもそうじゃないよなあ。いろんなことやって、国民的なアイドルを目指すということなのだろうけど。

少し変な展開になったけど、「歌で、会いたい」をテーマに掲げた、昨年の紅白歌合戦は、いろいろ考えさせてくれるところがあって、それなりによい番組だったと思う。

「歌」ということをしっかりと真摯に追求する姿勢は、量の世界ばかりを意識する民放の年末歌特番とは一線を画す内容で、さすがNHKだと思った。今年また視るかどうかは...わからないけどね。

0 件のコメント: