2/08/2004

レッド ツェッペリン「プレゼンス」

Led Zeppelin:  先日、小学校1年生からの付き合いである友人に新宿のとある店でごちそうになった。そのお店は「百舌」という。一見すると最近流行の和風ダイニングバーであるが、ちょっと面白い趣向が凝らしてある。個室のすべてにテレビとDVDプレイヤがセットされており、客は好きなソフトを持ち込んで楽しむことができるのだ。

 僕は以前からこの手のお店を待ち望んでいた。音楽仲間と飲むとき、必ず「あ〜CD聴きたいな〜」となる。以前、ジャズ仲間と四谷のジャズ喫茶で集まった際に、お店をリクエスト責めにしたことがあるが、実際他のお客もいるし、なかなか心ゆくまでとはいかない。カラオケボックスで自由にCDやDVDを持ち込んで鑑賞できれば、そこそこ部屋代を払ってもいいのになと思うのだが、業者の皆様いかがでしょうか。

 今回ごちそうになった彼とは音楽仲間でもあり、中学高校時代には一緒にレコードを聴いたり、フォークやロックのバンドを組んだりして遊んでいた。いま彼は翻訳の仕事をしている。東京方面に出てきている数少ない友人なので、年に数回は一席設けるようになっている。お互いによく飲む。話はたいてい仕事の話で始まるが、2、3杯目あたりから音楽の話になり、そのうち昔話とかが混じってきてごちゃごちゃになって、大体8杯目あたりでお開きとなる。

 その日、彼がその店で見せてくれたのが、昨年発売された「レッドツェッペリンDVD」だった。

 レッドツェッペリンは1960年代後半から、1980年まで活躍したイギリスを代表するロックグループである。いわゆるハードロックの草分けであり、同じくイギリス出身のディープパープルと人気を二分する存在だった。これは僕の個人的な意見にすぎないかもしれないが、ギターフリークを中心にロックに演奏する側からのめり込んで行った者には、ディープパープルの方が圧倒的に人気があった。多くの人は高校時代にクラスのギター小僧が演奏する「スモーク・オン・ザ・ウォータ」を耳にしたことがあるはずだ。それに対してレッドツェッペリンはロックを聴く側からのめり込んで行った人がたどり着く一つの境地というイメージがある。1970年代後半以降、ライブに集まるファン達はそれぞれにファンクラブを結成して会場で旗を掲げるなど、さながら集会というイメージであった。事実、現在でも個人ファンサイトが圧倒的に多いのがレッドツェッペリンである。

 かく言う僕も、実はあまりレッドツェッペリンにはなじみが深くはなかった。バンドフリークからツェッペリンが敬遠される理由は、僕なりに思うに以下のようなことかなと思う。

 1)ロバート=プラントの声域が素人には高すぎて歌えない
 2)ジミー=ペイジの粗暴なギターはコピーするのが難しい
 3)リズムセクションがよほどしっかりしていないと全くサマにならない(悦にも浸れない)

 つまり、個人個人の技のレベルが高い(ジミー=ペイジが上手いか下手かの議論はあるかもしれないが)うえに、グループとしての暗黙知の部分が大きすぎて、素人が気軽に真似るにはちょっと畏れ多いというわけである。今回DVDを見てあらためて強く感じたのが、ドラムのジョン=ボーナムの存在である。「リズムが基本」は当たり前なのだが、彼のドラムは力強く、器用でもあるのだが、それでもリズムがまったく揺れない、安定した心地よさ。これがあるからフロントの二人も安心して暴走できるのだろう。

 「いや〜やっぱりボーナムはエラいもんやなゃ〜」とか言いながら、千鳥足で二人でお店を後にした。他の部屋を見ると、若いカップル達がしっぽりとテレビ番組を見ながら寛いでいた。家に帰って、すぐに他のツェッペリンのDVDを取り寄せた。1975年にイギリスのアールズコートというところで行われたコンサート3時間の模様を完全に復刻したもので、音質や画質の点ではもちろん問題は多いが、ボーナムの30分以上続くドラムソロも堪能でき、またまた興奮が蘇った。いわゆる海賊盤なので大きくは紹介しないが、興味のある方は下記専門店のリンクを参考にしてみてはいかがだろうか。

 さて、DVDはちょっと高価なので、もう少し気軽にレッドツェッペリンの魅力を楽しめる作品を1枚ということで、僕があげるのはこの「プレゼンス」である。成熟したグループのライブでの魅力をそのままスタジオに持ち込んだようなストレートさがよい。ジャケットで表現されている不思議な物体とタイトルの意味するところから察するに、この作品はいまで言うところの「ユビキタス」なレッドツェッペリンということであろう。一家に一枚のハードロック(?)としてふさわしい逸品である。もちろんボーナムのドラムも全開である。

 ともかく久しぶりにロックを聴いて熱くなった。

Led Zeppelin official site
ワーナーミュージック・ジャパン-レッドツェッペリン
Joe's garage -Led Zeppelin Collecor's Page