7/19/2009

イノウエさん

わが家では人様からいただいた品物を呼ぶに際して、品物の名前にいただいた人の名前を冠して呼称とすることがある。大抵の場合はその品物が僕らのフィーリングによくマッチして、度々用いられることになった結果として、そのように命名されるようだ。

いくつかの例をあげるなら「ニシモトカップ」「トジマグラス」「ケイコちゃん皿」などといった具合である。もちろんこれら以外にも愛用の日用品はあるし、それらの中には単に「青いお皿」とか「三日月皿」で済んでしまう様なものも多いし、頻繁に使う道具でも、いただいたものなのに贈り主の名を冠せずに使っているものも多い。

なぜそれらがそう呼ばれる様になったのかを考えてみるのは興味深いことではあるが、一定の規則があるわけではなく、多少運命的な側面もある様だ。ここではそれを深く追求しないことにしたい。

このところ、子供が生まれたり家を新築したりで、親しくさせていただいている方々からいろいろなお祝いの品物をいただいた。ありがたいことである。この場を借りてあらためてお礼を伝えたい。

やはり子供が生まれたことで彼に関する品物を贈られることが多い。今日も古くからの知人がわざわざ車で訪ねて来てくれたのだが、祝いだと言って264枚の紙おむつをどさりと持って来てくれた。因みに十数年前に彼のご長女が誕生した際には、僕はお米5キロを持って彼の家にお邪魔したのをおぼえている。男が選ぶ出産祝いは単純明快である。

さて、比較的最近、大学時代からの友人がやはり子供の誕生祝いを宅配便で届けてくれた。かわいい子供服といっしょに、いろいろな原色パーツでできた像さんのオモチャも入れられていた。手足や鼻の先には直径5センチほどのプラスチック製のカラフルなリングがつけられていて、なんとも言えない愛嬌がある。

妻によると、うちの子供はこのオモチャを見るなりいたく気に入った様子で、ようやくものをつかめる様になった両手でたぐり寄せると、さっそくうれしそうにオモチャの手足をナメナメし始めたのだそうだ。

それ以来、このオモチャは贈り主の名を冠して「イノウエさん」と呼ばれる様になった。今回の呼称ケースでは品名が省略されるといういままでに類を見ないスタイルが斬新である。


「イノウエさん」と遊ぶ子供を見ていると、自分の幼い頃にもたいそうお気に入りの犬のぬいぐるみがあったのを思い出した。おそらくは誰かのお手製のもので元々は2歳上の兄のものだったと記憶している。名前は確か「ピッポちゃん」だった。果たしてあれはどこへ行ってしまったのか、両親がいなくなってしまったいまとなっては知る由もない。

うちの子供がいつまでこのオモチャを、お気に入りでいつづけてくれるのかはわからないが、彼がそれに飽きてしまったり壊してしまったりしても、こういうものは長く大切にとっておいてあげるのがいいのだろうなと思った。

子供はいま「イノウエさん」を頭の脇に置いて眠っている。今日も蒸し暑い一日だった。

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