7/19/2008

サイレンス

このところCDを買い控えていたようなところがあった。仕事は忙しく、毎日通勤で聴くiPodの音楽と、家に帰って少し飲むお酒が楽しみという一週間だったので、なんだかつまらんなあと思っていた。そこに少し前にネットで注文してあったデヴィッド=マレイとマル=ウォルドロンのデュオ「サイレンス」が届いた。

これはいい!素晴らしい作品だ。演奏はもちろんのこと録音も素晴らしい。マレイもマルもすごく近くで演奏してくれる。僕は冒頭のバラード"Free for C.T."でもう圧倒されてしまった。マレイのバスクラが静かに響き渡るこの心地、これはもう快感である。ちゃんとしたステレオセットを通して大きな音で聴くともっといいだろうなあ。

タイトルの通り演奏は比較的落ち着いた曲が中心。マルの特徴と年齢を考えればそれも納得できる。収録されたのは2001年の10月とある。場所はマルが住んでいたベルギーのブリュッセルである。マルが76歳でその地で亡くなったのは2002年12月だから、おそらくはこれが最後のスタジオ録音作品だろう。「モールス信号」などといわれた彼のピアノスタイルはここでもしっかり健在だ。

とりわけ素晴らしいのは4曲目の"I should care"。ここでのマレイの美しさはどうだろう。彼のことを「フリーの多作家」と片付けている人には、いますぐこれを聴いて改悛していただきたい。これにマイルスの"Jean-Pierre"が続き、楽しい和やかなセッションが展開される。この曲調からしてマレイがじっとしているわけがない。彼の暴走ぶりは聴いてのお楽しみだ。

ラストはマルのオリジナル"Soul Eyes"。コルトレーン初め多くの人が取りあげてきた名曲である。マルの短くも美しいイントロに続いてマレイのバスクラがテーマを歌う。かっこいい。そして続くソロがこれまた激しい。そしてメインを勤めるのはやっぱり作曲者だ。これがマルの最後の演奏かと思うとジーンとくるものがある。うーん・・・。

暑い毎日ですが、これはエアコンを効かせた夜の部屋でグラス片手にゆっくり聴くのもよし、暑い部屋で扇風機にあたりながら麦茶で聴くのもいい。とにかく悪いことはいいません。是非とも買って聴いてください。この夏の大推薦盤!


「サイレンス」

デヴィッド=マレイ (ts,bcl)
マル=ウォルドロン (p)

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