先々週のこと、関西にいるバンド仲間から職場にメールが届いた。出張で東京に来ているとのことで、今夜飲まないかという内容だった。僕の予定は空いていたので即OK。東京に勤務している他のメンバーも誘ったところ、当日だったにもかかわらず彼にしては珍しく空けられるとのこと。急遽、夜の7時からトリオ編成によるトークセッションとなった。
僕の職場近くのイタリア料理店で食事をして、その店は早々に引払って、行きつけのショットバー「カドー」に落ち着いた。ここは僕が上京してから何かとお世話になっている居酒屋で、いろいろなお酒と美味しいおつまみを気軽に楽しむことができるお店である。僕は親しい人と飲む機会があれば、できるだけここに連れて行くことにしている。
彼等2人とは大学の同級生である。といっても僕は1年生で早くも留年を決定させてしまい、専門課程である3年生にあがるのが1年遅れだったので、留年前の同級生ということになる(いつもこれを説明するのが面倒なのだが、考えてみればどうでもいいことなのだ)。面識はあったものの、バンド活動を始めるようになったのは、卒業して数年が経ってからだった。
彼等2人は共にサックス奏者で、そこに先のろぐで紹介したドラム奏者を加えた4人でグループを作っている。このグループではあまり構成がしっかりしていない感じのジャズを演奏していて、これまでに2回程内輪のライヴを神戸でやった。その後もちょこちょこセッションを続けてきたが、この2年くらいは4人揃って演奏という機会はなくなってしまった。
この日も音楽やら仕事の話に始まり、いろいろな話で盛り上がった(正直細かいところの記憶は定かでない)。最後はいつものように「またセッションやりたいねぇ」でお開きになったように思う。だんだんとそれが難しい状況になっていると知りつつ、とりあえずそう言っているのが空しい帰り道である。まあそれが難しいから、せめてこうした酒場のセッションが実現できるだけでも幸運と思わないといけないのだろうが。
僕の理想は、楽器を持ち寄ってスタジオで行うセッションも、こうしたトークセッションのようでありたいということだ。僕はスタジオに集まって演奏するのを「練習」と呼ぶのは好きではない。練習というのは各自が日頃からしておくものであって、他人と楽器をもって相見えるのはもはや練習ではなく、セッションなのである。だから本当は「今度の練習でアレやろうよ」とか決めたりするのもあまり好きではない(もちろん理想である)。たまに集まって酒を酌み交わすのが楽しいように、そこにたまにお初の人が入って意外な盛り上がりを見せたりするのと同じように、音楽のセッションも事前に何か目的を決めるというより、その日の気分やメンバーに応じた音楽が気ままにやれたら、きっと楽しいに違いない。
学生の頃、僕とドラムとキーボードの3人でよくそういうセッションを楽しんでいた。元々はそれでピアノトリオをやろうということだったのだが、3人とも大してジャズができるわけでもなく、コピーをしても面白い音楽ではないし(そもそも無理なのだが)、行き詰まりがてらなんとなく自由にリズムとかを作り出してやってみたらこれが結構面白かった。1時間くらい演奏が続いたりすることもあった。結局、学生時代の半分はそういうセッションばかりやっていたように思う。
今回のCDは、ベーシストであるフェルナンド=ソーンダースが、日本のミュージシャン達とそういうふうに「ジャムった」ものをCD化したものである。ソーンダースはルー=リードのグループをはじめいろいろな活動をしている人。詳しくは参考に示したリンクを参照して欲しい。このCDができるに至った経緯がライナーに書いてあるのだが、2003年にルー=リードのツアーで来日していたソーンダースが、その後プライベートで日本にしばらく滞在し、突然「プレイしたい」と言い出したので、相談を受けた芳垣が日本のミュージシャンを招集してスタジオ入りしたというものである。
演奏の内容は、ソーンダースらしくラテンから、ロック、バラードなど様々なのものがあり、結果を気に入った彼がテープをアメリカに持ち帰り、ヴォーカルなどをダビングした作品も含まれている。もちろん事前に何の取り決めもないというようなフリーのセッションではないが、内容から伝わってくるものに、僕は学生の頃自分たちがスタジオに入って楽しんでいた時と同じ様な空気を感じて、懐かしさというよりも無性に誰かとセッションがしたい気分になった。
今度の週末にはベースを持って久しぶりにスタジオにでも行ってみようと思う。最近、練習してないな。
Fernando Saunders 公式サイト
フェルナンド=ソーンダース インタビュー タワーレコード発行のフリーペーパー"musee"に掲載のもの
East Works Entertainment
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