10/14/2006

デイヴ=ホランド「クリティカル マス」

 気をつけてきたつもりだったのに、久しぶりにカゼをひいてしまった。金曜日は仕事を休んでしまい、その夜には39度近い熱が出た。こうなるともう食べること以外は眠るだけである(食欲がある分にはまだ安心の余地はある)。眠り続けた甲斐あってか、今朝には平熱まで下がったものの、まだ喉が腫れているのでしばらくは予断を許さぬ状況だ。

仕事は、いつもだったらなんとか理由をつけて休みたいと思う。しかし、いざこういう状況になってしまうと、最近の仕事で至らぬところばかりが気になってしまい、ああなんでもいいから体調が回復して欲しいと願うようになる。それから、全快したら今度こそ毎日ちゃんと運動をして、週に1回はジムに行こうなどとうわごとのように誓う。不思議なものだ。

前回のアクアで1回中断していたが、アマゾンドットコムで購入した3枚のCD、最後の作品は、僕の大好きなベーシスト、デイヴ=ホランドの最新作である。これまでにも彼の作品は2枚取りあげているのだが、ホランドの作品についてまあはっきり言ってしまえば、かなり玄人好みの音楽だろう。特に日本では一般にほとんど名前が知られていない。しかし、彼はジャズ部門でグラミー賞を受賞するほど大変に評価が高いアーチストなのである。

今回の作品、タイトルは「クリティカル マス」とある。発売元はECMではなく、昨年(一昨年?)自身で旗揚げしたDare2 Recordsからのもの。ECMとの契約は終了したものと思われるが、その意味では今回買った3枚のいずれもが、かつてECMで看板だったアーチストのものというのは、単なる偶然だろうか。最近のECMはキースの稼ぎを元手に、欧州現代音楽の新しい才能を発掘しようという方向になってきたようだ。

内容的には、ECM後半から続くクインテット作品の延長で、ドラムがビル=キルソンからネイト=スミスという人に変わっているものの、サウンド全体のは大きな変化はない。今回も多くの曲で変拍子(4分の4や4分の3など一般的な拍子ではないもの)が使われているが、こういったところが玄人向けと思わせる所以かもしれない。

音楽演奏にあまり詳しくない人には、どことなく聴いていて「変な音楽」に感じられるらしく、その一方で、音楽演奏とにかくフュージョンとかプログレに深入りした人(特に日本人か?)は、この変拍子というのが好きで、「格が高い」という思いを抱く人が少なからずいるようだ。まあ「匠」と映るのは理解できるし、演奏上かなりチャレンジングなものである(というかここにあるようにさらりとやってのけるのは相当なリズム修業が必要である)。

僕はホランドはある意味で、モダンジャズ(あるいはコンテンポラリージャズ)を継承する最重要人物の1人だと思っている。ECM後半から続いているクインテットの作品は、いずれも素晴らしい演奏の連続であるが、一方で「どれも同じに聴こえる」という意見があるのはわからないわけではない。今回の作品は僕にとっては、吸収されるのに少し時間がかかった。同時に買った2枚が、新鮮に響いたのに対して、この作品は従来からのものがさらに深まりました、という性格のものだったからだと思う。

それでも最近になってようやく耳がこれについていけるようになった。こういう音楽はなかなかiPodでは真価を見極めるのが難しいと思う。裏を返せば、ヘッドフォンやカーステレオ、ラジカセなど「ながら文化」から生まれてくる音楽というのは、底が知れているということか。同時にもう少し言えば、記録された音楽も生演奏には勝てないということだろう。

今回は少々まとまりがないが、このあたりにしてまた一眠りしようと思う。

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