1/13/2018

ウェイン・ショーター「ウィズアウト ア ネット」

年末に大学の同窓生でバンド仲間のサックス奏者2人と神田で一杯やる機会があった。アホな話やら仕事の愚痴やらいろいろな話がジョーク入りで交わされるが、音楽の話はやはりそれなりに深いものになる。

話はやがてウェイン・ショーターに及んだ。そもそもは「ショーターのフレーズってやっぱ独特だよね」というあたりから始まったのだが、いろいろなアルバムにおける彼の名演をあげているうちに、1人が「最近のやつって聴く?」と振ってきた。

ここで言う「最近のやつ」とはヴァーブレーベル以降の一連の作品。1995年の大傑作"High Life"は創り方からして、即興とインタープレイをベースにした音楽とは異なる作品だし、その次の"1+1"もハンコックとのデュオなので、具体的には2001年の"Footprints Live!"以降のクァルテットのものを指している。

その場では「僕は好きだよ、全部持ってるし」とコメントしたものの、そう言えば最近はあんまり聴いてないことにも気がついた。最近のやつと言っても、もう10〜15年は経っているからねぇ。

僕にとってのショーターの原体験は、マイルスの"Complete Live at the Plugged Nickel"のディスク2に収録された"Four"である。それ以前にも高校生時代からショーターの演奏は耳にしていたけど、インプロヴァイザーとしての彼のすごさを実感したのは、これを聴いて立った鳥肌がきっかけだった。同時にハンコックとトニーの凄さに開眼したのもこれがきっかけだったのです。このセッションはすごいです。このセットの中でも群を抜いた出来だと思います。

年末のこのやりとりが気になって、新年のお休みに家でじっくり音楽を聴ける機会に"Beyond the Sound Bariier"を久しぶりに聴きこみました。いままでも時折聴くことはあったけど、やっぱり今回はそこから見える景色がいままでとはまったく違って感じられた。

フリーをいろいろ聴いてきたこともあるのかな。そういう耳で聴いても実に壮絶な緊張感ですよね、これ。

実はその年末時点では、その後彼がまたブルーノートに43年ぶり(!)に移籍・復帰して、アルバム"Without A Net"を2013年にリリースしていたことを僕は知らなかった。

その意味では最近のショーターをフォローできていなかったのは事実である。もちろん早速購入しました。そして即座にノックアウト!なんじゃあぁ、こりゃぁぁぁぁぁぁ!

ザックり言ってしまうと、仔細に創り込んだ部分と大胆な即興とインタープレイという2つの極が同時に相当な高みにまで進化した音楽ということになるのかな。アルバムの中核をなす"Pegasus"はその象徴ですね。

加えてYouTubeには最近のカルテットでの様々な演奏記録が数多くアップされていることもわかり、それらも併せてチェックするうちにショーターが今世紀に入ってたどり着いた境地とも言えるものがだんだんとわかってきて、「やっぱスゴいわショーター!」とあらためて納得させられているところなのであります。

これスゴいことです。やっぱり半世紀以上ジャズという音楽の最前線に立ちながら、なおかつ商業主義に流されずが故に至ることができた境地だと思うのです。

新年早々、素晴らしいパンチをくらって、仕事の日常では絶対に得ることのない生きる所以を感じさせられたお正月でありました。

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