5/26/2007

デイヴ=リーブマン/リッチー=バイラーク「リデンプション」

 久しぶりにかなり強力なジャズCDに触れることができた。今回はこれを紹介したい。

内容は、サックスのデイヴ=リーブマンとピアノのリッチー=バイラーク、そしてベースのロン=マクルーアにドラムのビリー=ハートからなるユニット「クエスト」が、15年ぶりの再結成により演奏した記録である。録音されているのは6曲、2005年11月の欧州ツアーから前半3曲がスイスのバーデンにおける演奏、後半3曲がその前日に行われたフランスのパリでの演奏だ。

Questとは「探求」と言う意味である。このユニットはリーヴマンとバイラークの双頭ユニットととして、確か日本側の企画で誕生した。1981年から数枚のアルバムがいろいろなレーベルを通じて発売されている。デイヴは1970年のデビューから現在に至るまで、ほぼ一貫してコルトレーンミュージックの継承者としてコンスタントに演奏活動を続けている人だ。一時期、ソプラノばかりを吹いたこともあったが、基本的にはトレーンと同じくテナーとソプラノを中心にした強力かつ自在な演奏が魅力である。

今回の作品でも、コルトレーンに所縁の作品が2曲"Ogunde"と "Dark Eyes"収録されており、デイヴはいずれもテナーで挑んでいる。また冒頭のモンクの"Round Midnight"は、リッチーとの息のあったデュオ演奏。リッチーはやさしく美しい側面と鬼気迫るハイテク演奏を自在に使いこなし、この難しいコード進行の作品を見事に演奏している。僕も昔、この曲を演奏したことがあるが、これだけこの曲を自分のものとして扱えたらさぞかし楽しかっただろうなあと感心するばかりである。

3曲目に収録された2人のオリジナルをつなげたメドレー"WTC|Steel Prayer"が、これまた非常に素晴らしく感動的な演奏である。いずれもタイトルどおり9.11の悲劇をテーマにしたものだが、ジャズという自由を根底にした芸術家らしく、悲劇を乗り越え美しい愛に昇華させてゆく展開には、思わず聴き惚れてしまった。そして、最後の2曲オーネットの"Lonly Woman"とビリーのオリジナル"Redemption"も事実上メドレーとして演奏されている。前半ではデイヴが木製の横笛を披露、後半ではソプラノに持ち替えて4人の壮絶なインタープレイが炸裂する。

2~3週間前に、ここは最近少しご無沙汰していたアランのお店「ジャズロフト」 (jazzloft.com)から、最近のお勧めCDに関するメールをもらったのだが、今回の作品はその中から出会った。発売元は僕のお気に入り、スイスのhathutである。ここの作品は若干入手するのが難しい。僕の知る限りで最も確実なのはアランの店だ。何せ彼のところはレーベルのサイトに特約店として掲載されているほどなのだから。そうでなければ、東京近郊の方はディスクユニオン各店で、あるいはタワーレコードの基幹店(関東なら渋谷店か新宿店、関西ならなんば店か梅田店)であれば出会えるのではないかと思う。

毎回プレス枚数が限定されて少ないのがhathutの特徴だが、今回の作品にはジャケットに枚数の記載がなく"2007,1st edition"とある。さすがに彼らもこれには自信があるようだ。ともかくこの手の音楽に一度でも共鳴したことのある方なら、間違いなくお勧めの内容である。熱い男達の汗が全編にみなぎる快演、必聴!

David Liebman 公式サイト

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