1/28/2006

ジョン=ケージ「リタニー フォー ザ ホェール」

 前回のろぐを書いた翌日から、ひたすら仕事の資料を作る毎日だった。土日も外に出ず、持ち帰った書類とPCとにらめっこの週末。おかげで月曜日の朝には、顧客に内容の全体的な骨子については認めていただき、ある会社向けの仕事はほぼ終わりが見えた。

しかし、内容を指導していただいた経営企画部門の部長さんから、最後に「金曜日の役員会議で発表してもらう前に社長に説明しておかないとね」という、想定外の一言がもたらされ、結局、午後にセミナーで講演する水曜日の朝にその時間を入れることになってしまった。

その講演の資料はかなり遅れ気味になっていたけど、こちらはもうある程度ぶっつけでしゃべるしかないなと開き直った。火曜日の早朝には、なんと夢のなかでストーリーの一部を作る自分を認識して、こんな夢を見るようになったかと少し驚きもした。人間は追いつめられると不思議な能力を発揮するものだ。その内容はもちろん講演の一部に組み込んだ。

実はその火曜日の夜に、友人と東京青山のブルーノートにマイク=スターンのグループを聴きにいく約束をしていた。予約したのはセカンドセットだったので、開始は夜の9時半。もともと夜になると仕事ができなくなる性格なので、セミナー資料の方はまあほどほどでいいかと、同僚と7時に会社を出た。諦めと開き直りの違いについて少し考えようとしたが、すぐにやめた。

夕食は彼の推薦で、表参道を少し外れた所にあるトンカツの「まい泉」。あんなところにあるのは知らなかったが、なかは結構広くて、なかなかのにぎわいだった。ビールを頼んで、お互いそれほど高くない定食を頼んでしばし話をする。以前、三軒茶屋の「阿川」に連れて行ってもらった彼だ。飲んでしまえばこっちのもの(訳が分からん)。

腹がふくれると、少し早かったがブルーノートで待つことにした。この日の演奏については、また忘れなければ次回にでも書こうと思う(いつものマイクだった、それから・・・)。ブルーノートを出た時は既に11時を過ぎていた。もう眠いのなんの。とぼとぼと川崎の自宅まで帰り、ちょっと焼酎を飲んだ。1時過ぎには寝たと思う。

翌水曜日、朝からその社長様への資料のご説明。内容に心をひかれたように見受けられなかったが、とりたてて反論は出なかったので、よしとする。そして3時間後にはセミナーでの講演が始まった。僕の知っている人も何人か聴きに来てくれていた。与えられた70分を超過して90分しゃべり続けた。話慣れた前半でつい舌が回ってしまい、半ばアドリブだった後半は支離滅裂に向かったが、まあなんとかなった。この日は5時半に会社を出て、ラーメンを食べて酒を飲んで、10時には眠ってしまった。

木曜日は翌日の発表に向けて資料の細かい調整などで、すぐに時間が経ってしまった。午後には事務局に資料を提出して、あとは明日の発表をするのみとなった。うっすらと桃源郷の様な光と香りが漂い始める。

金曜日、役員会議は朝から。もちろん門外漢なので、自分の出番以外は中に入れてもらえない。与えられた時間は20分だったが、前の議事が長引いて予定の時刻になっても招かれる気配がない。きょうはお流れかと憂鬱な笑みがこぼれたとき、ドアが開いた。「どうぞ」。

用意した30枚余の資料を早送りで説明し、10分ちょっとの超短縮版で説明を終えた。その日の午後は、部下が作成したレポートのチェックとか、飛び込みで入った案件の相談にのったり、おつきあいで外部団体主催の講演会を聴きにいったりしているうちに過ぎてしまい、時計は6時になった。こうして1週間が終わった。

今朝はぐっすりかなあと思ったけど、やっぱり6時に目が覚めた。ベッドでだらだらしても結局8時には起きてしまった。あんぱんとコーヒー、野菜ジュースの朝食をとって、何しようかなあと考えてみた。いらなくなった冬服がいくつかあったので、ものは試しにリサイクルショップに出してみることにした。

コートやブルゾンなど、6点ばかり持ち込んでみたが、結局引き取ってもらえたのは2点だけ。それでも2000円になった。カレーを食べて家に帰り、コーヒーを飲んで部屋でごろごろした。夕方になってようやくMacを開いてこのろぐを書いている。

今回の作品は唐突に決めた。前回もケージだったが、別にこの1週間ケージを聴いていたわけではないことは、なんとなくここまでの展開からご察しいただけるだろう。「リタニー」とは「連祷」という意味。ケージの声楽作品ばかりを集めたアルバムである。それぞれの作品についは、ケージ独特の考え方が作曲の根底にあるのだが、それをいちいち気にしなくても、ちゃんと楽しむことが出来る。

特にアルバム冒頭に収録されているタイトル曲は、グレゴリオ聖歌を思い起こさせる比類なき美しさだ。それに続いてケージ独特の実験的な作品が展開する。こうした声中心の作品というのは、普段なかなか近寄りがたいものなのだけど、何となく僕のこの1週間を表しているような音楽だなと思ったので、これをとりあげることにした。

それにしても僕のような仕事で(おそらくこういう仕事をしているサラリーマンは結構多いと思うのだけど)、忙しいというときに消費する情報の量たるや相当なものだと思う。調べたり、表現したり、修正したり、議論したり、そして発表したりと。残るのは疲労と資料だけというのも虚しいものだ。

講演の仕事は、やってみてなかなか得るものが大きかった。やっぱり単純なデータの整理とか分析ではなく、まとまった自分の考えを表現して話したりするのは楽しいものだなと思った。もう少し準備の時間が欲しかったが、忙しいなかでそれなりの張り合いが出ていたことも事実だと思う。またそういう機会があれば、挑戦したいと思う。

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