10/22/2006

マイク=スターン「ライヴ」

 風邪ひきの先週末から、病み上がりで出発した1週間。しばらく先延ばしになっていたレポートを完成させるべく、管理業務以外はひたすらそれに集中した。熱が下がった結果か、頭はそれ以前に比べてクリアになっていて、いろいろなテーマが絡み合って全くまとまりがなかったものを、何とかシンプルに整理して仕上げることができた。

そうして木曜日の夜にレポートを発行し終え、金曜日は、数字のチェッックをしたり、他から頼まれていたもの書きの企画を提出したりして過ごした。この日の夜は、中目黒でジンギスカンを食べる約束をしていたので、僕はそれが始まる前に会社を抜け出し、渋谷のタワーレコードに向かった。

久しぶりに、1時間半かけて6階から2階までの音楽売場を総なめにしてみた。いろいろといいものがあった。手にしたものを全部買えば、1万5千円くらいになったはずなのだが、そこは我慢してCD1枚とDVD1枚の計6千円に抑えた。諦めたものの中には、ウェザーリポートのボックスセット「フォアキャスト トゥモロー」があった。

店頭で上映される、黄金期のライヴ映像は確かに魅力的だった。事実上あのDVDの為にお金を出す様なもののはずなのだが、なぜか企画の上では映像はオマケということらしい。最近はそういうものが多い。まあこれについては、ネットで買えばもっと安く手に入るだろうと割り切ることにした。事実、後でチェックしてみるとその時の売値の75%で買えることがわかり、危うく購入ボタンを押しかけた。

土曜日はその際に買ったDVDを昼間に観て、夜は久しぶりにウィスキーを飲みながら、買ったCDを聴いた。今回はそのDVDを紹介するのだが、その前に、先週月曜日からフジテレビで始まったドラマ「のだめカンタービレ」を録画していたのを思い出して観たので、少しだけ書いておこう。

僕は原作のマンガはまだ読んでいない。大きな楽器店にいくと楽譜や書籍の売り場に、あのマンガのコミックスが積んであり、その変なタイトルと、どうしてこんなところにマンガが置いてあるのか、という点で気にしていた程度だったのだが、それがドラマになると聞いて、そんなに人気があるのかと思った。

原作ファンからすれば、映像作品化は大抵煙たがられるのが常だ。僕の周囲にも何人か原作が好きと言う人がいるようで(やはり大抵は楽器をやっている人だ)、その人達からまだ感想は聞いていない。最近の音楽関係のマンガといえば、ロックバンドを舞台にした「NANA」があるが、「のだめ〜」は音楽大学を舞台にしたラヴコメ、つまりクラシック音楽が主役である。

まだ第1回しか観ていないので何とも言えないものの、僕はなかなか面白いと思った。CGを使ってマンガの絵的リズムを表現しようとしているのは、そこそこ成功していると思ったし、マンガではあり得ない、シーンに合わせてクラシック音楽効果的に使うことも、この作品らしさをうまく出していると思った。あとはそのテンションを最後まで飽きさせずに続けられるかどうかだろう。

原作の登場人物のキャラに精通していないから、その意味では無責任なコメントかもしれないが、主役の上野樹里と玉木宏はなかなか上手く音楽生を演じている。上野は「スウィングガールズ」でもなかなかの評判だった。確かに演奏家を演じるのは、あるレベルを過ぎると、表情とか指使いとか急にいろいろと難しいものが求められるところを、なかなか健闘していると思った。

久しぶりに面白ければ最後まで観てみようかと感じるテレビドラマだった。ただ、たぶん原作は違うと思うのだが、話があるテーマに単純化されて物語が進む様なので、それで連ドラとして安っぽくならないかは心配である。

さて、今回のDVD作品は3ヶ月ほど前に発売されたもので、僕の大好きなギタリスト、マイク=スターンの最近のグループのパフォーマンスが収録されている。今年の1月に、会社の知人と彼の演奏を青山のブルーノートに聴きに行ったことは、このろぐにも書いた。ここに収録されている映像は2004年11月のものというから、僕等が観たものよりもさらに1年くらい前のものということになる。

マイクのパフォーマンスはたまに無性に聴きたく、というか観たくなる。人によっては、ワンパターンとかマンネリと言って片付けることもあるが、僕にとってはとてもわかりやすい表面と、意外に深い音楽性の両面がたまらない魅力である。今回のDVDはそれを観たくなればいつでも観ることができるという意味で、買っておいていいかなと判断した。

内容は僕等がブルーノートで観たものと雰囲気が似ている。マイクのギター、デニスのドラム、ボブ(=フランチェスキーニ)のサックスは、いつものように超強力でハイテクニックだ。そして、このDVDではベースをリチャード=ボナが勤めている。彼は最近話題のベーシストなのだが、僕は全く音を聴く機会がなかっただけに、今回のお目当てはそこにもあった。

結果的には、ボナはやっぱりスゴイテクニシャンだし、個性的なスタイリストでもあると感じた。ただ個人的にはちょっとうるさく感じられる部分もないわけではなく「ちゃんとベース弾けよ」と思う場面がいくつかあったことは事実だ。まあ新しさというのはそういうものだろう。でも僕は以前観たアンソニー=ジャクソンや、リンカーン=ゴーインズの方がいいと思った。

それにしても、ボナもアンソニーもリンカーンも、そして上原ヒロミのグループのトニー(=グレイ)も、最近の有名なエレキベーシストはみんなフォデラ社のベースを使っているなあ。やっぱりいいんだろうなあ、と少しずつ興味を引き寄せられつつある自分が少々怖い感じもする。機会があれば、是非触ってみたいものだ。おそらく一度触ったらもはやそれまでだろう。

ああ、このところまたベースをご無沙汰してしまっている。楽器にのめり込むというのは、やはり若い時にどこまで深く潜ったかというのは大切だと思う。四十の手習いとかいっても、それはそれで別の楽しみ方だとは思うけど、所詮いく先は知れている(やる方もわかっている)。僕は学生の頃にそれほどバリバリやったわけではなかったけど、あの頃自分を楽器に向かわせていたものは何だったのかと、考えてみてもそれが言葉になるわけではない。「のだめ〜」とマイクのDVDを観て、そんなことを考えた。

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