6/20/2010

レスターボウイのブラスファンタジー

レスター=ボウイの"The Fire This Time"が突然復刻されたので、アランの店で買った。

これは彼が率いたブラスバンド「ブラス・ファンタジー」が1992年に行ったコンサートの模様を収録したもの。ジャケットに掲げられた炎上する建物の写真は、この公演の前日に起こったロス暴動の一コマであり、アルバムタイトルの由来でもある。

レスターと言えば、"Great Black Music"を標榜するフリージャズユニット「アート・アンサンブル・オブ・シカゴ」の活動が有名だが、「ブラス・ファンタジー」はレスターのもうひとつの顔を伝えるユニット。吹奏楽版のジャズオーケストラで、ドラムとパーカッション以外はすべて金管楽器で構成され、フリージャズとは縁遠い、ストレートで親しみやすい演奏が魅力である。

レスターはこのユニットをAEOCとは独立して行っていたが、この公演でパーカッションを務めるのはAEOCのドン=モイエである。その理由は、アルバムのライナーに記された「このアルバムをフィリップ=ウィルソンの想い出に捧げる」と、2曲目の名曲"For Louis.."の冒頭でレスター自身が語るあるエピソードをお聞きいただければわかるようになっている。一聴して受ける音楽の印象とは裏腹に、やや過激な感じのジャケット写真やアルバムタイトルにまで通じる重く哀しいお話である。

ブラスバンドが苦手でなければ、レスターの音楽に触れてみる作品としてこれは非常におすすめである。パーカッションを除いてたった8人のブラスバンドが奏でるジャズは、とても楽しく美しく、哀しく力強い。

レスターが世を去ってもう10年以上がたつ。ブラス・ファンタジーとその関連の作品はECMなどから数枚のアルバムが発表されていて、"The Great Pretenders"と"I Only Have Eyes for You"はいまも人気の名盤だ。

個人的には"For Louis..."のオリジナルを収録していながら、現在廃盤になっている"All The Magic"をなんとか復活させていただきたいと思う。ブラスファンタジーの演奏とレスターのソロ演奏をカップリングしたいわくつきの2枚組なのだが、そこはやはりオリジナルのかたちで再発を願いたいものである。

僕にとっても決して忘れられないジャズトランぺッターだから。

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