4/02/2006

ジャッキー=マクリーン「レット フリーダム リング」

 76歳のオーネット=コールマンの勇姿に感動したのも束の間、アルトサックス奏者ジャッキー=マクリーンの訃報がもたらされ落ち込む。73歳だったそうだ。マクリーンはオーネットの音楽に深く共感し、ブルーノートのリーダー作「ニュー アンド オールド ゴスペル」で念願の共演を果たしている。

ジャズが好きな人には、ソニー=クラークの「クール ストラッティン」、マル=ウォルドロンの「レフト アローン」など、定番作品でも素晴らしい活躍をしているのは、ご存知の通り。1950年代からアルトの名手として数々のリーダー作とセッション作品を残している。

当初はチャーリー=パーカー系の奏者として(それでもはじめからかなりクセはあったが)活躍したマクリーンだったが、1960年代からは新しいジャズの流れに共感しつつ、いわゆるブラックムーヴメントの一環としてのフリージャズとは少し距離をおいて、あくまでも自身の音楽芸術に根ざした作品を生み出した。

とにかく音を聴けば、知らない曲でも「あ、マクリーンかな」と思い、ソロでお決まりのフレーズ(わかる人にはわかると思います)が飛び出すに及んで「あー、やっぱりー」となる。そんなこんなで手に入れた彼の参加したアルバムが、僕の手元にも十数枚ある。

彼の訃報に接して、僕がいま聴いているのが今回の作品。これは彼の音楽的転換点とされる1962年の作品。当時、まだフリージャズというものは、スタイルとしては確立されていなかったが、その精神的な部分は既に確実に彼等の中にあったことを示す作品だと思う。タイトルはキング牧師の演説で有名な言葉である。

原作のライナーノートは、ジャッキー自身によるもの。4曲中、有名な1曲目「メロディー フォー メロネー」そして3曲目「ルネ」は、それぞれ自分の娘と息子の名前を冠した作品。いずれも彼の新しいスタイルを象徴する音楽。彼はそこに自身の子供と同様の思いをかけていた。

そしてそれらに挟まれた2曲目、バド=パウェルの「アイル キープ ラヴィング ユー」の美しさ。「レフト アローン」もそうだが、こういう美しい旋律を奏でるマクリーンも本当に素晴らしい。後のアルバム「デモンズ ダンス」に収録されたウディー=ショウの手による「スウィート ラヴ オヴ マイン」同様、忘れられぬ名演である。

そして最後の「オメガ」。これまたマクリーンの新たな芸術への執念を感じさせる、壮絶な演奏。アルバム全編を通じて聴かれる、耳をつんざくアルトの咆哮は、確かに彼の宣言であり確信である。あーもうここまで聴くと涙が。。。僕も歳とったかな。

他のジャズの巨人達と同様、彼はもう十分すぎるくらいの素晴らしさをこの世に記録として遺してくれている。僕らはそれをいつでも聴くことができるのだ。逝ってしまった彼のことを惜しむより、彼が遺してくれたものから自分が何を得たのか、言葉にするものではないかもしれないが、それが現時点でははっきりとわからない、そのことが悔しい。

0 件のコメント: