6/14/2009

スタンド!

子供は順調に育ってくれている。表情が豊かになっているのは、感情が豊かになっていることでもある。最近はいい笑顔を見せてくれるようになり、その分よく泣くようにもなった。その訳を十分に知る由はないのだが、眠いとかお腹がすいているという単純なものではないらしい。そんな様子だからこそ泣かれる側も切なくなるのかもしれない。

最近、妻が授乳のことで少し気を揉んでいる。これは男親があまりとやかく言う性格のものではないと思うが、子供を母乳だけで育てるか、ミルクの助けを借りるのかというのは単純な択一問題ではないようだ。ネット上で検索するとそれはそれはたくさんの主義主張やら悩みの相談があふれているし、書店に行ってみても実に多くの書籍があることがその証である。

以前にも書いた通り、僕は本屋さんが苦手だ。本のタイトルや帯に書かれた宣伝文句などが、歓楽街の客引きのようにまとわりついてくるように感じる。仕方なく入ることがあったとしても、なるべく写真ばかりが載ってそうなものをぱらぱらと見てその場を凌ごうとするのだが、たいていそれは無駄な抵抗に終わり、僕は入ったことを後悔しながらさっさとお店を後にする。

本を読むのはできればやっぱり文学作品だけにしたい。最近は仕事が難しくなって来ているので、少し勉強もしなければいけないと思うのだが、どうも経営とか会計の本は近寄りがたいし、ましてやいわゆるビジネス書の類いはほとんど資源の無駄ではないかと思える。経営も子育てもそれだけ悩み深いものであるがゆえに、いろいろな指南がこの世に存在するのだろうが。

iPod touch用のアプリで青空文庫を読むためのものがいくつかあり、その中のひとつを購入して使っている。青空文庫はご存知の通り日本の文学史上の名作を中心にしたオープン型の文学全集である。

作品の中には文体や思想に関する時代的な特徴もあって、必ずしも取っ付きやすいものばかりではないが、自分好みの作家の作品が手軽にしかもタダで読めるので、通勤電車のなかで音楽を聴きながら読んでみるのは悪くない。

電子書籍と言われると、うーんと構えてしまうこともあったが、実際に使ってみるとこれがなかなかいけるものだ。まだ長編は試していないが、芥川龍之介とか太宰治の未完の作品とか、中原中也の詩集とか、そういったものを思いつくままに楽しんでいる。とても新鮮な気持ちになる。いま話題の村上春樹の新作もこれで読めたらいいのになあと思うのだが。

先週、仕事で疲れた帰りの電車の中でどういうわけか中島敦の「山月記」を読んだ。なぜこれを読む気になったのかはわからないが、高校時代に教科書で習ったことがあり僕には強く印象に残っていた。電車に乗っている40分ほどの時間でさっと読んでみて、それは心のかなり奥深いところに響いた。やはり文学はいい。

それにしても自分が聴いている音楽を再生しているのと同じ機械で本を読めてしまう。飽きたら安室奈美恵のビデオクリップを観ることもできて、お小遣い帳にもなるのだから、やっぱりこれはスゴいことである。

先週に続いて、また週末に一組の来客があった。妻の仕事仲間の女性3人組。スパークリングワインを2本と缶ビールにいろいろな食材を持ってやって来て、うちの子供を代わる代わる抱っこしたり、写真を撮ったりして無邪気にはしゃぎ、酔い覚ましに近所の公園まで散歩に出かけてバスで帰るのを見送った。楽しいひとときだった。しかし昼間にワインを飲むのは時に調子が狂う。

最近話題のピアニスト、エリック=リードの新作「スタンド!」をようやく入手。

前に彼の作品「ヒア」を取り上げたのがちょうど3年前のことだと知って、ちょっと驚きもした。あれも素晴らしいピアノトリオ作品だったが、今回の作品も評判通りの強力な内容である。まだ2回しか聴いていないので詳しいコメントは控えるが、冒頭のタイトル曲の弾き始めから、なんとも贅沢な凄みが滲み出てきて、ちょっと身震いすら覚える。

これはもう明日からしばらく通勤時のヘビーローテーションは確実。ずっしりとしたスゴさを感じさせるピアノを聴きたい方は是非!

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