子供が産まれたらしばらくはのんびり旅行どころではないだろうからと、1日仕事を休んで伊豆の温泉旅館に出かけることにした。
今回お世話になったのは伊豆北川温泉「望水」という宿。伊豆では比較的お高い宿として有名らしい。そんなところに少し料理のグレードアップまでして予約を入れた。倹約が強いられる昨今のご時世からすれば、なんたることかと思われるかもしれないが、これも亡き父母が遺してくれた旅行券があったから。
会社を定年て円満退職する際に、夫婦で海外旅行でもどうぞとばかりに、会社や年金組合から退職金とは別に旅行券が支給されるのがはやった時期がある。父が退職したのは16、7年前のこと。不動産と株のバブルは崩壊していたが、まだその本当の影響が姿を現すには至っていなかったころのことだった。
海外とりわけヨーロッパに旅行するのは母親の念願だったが、臆病な父はなかなか腰を上げず、しまいには母に「誰か友達と行ってこい」とかいう始末だった。結局、母親はロマンチック街道を夢見ながら病に倒れ、残された父もこの旅行券を使うことはなかった。父の遺品を整理していて、タンスの奥に隠すようにしまわれていた旅行券が出てきたときは、そんな悲しい思い出だけがよみがえった。
結局、兄と折半して貰い受けることにした。気風のいい(といっていいのか)兄は、早々に北海道旅行を楽しんだようだが、我が家ではなかなかこういうものを使う機会がなかったので、今回の旅行で大胆に使ってしまおうと考えた次第だ。
伊豆北川(ほっかわ)温泉は、熱川温泉のすぐ近くにある海岸沿いの温泉街である。川崎から伊豆急熱川駅まで踊り子号に揺られて(本当によく揺れた)約2時間で到着。そこからは迎えの車で5分ほどのところにある。現れた玄関からは平屋建てのように見えるが実はこれが最上階で、建物は岸壁に沿って8つの階からなっている。
部屋割りの関係で事前に予約してよりもグレードの高い部屋に通された。通常の和室のほかに、応接セットがおかれた小さな洋室と小さな和室がついている。天気は雨こそ降っていなかったが、これから翌朝にかけて春の嵐と予想されていた。海は少々荒れ模様だったが、おかげで窓からは心地よい波音が十分に楽しめた。
こんな経験を滅多にしない僕らにとっては、食事も設備もサービスも特に言うことなしである。正直他には何もないところなので、旅館でのんびりできるプラン(チェックアウトも通常より1時間延長)にしたのが正解だった。部屋を出た後も結局眺望のいいラウンジで音楽を聴いたりとのんびりした時間を過ごした。このとき聴いた音楽についてはまた別のろぐで。
プライベートガゼボ「さゞ波」での貴重な入浴シーン(妻撮影)
部屋の窓から空を眺める(海の上に広がる雲はいいものである)
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