1/20/2006

ジョン=ケージ「7つの俳句」

 いや〜もう忙しい。量が多いというよりも内容が面倒。これは困ったものだ。ある大企業の来年度事業計画に関する前提条件を整理せよ、というものを来週の木曜までに作らないといけない。発表時間はたった20分なのだが、相手はその社のお偉いさんたち。当然、事前に何度も打ち合わせをやっていくのだが、なかなか要求が厳しかったりで、ダメだしくらってガックリの繰返しである。

加えてその前日の水曜日には、「インターネットと個」みたいなテーマで1時間程の講演をしなければならない。こちらは自社のイベントだし、いままでの蓄積が何にもないわけではないので、さっきの仕事よりまだ少し気は楽だが、いかんせん時間が長い。しかも聴きに来ていただける人が多様なので、前提となる知識がかなりバラバラの様子。レポートとしてよく出来ているという以前に、話として面白くないといかん、というパフォーマンスも意識しないといけないので、先の仕事とは勝手が違う。

作家さんは、複数の連載を器用にこなすらしいが、エッセイと旅行記と短編小説とかならまだわかるが、長編の連載小説をいくつも同時並行するというのは、にわかに信じがたい。ましてや恋愛小説を3つも4つもというのは、実際に3人の相手を掛け持ちする方がまだ楽ではないかという気すらする(したことはないが、残念ながら)。

タイに帰りたい、などとなんの足しにもならぬシャレを空しくキメたところで、寒さがこたえる。早く帰ってしまって、ついつい酒に手が伸びる。いかん。そうして1週間が過ぎたという感じ。そろそろもう後がない状況でヤバい。観念して週末も家でお仕事をすることにした。よっていつもは週末に書くろぐも、今回は金曜日の夜に書いている。んなことしてないで仕事せんか!でも、これは大切な気分転換なのだ。

さて先週の土曜日に、今年はじめての音楽探しに渋谷に出かけ、のんびり気長に探していたCDに巡り会った。"THE NEW YORK SCHOOL"と題されたこの作品、中味はもちろんニューヨークの学校の文化祭とかではない。1950年前後、ニューヨークを拠点に活動していた、アール=ブラウン、ジョン=ケージ、モートン=フェルドマン、クリスチャン=ウォルフの4人の作曲家たちの当時が、そう呼ばれているのである。このディスクにはその4人のその時代の作品が収録されている。

この"THE NEW YORK SCHOOL"は第3作まであって、かなり前に廃盤になっていて、プレス枚数も決して多くはない(たぶん3000枚程度だと思う)。僕はその3枚をいまもずっと探している。といっても中古屋に出入りしているうちに、いつか出会えるだろうという程度に思っていた。それがぴょんと目の前に現れたのだ。まあ中古屋での出会いとはたいていそんなものなのだけど。

僕は現代音楽が大好きで、この4人についてもわりと聴いている方だ。とりわけケージは大好きである。憎めない人柄、奇抜な発想、そして繊細な音空間。彼の作品は「耳を傾ける」という表現がしっくり来るものが多い。意外にもこのろぐでケージをとりあげるのははじめてだったようだ。今回の作品は、このCDに収録されている、ケージのピアノ作品である。

東洋とりわけ日本の文化に強い関心を持っていたケージの作品には、それらを題材にした作品も多い。おそらく一番有名なのは「龍安寺」だろう。これについてはまたいずれ書く機会があるだろうと思う。今回の作品の原題はそのまんま"Seven Haiku"である。もちろん"Haiku"とはあの「俳句」のこと。書かれたのは1951-52年といわれている。

そのタイトル通り、ケージの7人の友人をテーマにした、7つの句が収録されている。もちろん歌ではない。ピアノ演奏による「音の俳句」である。俳句のルールは日本人なら誰でも知っている「五ー七ー五」だ。なるほど音の数がそうなっているんだなと思った人はオシい。ケージは音の俳句のルールとして、拍子を選んだ。5拍子ー7拍子ー5拍子がそれぞれ1小節ずつ、それが1つの句となっている。

「まあ、おかしなことを考える人だねえ」と思った時点で、この作品の目的は半ば達せられた様なものだろう。ケージが作りたかったのは7つの俳句だけではなく、音の俳句という様式でもあった。だから「これならボクでもワタシでもできるぞ」と、楽器をちゃんと弾けない人でも、拍子だけとって自由に表現してみればいい。彼が望んだのはおそらくそういうことだと思う。そういう人なのだ。

当然のことながら1つの句は音楽としては非常に短い。7つをすべてを演奏しても2分弱という、小さな小さな句集である。でもこれが味わい深くていいのだ。惜しいのは句に読まれた7人についてわからないことだけど、まあ聴いているうちにどうでもよくなってくる(笑)。お猪口の熱燗とか、ストレートのウィスキーとか、そういう酒を三口で飲むような味わいがある(わっかるかなあ、わかんねだろうな〜(古))。

疲れたので今夜はここまで。あとはお酒でも飲みましょう。早く来週が終わってくれえ!

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