僕自身は厳密には法人向けサービス業なのだが、実際はメーカ系(といってもIT企業でもある、まあどうでもいいか)なので、就職以来毎年比較的長い大型連 休を享受することができている。今年は、父親の健康上のトラブルが直前になって発覚し、どうしようかと随分迷ったのだが、結局当初の予定通り、昨年同様に 妻の実家である広島に4泊5日の帰省旅に出かけた。
今回はいままでより1日長い滞在。ついた翌日には、呉市にオープンしたばかりの「大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)」に連れて行ってもらったり、広島で働く実兄との会食、妻の友達のお宅におよばれしたりもした。そして、僕自身かね てからの念願だった、尾道とその周辺の島を1日ぶらぶらする機会を得ることもできた。毎夜のように供されるご馳走づくしもあって、本当に充実した5日間に することができた。今回は音楽の話はお休みにして、広島滞在のトピックのなかから、特に印象深かった尾道と向島・因島について、散歩話としてご紹介しようと思う。
大学を卒業した年の春、僕はオートバイで瀬戸内海を一周する旅に出た。それが僕の卒業旅行だった。尾道はその 二日目の昼間に2時間だけ滞在した。確か、千光寺公園へのロープウェイの駅にバイクを停め、歩いて志賀直哉の旧家や映画記念館などおなじみの狭い坂道を歩 き回った。眼下に広がる内海と造船所のクレーン群、そして対岸の島々の景色に目と心を奪われはしたが、その日のうちに広島市に着く必要があったので、後ろ 髪ひかれる思いで足早に走り去ったのをよく覚えている。その日以来、尾道周辺は僕が国内でもう一度ゆっくりと訪れてみたい場所として、常に心のなかに意識 され続けてきた。そしてその機会が巡ってきたのは、それから実に17年後ということになったわけである。
昼前に電車で尾道駅に到着し、 千光寺公園まで一気に歩いて登った。途中の急階段で、遠足と思われる女子高生達をきわどい角度で見上げたりしながら、小一時間ほどで千光寺公園をぐるっと 一周した。緑がきれいだった。そして上からの眺めで目に入る内海と島々を一目見た途端、今度はどうしてもそっち側に行ってみたくなった。急降下するロープ ウェイの角度に少々驚いて、本通の商店街を歩きながら昼食をとる場所を探し、海沿いにあった魚料理屋に入って定食を食べた(僕らのチョイスははっきり言っ て失敗だったが、決して悪い店ではないと思うので店名は書かない)。そして午後3時少し前に、そのまま向島行きの渡し船に飛び乗った。所要時間は3分ほど だろうか。料金は歩行者と自転車は片道100円である。
島について、少し歩いてみようと思ったのだが、かなりな田舎の路地裏の雰囲気に 行き場のなさを感じて、思い切って自転車を借りて海岸沿いを走ってみることにした。料金は一人一日500円。別に保証料が1000円必要だが、これは借り た場所に自転車を返せばちゃんと返金される仕組みになっている。二人とも自転車で遠乗りするなんて十数年以上やったことがない。一抹の不安はあったが、走 りはじめてみればそれぞれに昔を思い出し、交通量の少なさもあって快適に風を切って走った。港から20分ほどで海岸に出てからは、青い空と緑色の海、そし てまた異なる緑色の島々の景色が本当に素晴らしかった。それがいつまでも続くかのようだった。尾道に近い島の北部には思ったよりたくさんの家があり、ちょうど下校時に重なった小学校からは、元気な島の子供達が走りだしてきた。
因島側から臨む因島大橋と向島
(瀬戸内しまなみ海道観光推進協議会HPより)
海岸に出て30分ほどで、雄大な因島大橋に到着。海岸を少し入って橋の入り口までの道は、かなり登りがきついかった。尾道から四国愛媛県今治市までは、なんと自転車で島々を巡りながら行くことができるサイクリング コースが整備されている。因島大橋では自動車道の下に、軽車両と歩行者のための専用道が設けられていて、快適に橋を渡ることができるのだ。橋の上で感じる 風、そして橋からの眺め、これがまた最高である。思うに自動車を使った旅では同じ風や同じ景色は味わえないだろうと思う。
因島大橋を渡ったところにある大浜パーキングエリアで休憩し、既に4時を過ぎていたので、残念ながらそこで引き返すことにした。今度は因島に宿をとってのんびりするのもいいと思った。それどころかこんな島に住めたらとさえ考えてしまう(まあ旅先ではよくあることなのだが)気分だった。少し傾き始めオレンジ色が強くなってきた日光を感じながら、このまま島と橋に沈む夕日を眺めたいと心に切望したが、今回はぐっと抑えてあきらめることにした。帰りは来た路をそのまま戻り、橋の入り口からの下りが心地よかった。結局、思いのほか早く向島の港に帰ることができ、自転車を返却したのは5時半を少し過ぎた頃だった。2時間半のサイクリングでの走行距離は往復で25km程度だった。いつもの歩きとは異なり自転車で旅する魅力を感じた。
事実上わずか半日の滞在であったが、尾道から向島、因島にまで渡れたこと、目にした景色、そして身体で感じた日光と海の風は、17年前の後ろ髪引かれた思いを埋め合わせるには十分だった。次に訪れるのはいつになるのか、いまの僕はそう遠くもなさそうな想いでその時を心待ちにしている。
もう一つのお土産話である、呉市の「大和ミュージアム」については、また次回にでもご紹介しようと思う。
ようこそ尾道へ
いんのしま市公式ホームページ
しまなみ海道観光マップ 瀬戸内しまなみ海道観光推進協議会
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