8/06/2010

夏休みのマイニエリ

今日は立秋だった。一年で最も暑くなる時期、実際に東京も暑かった。休み前の仕事は午前中で終え、午後は休みをもらって夏休みに入った。子供も3週間続いたプールを終え、少しは水に慣れてくれたようだ。

久しぶりに、最近買った音楽を紹介したい。マイク=マイニエリの最新作「クレセント」である。

タイトルで既にお分かりの方もいると思うが、コルトレーンへのトリビュート作品だ。同時に、もう一人の献上先として、共演者であるサックス奏者チャーリー=マリアーノの名前が記されている。この作品はマリアーノの遺作でもある。

マイニエリとマリアーノの出会いは、2003年の初共演よりももっと以前からのことらしい。詳しくはアルバムのライナーを参照していただくとして、今回の作品は、そんな2人のデュオではなく、加えてマリアーノがやはり最近デュオアルバム等で共演したベーシスト、ディエテル=イルグが参加するトリオ編成で収録されている。CD2枚にコルトレーン縁の作品を中心にしたスタンダードナンバーが収めらている。

マイニエリ自身ももはや71歳らしい。これにはちょっと驚いた。演奏は見事だが、確かに往年の飛び跳ねるようなマレットさばきは、むしろ転がるようなと言えるものに変化していて、それはそれで新たな魅力である。録音の良さもあいまって本当に綺麗なバイブラフォンの音色であり、本作品の大きな聴き所となっている。

聴いた当初に少しは戸惑うのはマリアーノのサックスである。コルトレーントリビュートの宿命として、サックス奏者にかかる一定の期待は免れない。彼の持つ資質がそれに沿うものであるか、これは微妙なところである。マイにエリの意図がそこにあることは分かっていても、聴き手にはそこまではにわかには伝わらない。

果たしてマリアーノの丸いアルトで"Giant Steps"をやる必要があったのだろうか。なぜオープニングが"Mr.Syms"なのか。このあたりの理由を見出せるまでには少々時間がかかるのだが、結果的にはアルバム全体としてはコルトレーンのイメージとは一定の距離を置いた不思議な聴き応えがあり、僕は気にいってしまっている。

ベースのイルグはかなりの実力者である。最近ではベースのソロアルバムも発表しているようだ。決してバカテクではなく、堅実なベースプレイをしっかりと聴かせる演奏としてできる人物だ。このアルバムでは、その意味でマイクとチャーリーを間を取り持つ存在として欠かせない。

僕はとにかく少人数の編成が好きだ。このアルバムが僕の心にすっと入り込んでくるのも、そういう理由があることも大きい。いい音楽を奏でるのに、必ずしも多くの人は要らない。

夏休みの夜はじっくりとこいつに耳を傾けることになりそうだ。

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