11/25/2006

クロノス・クァルテット「ナイト プレヤーズ」

 めっきり寒くなった。朝の気温が10度を下回る毎日。今年はなぜか洋服関係に出費が続く。しばらくあんまり大した買物をしてなかったからの様にも思えるし、ある種、自分なりのファッションの方針の様なものが明確になったのかもしれない。購入の大半はネット通販である。これには理由があるのだが、ここでは書かない。

そんななか、秋分の日の祭日に川崎のショッピングセンターに出かけた。お目当ては「ブーツ」である。僕は以前からくるぶしが隠れる程度のショートブーツを愛用している。真夏を除けば、ほとんどオールシーズン履いている。履かない時はスニーカー。いわゆるビジネスシューズは、ビジネススーツとともにほとんど使わない。

僕にとってショートブーツの始まりは、中学生の時に流行したコンバースのハイカットだったと思う。もちろん厳密にはブーツではないが、ああいう形の靴にこだわり出したのは、その出会いがあったからだ。大学生になると、周囲の多くは、同じコンバースでもより洗練されたローカットに移り、デッキシューズだローファー、プレーントゥだウィングチップだと高級になっていった。

僕も一部そちらに興味を持ったのは事実だが、あくまでも主流はコンバースのままだった。なんだかんだ言ってくるぶしまで足をすっぽり包んでくれる履き心地は捨て難かったし、CDやレコードを買うお金も欲しかった。学生時代にはたぶん5、6足履き潰したと思う。それでも友達が自慢していたリーガルの高い革靴一足分の値段に満たない。リーガルなんて、いま考えれば全く大した靴ではないのだが。

いまは革のショートブーツを5足持っている。ブーツと言えば圧倒的に女性のアイテムという感が強い。最近は特に街を歩くブーツ姿の女性をよく見かけるようになった。あれはあれで非常にある種の魅力を感じるのだが(一部女性からは「変態!」呼ばわりされるかもしれないが、いちいち気にはしない)、やはり男のファッションにはなかなか取入れられないセンスである。

それに影響を受けたのかはわからないが、今年は少し長めのブーツを買ってみようかと、少しネットやお店で捜してみたりした。やはりあるのはいわゆるエンジニアブーツが中心で、あとはやや奇抜さを狙ったデザインブーツだけだ。前者は僕からすればいわゆる長靴だ。実用性を評価して買うことはあるかもしれないが、ファッションとしてはあまり好みではない。後者は、もうセンスの問題だろうが、どうも僕の求めるものとはかなり異なる世界から生まれているようなものしか見かけない。もっとシンプルなものはないのだろうか。

そうして、昨日立ち寄ったショッピングセンターで、ようやくそれに巡りあったのである。普通のショートブーツよりはもう少し丈が長く、足にはぴったりフィットする。デザインもシンプルだ。茶色と黒があります、と言われて両方欲しいと思ったが、我慢して茶色を買った。一足1万4千円也。まあいい買物である。

今日一日それを履いて、丸の内から神田、秋葉原と歩いてみたが、とても満足の行く履き心地であった。丸の内にある「インデアンカレー丸の内店」に行ってみた。休日なので思った程混んではいなかった。カレーの味は大阪で二百回以上は食べた味と変わりなく満足だったが、サービスがいま一つだった。

気になったのは次の3点。ピクルスの盛りが少ない(大阪梅田三番街店の半分程度)、大して混んでもいないのにカレーが出てくるのに時間がかかりすぎる(確実に2分は待った)、さらにルーを仕切る副店長の声がでかくてうるさい(客に向かって話すのと店員に指示する声が同じ音量である)。改善を期待したい。

さて、前回書いた新しいイヤフォンのおかげで、前よりも音楽をよりよく楽しめるようになったのは喜ばしい。お気に入りの作品でも、いままでiPodで聴くのはためらわれたものが、わりと抵抗なく楽しめる。一概にジャンルだけの問題ではないが、クラシックや現代音楽系のものは特にそうだと思う。

今回ご紹介する作品もその一つ。現代の弦楽四重奏団を代表するユニット、クロノス・クァルテットが1994年に発表した作品集である。これを買った当時は、心から気に入って本当に良く聴いたものだが、このところの僕の音楽試聴スタイルにはまったく合わずに、すっかりご無沙汰になっていた。

クロノスは現代音楽を中心にしたレパートリーで知られる。彼等はこれまでに実に多くのアルバムを発表している。僕はそのうち10枚程度を持っているのだが、その中で一番好きなのがこの作品である。

このアルバムには7つの作品が収録されており、冒頭のモンゴル・トゥバ地方の民謡をアレンジした作品を除いては、すべて20世紀に作曲されたもの。作曲者は一般には全く知られていない人ばかりだろう。僕も、4曲目のロシアの女性作曲家グバイトゥリーナと、ラストのアルバムタイトル曲を書いたグルジアのカンチェリの2人しか知らない。ウズベキスタンの作曲家ヤノフスキ—による作品を除くすべての作品は、クロノスのために書かれたもの。作品に共通するのはタイトルにある「夜の祈り」である。それは同時に密かな祈り、平和への祈りでもある。

サンフランシスコを活動拠点にするクロノスには、アメリカ系作曲家のレパートリーが多い中、ユーラシア大陸のマイノリティ達の祈りを中心に構成された本作は、やや異色の存在ではあるが、おそらく彼等の全アルバムの中でもかなり高い完成度を持つものだと僕は思う。

聴きどころは、ソプラノ歌手のドーン=アップショウをフィーチャーした2曲目「ラクリモーサ」、そしてゴムボールを弦の上に落とした音をテープに録り、それを効果的に使った4曲目グバイトゥリーナの「弦楽四重奏曲第4番」。そしてカンチェリによるクリスマスのない生活をテーマにした組曲の終曲「ナイトプレヤーズ」。

不遇の国政、そして不遇の現代音楽という時代を生きるそれぞれの作曲家達が産み出した音楽は、驚くばかりの名曲揃いである。20世紀の社会がもたらした戦争と民族問題、そして20世紀の音楽が楽譜から離れて追求した音楽表現手法、それらが見事に融合した素晴らしい作品集になっている。そしてこのアルバムは、現代人が踏み出すことのできない一歩を促しているように思える。

クロノスの新作が最近発表されたらしい。しばらくご無沙汰していたので、これを機にまた耳を傾けてみたいと思う。

Kronos Quartet クロノス・クァルテット公式サイト

(おまけ)ひとりおでん


妻が親孝行で実家に帰った週末。自宅で熱燗をやるのに何か温かいものをということで、「ひとりおでん」をやってみました。スーパーで買った500円のおでんセット(2人前練り物中心)を前夜に煮込み、そのまま鍋にふたをして24時間。電気鍋で温めなおして、お酒をお燗しました。なかなかおいしく出来上がりました。

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