12/18/2005

キース=ジャレット トリオ「アット ザ ブルーノート」

 今年は久しぶりに早めの寒波襲来らしい。先週は寒い日が多くなった。僕が東京に来て18年が経とうとしているが、その間、冬がだんだんと暖かくなっているように感じていた。一番はっきりしているのは、雪の降る日が少なくなっていること。ここ2、3年は僕の記憶では東京で雪が積もったという記憶がない。昨日今日で、東京以外の全国各地で大雪がふったようだが、東京では雪が降るとこまではいかなかった。

手袋をして、ヘッドフォンで耳を覆ってiPodで音楽を聴きながら通勤しているおかげで、さほど寒さがこたえることもない。さいわい風邪がぶり返すこともなく、おいしくお酒が飲める状態も回復した。妻の実家から送ってもらった泡盛の古酒をちびちびやった。古酒としては比較的手の届きやすい価格帯のものらしいが、やはり味の深みは普通の泡盛とはかなり違って、なかなか飲みがいがあった。結局、妻が一杯も飲まないうちに一本空けてしまい、あとで怒られてしまった。

金曜日の夜は、妻の会社の社長宅でのクリスマスパーティに招かれ、ここでもいろいろな人とお話をさせていただきながら、楽しく飲ませていただいた。中盤にはスウェーデン式にシュナップスのショットで乾杯という慣例があり、シャンパンで少し酔って調子に乗った僕は、景気よくグラスを干した。スピリッツのショットは文字通りズドンと一発である。帰路は深夜の千鳥足だったことは言うまでもない。まあこれもいい。

前回に続いて、今回もキース=ジャレットのトリオ作品。これは1994年の6月にニューヨークのブルーノートでの3日間全6ステージの演奏を、6枚のCDにそっくりそのまま収録したものである。前回のろぐを書いた後、これをiPodに入れてまとめて聴いてみようと思い立った。寒くて比較的忙しい1週間だったが、僕は通勤の時間を中心にこのセットを2回通して聴くことができた。

まあ本来は、そういうまとめ聴きをするようなものでもないのかもしれないけど、これまで他の作品に比べてつまみ食い的にしか聴いていなかったので、ながら聴きであるにせよ、作品全体を通してしっかりと味わうことができたのは、とても有意義だった。

この作品は、このトリオによるスタンダードシリーズに、ある意味でひとつの区切りをつける集大成的なものになっている。6つのステージがそれぞれに異なるストーリを持って、それぞれが見事に展開しそして完結するのはさすがである。さらに全体を通して聴いてみると、6つのステージがひとつのイヴェントとしてまとまったものに聴こえてくるから不思議である。

実際のステージ演奏をそっくりそのまま収録し、しかも6ステージすべてを記録してこのクォリティでCD化できてしまうということ自体が、既に奇跡的なことである。同様の企画として、マイルスのプラグドニッケルや、アート=ペッパーのヴィレッジヴァンガードなどの再発ものがあるのだが、やはりステージによってかなり演奏内容の出来不出来が大きい。それは特に演奏者の集中力というところに現れてくるようだ。

この演奏からしばらくして、キースは病気のために一時的に音楽活動を休止する。その後、病からの回復と現在の活動についてはご承知の通りだが、このトリオで演奏される音楽は、いろいろな意味でそれ以降大きく変わったと思う。それぞれの楽器の音色もかなり変化しているし、より即興性を重視するスタイルに移行したことは、トリオが確実に新しい段階に入ったことを意味していると思う。

なかなか値が張るものなので、贅沢品といえばそれまでかもしれないが、やはり他の一連の作品では味わえない、壮大な醍醐味があることは間違いない。購入してからほぼ10年近く経過して、僕はようやくこの作品の扉を開くことができたように感じた。

気がつけば、次回で今年のエントリーも最後である。このろぐもまる2年が経過することになる。エントリー数は少し前に100を超えた。まだまだ、まだまだ。まだまだ、これからですよ音楽は。

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