週明けの納期に向けた資料作りが佳境の最中、僕のデスクで携帯がなった。イタリアに住む知人からだった。仕事で東京に来ているのだという。滅多にない機会なので、木曜日のお昼を一緒に食べることにした。ちょうど頭の中も行き詰まり気味だったから、何かいい刺激にもなればいいと思った。
会社近くの駅ビルにある韓国料理屋で石焼ビビンバを食べ、その後、喫茶店(「ルノアール」である)でコーヒーを飲んだ。話はお互いの仕事のことを当たり障り内ない程度に交換し、欧州の景気とかアメリカ経済のこれからとか、一応ビジネスっぽい内容に発展しかけたが、やはりこっぱずかしくなったように、突然に自然な転換をみせてお互い大好きな音楽の話になった。
「最近、何聴いてるんですか?」の問いに答えるかわりに、僕はiPodを彼に手渡した。カバーフローに流れるジャケット写真をパラパラめくる彼の嬉しそうな反応を見るのは、僕にとっても楽しい光景だった。彼は最近行ったマンハッタンの話を聞かせてくれた。
それからは「ドルフィーは聴けば聴く程スゴイ」とか、「エレキマイルスはなぜいつまでも輝き続けるのか」とか、ヌルいコーヒーを挟んでそんな話が続いた。ほんの短い間だったが気分のいいひと時を過ごすことが出来た。彼は相変わらず溌剌としていたし、ご家族も元気だとのことだった。
いろいろと細かい仕事が重なってきて、なかなか一つの仕事にじっくりというわけにはいかなくなってきた。考えてみれば、本来はもう自分が何かを作るというような身分ではないのかもしれない。そう考えると、組織の中で人間の能力というのは、ある次元においてはきちんと粒を揃えておかなければならない。
今週はいわゆる「エレキマイルス」の傑作「ライヴ イーヴィル」をよく聴いた。なかでも、"What I Say"と題されたロックナンバーを何度も続けて聴いた。しまいには、本アルバムのオリジナル録音である「セラー ドア セッションズ」全6枚分をiPodに戻して聴き直したり、DVD「マイルス エレクトリック」のワイト島ライヴ映像を見直したりと、いつもの集中癖が出てしまった。
セラードアの"What I Say"は、「ライヴ イーヴィル」にも収録されたヴァージョンが最も素晴らしいが、この曲の魅力として、壮絶なディジョネットの8ビートの他に、キース=ジャレットの歪んだローズピアノ演奏が実にカッコいいということに気がついた。キースは途中何度も叫び声をあげているが、それもそのはずである。特にマイルスがテーマを吹くまでの出だしの部分で展開されるソロがやたらと素晴らしい。
今日は日曜出勤してしまって疲れたので、この辺でやめておく。
「ライヴ イーヴィル」マイルス=デイヴィス
0 件のコメント:
コメントを投稿