気がつけばもう6月である。
親父の所為にする気はないのだけど、4月以降ばたばたとして仕事にいまひとつ身を入れていなかったツケが一気に出てしまった。5月末発行予定のレポート作成が難航し、結局この土日も家で作業を続け、それでも作ることができなかった何点かのアイデアを泣く泣くあきらめ、極めて不本意な内容ではあったがようやく今日になって発行することになった。
こういう作業は徹夜してどうなるというものではないので、家でも思う様に作業がはかどらないときは、しばらくパソコンを離れて妻に構ってもらったり(動物である)、夜が更けると酒を飲んでしまったりしながら、いわばダラダラと作業が続いた。それでも約束は約束である。仕事の力が衰えたかなあ。
親父の方は、薬のおかげで痛みに苦しむことはあまりないそうだが、それと引き換えに(何にでも便利なものにはウラでツケがたまるものだ)意識や挙動の方が少し的を得ない。そこへ持ってきて最近になって急にあることが気になり始めたらしく、家に帰るといって騒ぎ出し病院の人の手を焼いているようだ。もう歩くことはできないのだが、それでもベッドを降りて部屋から這い出し、小銭入れを握りしめてエレベータで下に降りようとするのだそうだ。連れ戻そうとする看護士には手を挙げるという始末である。
病院のことはあまり詳しくわからないのだが、この病院はこうしたことがあるたびに、家族や身内に助けを求めてくる。もちろん僕も知らぬ振りをしたいわけではないのだが、何かと言っては近くに住む叔母に親父のところに来て欲しいだの、付き添って病室に泊まって欲しいだのと言ってくる。医師の見識と技量も重要だが、看護の方針や体勢というのはまた別の意味で重要なポイントだ。
そんなわけであまり落ち着いて音楽も聴いていないのだが、先に亡くなったマイケル=ブレッカーが最後に遺した作品が気に入っている。タイトルの意味は「巡礼の旅」という意味。アルバムに収録されている最後の作品のタイトルにもなっているのだが、このタイトルがマイケル自身がつけたものなのかは疑わしい。
作品の内容は、いたってストレートなマイケルワールドでいっぱいある。一時は、楽器が吹けないほど衰弱したこともあったそうだが、この演奏が録音された2006年8月のブレッカーはすこぶる調子が良い。特に何を気負うわけでも予感するわけでもなく、いままで通り自分の音楽を吹きまくっている。確かにブローのピークが一時期に比べて弱い様に思えなくもないのだが、音楽は快調そのものである。
メンバーはピアノにハンコックとメルドゥを含む超豪華メンバー。僕にとってうれしいのはドラムを全編ジャック=ディジョネットが叩いていることだ。キースのトリオでの繊細な演奏とはまた違い、ジャック独自のグルーヴが存分に楽しめる。その意味での一押しは4曲目の"Tumbleweed"だろう。こんなご機嫌なジャック節を聴くのは久しぶりかもしれない。
国内盤のタイトルは「聖地への巡礼」とそのまんまであるが、あまり遺作だ何だと騒いだりせずに味わいたい作品である。マイケルはただひたすら生きようとしている。僕の父のいまの様子もそれと変わらない様に思う。死に至る病を宣告された者がより自分らしく生きようとしている。ただそれだけのことだ。
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