2/13/2020

ライル・メイズ "Fictionary"

パット・メセニーのグループでピアノやキーボードを務めたジャズピアニストのライル・メイズが先日66歳で亡くなった。

僕は大学生の頃からかなりのメセニーフリークだった。グループのアルバムはほとんど持っていたし、音楽サークルでメセニー好きのギターの先輩から声をかけられ、ベースを弾かせてもらったのは貴重な経験だった。

メセニーが若き天才大物ギタリストだったこともあって、彼のグループに起用される人も単に上手いだけの人ではない個性豊かなメンバーばかりだったけど、ライル・メイズはその中では一番優等生的というか堅い人だったような印象がある。

ある意味ではメセニーグループは、メイズとの双頭グループだったと言っても大げさではないと僕は思う。

僕が一番大好きな"First Circle"での劇的なピアノソロを始め、ライヴアルバム"Travels"に収録の"Straight on Red"の真っ赤な熱い演奏。
"Offramp"収録の"James"のご機嫌な演奏と、続く"The Bat Part II"で拡がる宇宙、そして"San Lorenzo"...!僕が聴き狂ったライルの名演は挙げたらキリがない。

音の粒がとてもきれいなピアノ。それがメセニーのやわらかいタッチのギターといい対比をなしていたことが魅力だったんだなと思う。加えて、ものすごい激しさを内に秘めている。それを表に出すのは結構稀なところが憎いところ。"First Circle"と"Straight on Red"は僕にとっては甲乙付け難いメイズinメセニーグループのベストテイクだ。

ライルはメセニーグループ以外に自身の名義でもいくつかの作品をリリースしている。その中で僕が好きなのはピアノトリオの"Fictionary"。これは名盤である。

エヴァンス所縁のミュージシャンであるジャックとマークをリズムに迎えて、1曲目のタイトルが"Bill Evans"って(笑)、堂々のアイデンティティ宣言。だけどここで聴かれるライルの音楽をいま聴いて、僕が一番感じるのはキース(・ジャレット)のトリオかな。2曲の即興演奏"Trio #1,#2"もかなりの真剣勝負で素晴らしい。

もう一つのお気に入りピアノソロ+αのアルバム"Solo Improvisations for Expanded Piano"も素晴らしい。ここでもやっぱりキースの影を感じるなあ。でもシンセの使い方はピカイチ。ドローン(長音)が得意な電子楽器の特徴をピアノミュージックに活かしたこのアルバムの世界観は、メセニーグループのライヴでも度々披露されてたなあ。

2000年以降にはどんな活動というか生活をしていたのかよくわからないのだけど、突然もたらされた訃報に多くの音楽家が彼の音楽に送った賛辞を見て、やっぱりすごい人だったんだなあと改めて感じた。


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