9/15/2008

食い道楽とブラクストン

長いこと手こずっていたレポートに一定の決着が見えたところで3連休に入った。途中でテーマの捉え方を大きくしてしまったことや、他の課題を工数と時間で解決しようとする仕事に巻き込まれたりしたことなんかが災いして、予定よりもずいぶん時間がかかってしまった。

あと少しというところまで来ていたが、週明けにやるにはまだ少し手がかかりそうだった。こればかりにいつまでも時間をかけていられないとの考えで、3連休の午前中はその作業をすることにした。せっかくの休みにそんなことをするのは不本意ではあるが、仕方がない。それでも午後から夜にかけてはじっくりと自分たちの時間を過ごすことができた。

この休み中で僕はまた一つ歳をとった。もう40歳台も半ば近くである。世に「アラフォー」という言葉があるらしいが、その最中にある妻に言わせればどうやら僕はもうその仲間ではないらしい。まあ別にどうでもいいことなのだが。

誕生日を祝って妻が何かをご馳走してくれるというので、何が食べたいか考えた。普段からすればちょっと贅沢なコース料理も悪くないのだが、安くてもいいのでもっとはっきりした満腹感で満足させてくれるおいしいものが食べたいと言ったところ、「具体的に」と言われ、とっさに頭に浮かんだのが渋谷のハンバーグ店「ゴールドラッシュ」だった。

3連休初日の午後に2人揃って渋谷に出かけた。妻は行ったことがなかったので、僕の話に期待と不安が半々という感じだった。今回はせっかくなのでしっかり堪能させていただこうと「ハーフ&ハーフ(普通のハンバーグとチーズハンバーグの組合せ)」を300グラムで注文、妻は同じものを200グラムで注文した。

300グラムとなるとハンバーグが3個、熱々の鉄板に乗せられてやってくる。それに店員さんがテーブルでソースをかけてくれ、ご覧の通りの有様となる。以前に200グラムを食べている経験からして、これはもうひたすら一定のリズムで食べ続けないと、途中で会話に興じたり休憩したりしようものなら、そこで終わってしまう。

100%ビーフでしっかりと練り上げられたハンバーグに、チーズとマヨネーズ、マスタードを織り込んだトッピング、これが非常にウマいのである。「ウマいウマい」を連発しながら、3個のハンバーグと付け合わせの大きなポテト、ミックスヴェジタブル、そしてライス1皿を無事に完食、妻もそんな僕のペースにつられて2個をぺろりと平らげてしまった。

これがその日午後2〜3時にかけての出来事で、さすがに2人ともその日は何も食べられなかった。僕は誕生日をいいことに4缶のビールを夜次々と飲んで満足した。少し前に購入してあったアンソニー=ブラクストンのDVDを聴きながら。

こんな調子で翌日も朝は仕事、午後にマンションのモデルルームを見学して(微妙な物件だった)、その後は夕方早くに新丸子の韓国料理「オモニ」で野菜チヂミ(旨い!)、ホルモン炒め(辛い!)、カルビクッパ(絶品!)を食べて、夜はビールと缶入りウィスキーとブラクストン。

続く月曜日も朝は仕事、午後に武蔵溝ノ口に出かけて和歌山ラーメンの「まっち棒」でラーメン、夜の食材とデザートを買って帰り夜は、妻が豆と野菜たっぷりのスープを作ってくれて、僕のカルボナーラと一緒に食べてデザートに銀座で話題のエクレア(まああんなもんでしょう)を平らげ、少し仕事をして、いまはブラクストンを聴きながらこれを書いている。

アンソニーは僕にとってとても大切な音楽家になっている。いつの間にか持っている作品も30枚を超えた。彼の精力的な創作活動は幸いなことにどんどんCD等になって発売される。いま気に入って聴いているのは、一番最近購入した"Nine Compositions 2003 (DVD)"である。

この作品、タイトル通りDVD作品なのだが、動画は入っていない。合計6時間以上に及ぶ9つの作品が1枚のディスクに収録されている。オーディオは通常のDVDと同じ24bit/48kHzの高品質のものだ。

収録されているのは2003年12月に開催された「ブラクストンフェスティバル」でのライヴ演奏と、その直後にスタジオ録音された作品。10分前後の小編成作品が5曲、12〜13人編成のアンサンブルによる60〜90分の長編が4曲収録されている。アルバムタイトルにもあるようにすべてはコンポジション、つまりあらかじめ作曲された音楽である。

こう書くと非常に散漫な作品かと思われるかもしれないが、これが非常に内容の濃い素晴らしい作品集なのである。その素晴らしさは冒頭の作品、かのライザ=ミネリ(!)に献呈された「作品328」からしてはっきりと伝わってくる。約1時間半という演奏時間はある意味長く、ともすれば漫然とした視聴姿勢を誘発しがちだが、ブラクストンの用意したコンテクストとその上で展開される彼の仲間達のアンサンブル(時にインプロヴィゼーション)は、常に緊張感を持続し、様々な音楽の表情を豊かに見せてくれる。

これが6時間も続くのだから、これはもう自宅でブラクストンフェスティバルが開催されているようなものである。一気に聴き通すのはさすがにいまの僕にはできないし、まだこのアルバム全体をじっくり聴き込むには至っていない。DVDからオーディオだけを抜き出してiPodに入れるやり方がまだわからない(手持ちのソフトでいくつか試してみたが上手く行かなかった)ので、これを聴くのは居間のオーディオセットか、DVDドライブのついたMacにヘッドフォンをつなぐしかないのだ。

とまあ、この3連休は、朝は仕事、午後は食い道楽、夜はビールとブラクストンというパターンでしっかり過ごさせてもらった。そうこうしているうちに僕はまた一つ歳をとった。ブラクストンのように精力的に活動し何かを残して生きたいと思うが、やはり彼は超人のようだ。


Anthony Braxton
Nine Compositions (DVD) 2003

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