9/15/2012

ケンとポール@横浜ドルフィー

フリージャズの大物リード奏者ケン=ヴァンダーマークが、ドラマーのポール=ニルセン・ラヴと共に日本にやってきた。新宿ピットインでの2日間の公演とその前日となる先週月曜日の夜に、横浜野毛のドルフィーにてデュオコンサートが行われた。

夏休みにたまたま同店のウェブサイトでスケジュールを見ていてそのことを発見した僕は、さっそくみなとみらいに住む音楽と酒好きの友人に連絡。携帯メール1往復で一緒に聴きに行くこととなった。意外にも僕にとっても初めてのガチンコフリーのライヴである。

前回のろぐで書いたとおりこの日は始発電車で出勤。お昼ごはんの前後はかなりの睡魔に襲われた。午後は外部での打合せなどもあってなんとか緊張感を保つことができ、終業のチャイムと同時に「さあさあフリーフリー」とばかりに、ヨタヨタいそいそと職場を後に野毛へと急いだ。

果たしてどの位のお客さんが来るのかなあ、やっぱりガチなフリーだしなあ、そうは言ってもケンもポールもその筋では有名人だしなあ、日本じゃ生で聴ける機会はまずないし、うーんもう行列待ちしてるのかなあ、急がなくちゃ…。

友人と桜木町駅で待ち合わせて早足でお店へ。しかしドルフィーのある通りには人の気配はない。「誰も並んでないなあ」とお店への階段を登ろうとすると、中から「ヴギョギョギョ↑~ビョロロルロろるろロぉ〜↓」とケンのサックスが聴こえてきた。リハ中らしい。

ドアを開けるとカウンターの向こうにいつもの店主とお姉さんがいるが、こちらに一瞥を送ることもない。お客さんは5、6人ほど…うーん不思議な安堵感を催した。まだ開演までは40分ほどあるからなあと思いながら、中ほどの広いテーブルにいい席を確保してビールを注文。

結局、開演までにお客さんは20名弱ほどになり、ゆったりと程よい入りになった。前回この店を訪れた森山威男の際は60名以上はぎっしりだったのとは違った雰囲気、いい感じだ。3万7000人の西武ドームなどまるで宇宙の夢の出来事である。

演奏は途中30分の休憩をはさんで2セット。前半はテナー→クラリネット→テナーと持ち替えて3曲を演奏。動、静、動の展開。これが生の即興か!と自分の身の中に長いことあった期待を融かし出す。ポールのドラムは初めての体験だったが、やっぱりイイ!イイ流れとイイうねり、これが音楽だ。

そして圧巻だったのは後半の演奏。待ちに待ったバリトンサックスを手に始まったケンの演奏は、ポールの凄まじいケツまくりで、これぞフリーの真骨頂と言わんばかりのところまで昇りつめ、店内の酸素がどんどん下がっていくトランス状態へ。僕の頭が身体が前後左右に揺れまくる。

演奏は、3種のリードを自在に操るケンと、ポロシャツから汗を滴らせながら暴れまくるポールの、圧倒的な世界が、結局切れ目なしに50分間続いた。スゲえ!スゴ過ぎる!やっぱり来てよかった!生きててよかったあ!そんな野毛の夜だった。

フリーの神髄である即興演奏は、まさに「その場で演奏その場で作曲」の真剣勝負。少々クサイが偶然と必然(確信)の織りなす芸術である。自分の演ずることに自信がない人にはできない。テキトーにやるとか言ってる人は退場である。

逆説的だが、完成されたコンポジション(作曲)でも、演奏する人や演奏の度に出来が大きく異なるクラシック音楽の世界となんら違うところはない。デレク=ベイリーが著書の中で語っている通り、すべての音楽は本来即興なのである。

時間をかけてアレンジされた曲でも、元々は一瞬の思いつきの産物なのである。そこで即演奏で勝負するのが即興演奏だ。時間をかけていじくった方がよくなるというのは幻想だ。いじくる能力を鍛えるか、一発勝負で鍛えるかそれだけの違いであって、そこに優劣や良し悪しはない。

そんなこんなで、僕は48歳になった。生の営みはすべてが即興であり一発勝負である。

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