3/03/2009

10年目の命日

少し気分の落ち着かない週末だったせいか、ろぐの更新が遅れてしまった。このところまた季節が冬に戻ってしまい寒い毎日である。関東ではこれから明日の朝にかけて雪が降り少し積もるとのことだ。

この月曜日に仕事でひとつのイベントがあった。営業部門からの要請で最近話題のとあるコンビニエンスストアチェーン大手の社長を相手に、ちょっとしたプレゼンを行うことになっていたのだ。

自分の出番はほんの20分弱程度なのだが、それに続く営業部門のプレゼンを含め、事前に先方との内容打ち合わせが1ヶ月半ほど前からあった。正直この手の仕事の進め方は厄介なことも多い。

僕が発表する内容は飾りの様なもので、消費を取り巻く大きなトレンドは現在こうなっていると思いますという内容を、流通業大手の社長相手にするという、まさに釈迦に説法そのものである。こういう時はやっぱり自分で考えたことを多少大胆に言い切るのがいい。何処かで見聞きしたような内容を寄せ集めてわかったような話をするのは一番悪い。

肝心の営業からの話がいまひとつぱっとしない内容だったので、イベントとしては必ずしも成功だったとは言えなかった。それでも、相手の社長は僕らが用意したしがない材料をもとに、いろいろな持論を展開してくれ、恥ずかしくもそれが僕にはとてもいい勉強になった。

当たり前のことを言っているようで、その言葉が突く本質の迫力はやはり相当なものである。具体的なことをここには書けないのが残念だが、社長就任時に若手から抜擢されたことが話題になった人物だけに、経営者の資質ということを見せつけられた思いである。

経営に限ったことではないだろうが、自身でよく考えること、それを自分でしっかり表現すること、これはとても大切なことだ。振りをしたり寄りかかるのはそうしたことが出来たうえで、使い分ける高等なテクニックだ。器にない人は真似をしたり寄りかかることから離れることができない。実体のない寄りかかりは早晩崩れさる。

その日、僕は仕事を終えると早々に帰宅した。家では妻がちょっとしたごちそうを用意してくれていた。別にひと仕事を終えた僕へのおもてなしというわけではなく、この日は母の十回目の命日だったから。

テーブルに写真を用意して、生前母が僕に買ってくれた小さな花器に妻がかわいらしいチューリップの花を生けた。白ワインのハーフボトルを開けて乾杯した。母はたぶんそこそこお酒はいける口だったと思うが、妻も交えてゆっくり食べて飲むという機会はほとんどなかった。

こういう何かのイベントで食事をするときには、キースの"The Melody at Night, With You"がうちの定番になっている。誰かのことを明確に想う気持ちにあふれたこの演奏は、母のことを想う気持ちにも十分通じるものがあった。

食事の後、シャワーを浴びて、独りでもう少し酒を飲んだ。今度は同じキースの"Spirits"を聴きながらだった。自分のなかで何かをやり直したいと思う気持ちがそうさせたように感じた。

これら2つのアルバムは、いずれもキースにとってのあるひとつの区切りを表現するものである。それらにまつわるエピソードとキースの音楽に対する資質は、DVD作品の"Art of Improvisation"に詳しい。

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