1/23/2011

小さなJBLがやって来た

年末年始は風邪ひき以外にもいろいろなことがあった。今回はJBLがわが家にやって来たお話。

年末あたりからリヴィングのオーディオで音楽を聴いていると、どうも低音がビビるのに気づいた。前にも書いたかもしれないが、わが家で使っていたスピーカーは僕が大学生の時に、はじめて自分用のオーディオセットとして買ったもの。当時はやりのブックシェルフ型ミニコンポスピーカーだった。もう27年前の代物である。

置き方が悪いとか、ケーブルかなにかが振動に共振してビビっているのかなとか思いながらも、ちゃんと原因を調べないままそのまま広島に行ってしまった。そしてすっかり風邪を引いた僕は独りで帰って来たのである。

体調が悪くて家にじっとしているしかないわけだから、当然音楽は聴く(寝てろよ)。やっぱりベースがビビる。全然大した音量でもないのにだ。これは一度セッティングからしてちゃんと見直してみよう(断っておくがそんな大層なオーディオセットではない)と、スピーカーケーブルを外してスピーカーキャビネットを持上げた途端、「カサカサカサ」と枯れ葉が散る様な乾いた音がした。

え?っとスピーカーをまじまじと見ると、本体を保護するネットの向こうで黒い何かの切れ端の様なものがいくつか目に入る。慌ててネットを外した僕は、低音用のスピーカー(ウーファーといいます)に張られた紙(コーンといいます)が、ボロボロに崩れているのを目の当たりにしたのである。

もしやと思って反対側のスピーカを見てみると、こちらもまったく同じ状態。これは一体・・・?寿命?虫かなにかに喰われたの?子どもがいたずらして破ったのか?それにしてはコーンの外周の部分だけがボロボロになっている。そのとき、妻が言っていたあることを思いだした。

12月半ばのある平日に、ママ友と子どもたち数組がわが家にやって来てクリスマス会をした時のこと。部屋にはオーディオでBGMを流しながら、子ども達にはテレビで子ども向けの番組を流しておいて、ママ達はダイニングテーブルでワイン片手(結構なことで・・・)おしゃべりをしていたところ、突然部屋に大音量で音楽が鳴り響いたのだそうだ。

あまりの音量に子ども達は一斉に大泣きだったそう。見ると子どもの誰かが、アンプのヴォリュームつまみをおもちゃの様にエイとばかりに回していたのだそうだ。

27年現役で鳴り続けた老いぼれスピーカー。ウーファーのコーン紙はもう潤いなどとうに失ってかさかさだったに違いない。あわれにもその衝撃に耐えられず、コーンは最も振動が激しくなる外周の接合部分でばりばりとひび割れてしまったというわけである。

もちろんこれは僕の推測なのだが、両方のウーファーがほぼ同様にダメージを受けていたのが、何よりの根拠である。先ず間違いないだろう。もちろんその子達を責める気はさらさらない。スピーカの間近にいて耳がどうかならなかっただけでも幸いなことである。

もはや修理は不可能。もちろん交換の部品などあてにはできない。これはもうスピーカーを買い替えるしかなさそうだ。本当なら、秋葉原のオーディオショップにでも出向いて、あれやこれやと聴き比べ、と行きたいところだが、当の僕は風邪ひきである。まあ実を言うとそれほどオーディオセットにこだわりがあるわけではない。ただ自分の思い入れの音楽を毎日聴くものだけに、あまりに安いもので失敗したら後々後悔どころではすまないはず。

せめて音は聴けないにしても、いくらくらいでどんなスピーカーがあるのだろうとネットで調べているうちに、すっかりいくつかの品に狙いが定まり、その日の夜にはあっさりと購入ボタンを押してしたのである。それがJBLの小型モニター4312M2である。

JBLはいまでこそ欧州系の新興ブランドに押され気味だが、ホームオーディオというものが趣味の世界として確立した頃から、最高級品として知られた一流老舗ブランドである。僕らの世代より上の人で一度はオーディオにこだわりを持ったことがある人なら、誰もが憧れを持ったはずである。

4312M2はそうした往年の銘記のイメージを引き継ぎながら、現代の流行やニーズに合わせて製作された小型モニタースピーカーである。JBLというブランドを信頼して、ペアで5万円前後という値段に妙なバランス的納得感を抱いた僕は、すーっとこの商品に引きつけられていったというわけである。

届けられたスピーカーは思ったよりもコンパクトだった。おかげでテレビ周りがすっきりした。しかしこんな小さなもので十分な低音が出るのか。そもそも本当に満足のできる音が出るのだろうか。

セッティングを済ませておそるおそるアンプのスイッチを入れる。最初に聴くソースにはJBLらしく(?)ロックにしようということで、フリートウッドマックの「噂」を選んだ。これは大晦日に兄の家にある超高級セットで聴かせてもらった印象が鮮明に耳に残っていたので、それと比べてどこまでの音なのかが感覚的にわかるかなと思ったから。

果たして出て来た音は・・・えぇ、なんかしょぼい。パンチも何もない情けない音。はあっとため息が漏れる。しかし、ここで気を落としてはいけないのである。

オーディオ製品、とくにスピーカーにはエイジングということを忘れては行けない。自動車やオートバイもそうだが、機械というものはまっさらの状態で最高の性能を発揮するのではなく、少し作動をつづけて慣らされたころから、本来の性能を発揮し始める。オーディオの場合、スピーカーはその最たるものである。その慣らしのことをエイジングと呼ぶのである。いろいろな説や機種による特性はあるものの、それほど時間がかかるものではない。

慣らし代わりにといろいろな音楽を大きめの音量でひたすら流す。妻や子どもが家にいなかったのは幸いだった。3時間ほどそれを続けて、いったんアンプの電源を切って僕は夕食の買い出しに出かけた。戻って食事をとって再びアンプのスイッチを入れ、何かスピーカーの試し聴きにいい音源はないかと考え、録音が新しくシャープでタイトな演奏が満載であるジョン=マクラフリンの「トゥ・ザ・ワン」を聴いてみた。

果たして出て来た音は「これがJBLだ!」と僕が納得できるに十分なものであった。5弦ベースやバスドラムの迫力から、マクラフリンのピッキングニュアンス、そしてシャープなビートを刻むシンバル、素晴らしい「鳴り」を実感した瞬間だった。よかった。

大きさの問題もあり、低音が十分満足かと言われればもちろん必ずしもそうではないが、やはり最新のスピーカーは性能がいいとあらためて実感した次第。そして古いスピーカーは市の粗大ゴミに出してしまった。いまさら未練がましく思ったところでどうしようもない。

ということで、わが家に小さなJBLがやってきました。気分的にも何か新しいことの始まりを感じられて結果的にはいい事件であった。20日ほどが経過したが、低音はさらによく出る様になった様に感じる。このところこれでフリー系の演奏を楽しんでいる。とてもいい買い物でありました。

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