9/12/2010

トニー=ウィリアムスの「トーキョー・ライヴ」

最近、音楽の話題が乏しいと思われるかもしれない。確かに新しい音楽を手に入れる頻度は、時間的そして経済的な理由によって以前よりもかなり鈍っている。

しかし、それでも今月になって、新たに3枚のCDを購入した。いずれもこのろぐではもはや目新しいものではないが、せっかくなので今回からまとめてご紹介しておこうと思う。

先ずはトニー=ウィリアムズが新生ブルーノート在籍時に、ブルーノート東京で行ったライヴレコーディング"Tokyo Live"だ。

この作品は長らく入手困難な状況にあり、僕もあれこれと手を尽くして探し続けていたのだが、先日ふと訪れたアメリカのアマゾンで偶然にもこれが入手できることがわかり、即座にクリックしてしまった。

実はこれはアマゾンのサービスであるオンデマンド型のCD販売によって、見事に復刻されたもの。要するにアマゾンがレーベルと契約してマスターとなる音源ファイルを管理していて、顧客から注文が入るとCD-Rでプレスして販売するという仕掛けだ。もちろんちゃんとレーベル印刷とジャケットも付けられており、見た目はオリジナルのCDと何ら変わりない。

値段はCD2枚組の本体が34ドルにプラス送料である。日本経済の先行きに暗雲をもたらす円高の恩恵もあって。3300円程度でこの幻の?名盤が手に入れられてしまった。日本のアマゾン中古品販売で法外な値段をつけて売りに出している人もいたが、ご苦労様である。

内容の方は、先にご紹介したこの時代のトニーのスタジオ録音作品にヤられてしまった僕としては、もう待ち望んだライブ演奏だっただけに、冒頭からトニーが叩き出す一打一打に心踊らせるばかり。しかもスタジオ盤と同じメンバーが勢ぞろいなのである。

そんな演奏が2時間半も楽しめるのだから、文句のあるはずもない。しかもそれが、自分にもなじみのある会場(現在の場所に移転する前の狭いブルーノート東京でのライヴ)のものであるだけに、感慨もひとしおだ。ライヴとは思えないほどクリアな音質もうれしい。ある夜のトニーのグループを2セット通しで楽しむがごとくの至福の時間が過ごせる作品である。

それにしてもこのオンデマンドCDや、MP3ダウンロードといった、アマゾンがアメリカで展開しているサービスを満足に享受できない日本は、本当に不幸である。オンデマンドCDはアカウントさえあれば取り寄せることができるが、MP3ダウンロードの方はサービスが始まって2年が経過するというのに、未だに日本には入口が閉ざされたままだ。

一方で、了見の狭い音学産業の言いなりに商売をしてきた渋谷HMVの閉店に時代を感じるなどと、周回遅れのペシミズムとも言える感覚がニュースのネタになるのだから仕方ない。僕にとってあの店は、もう10年以上前から役に立たない「コンビニCDショップ」に過ぎなかった。開業した頃はもう少しマシだった様に思うのだが。

トニーの縦横無尽なリズムワークの上に踊るウォレス=ルー二ー、ビル=ピアース、マルグリュー=ミラーの素晴らしい演奏。新しい技術とそれに裏付けられたビジネスモデルでよみがえった、20年近く前の名演。

音楽は素晴らしい。

(今回ご紹介した作品の、 アメリカのアマゾンサイトへのリンクはこちら

0 件のコメント: