先週はろぐをサボってしまい、日頃読んでいただいている皆様にはご心配、ご迷惑をおかけしました。お詫び申し上げます。特に何か事件があったというわけではなく、以下に書く仕事の関係で週末少しやらなければならないことがあり、そちらの方にかかりきりになってしまっただけのことである。
先週月曜日の夜から水曜日の朝まで、仕事で札幌に滞在した。4年半ぶりの北海道だった。仕事の内容については省略するが、本来は火曜日の朝出発すればいいところを、少しずるをして前日の夕方出発し、その日は自腹で宿泊をした。そこで、僕の幼馴染みである男と久々に食事をするためだった。彼は僕が付き合いのある友人の中では、一番古い友達で、現在は札幌で歯科医をやっている。雇われ身分だといっていたが、市内数カ所に病院を構えるグループでひとつの病院の院長を勤めている。
会食は彼の病院に近い居酒屋で、比較的夜遅めの時間から始まった。彼とはお互いの親のこともよく知っているので、僕の親父の近況も含め、話は先ずそう言う内容に展開した。ちょうど僕は、親父が入院して帰郷した二週間前に、僕の実家のすぐ斜め向かいにある彼の実家に立ち寄り、彼の母親と会話したばかりだった。お互いもういい大人であるので、かなりざっくばらんな話をしたが、それでもやはり隣の家の家族事情というのはなかなかわからないものである。
彼には奥様との間に3人のお子様がいて、いま札幌で楽しく生活をしている。この日はわざわざ僕に聴いてもらいたいものがある、といって、小学校5年生になるご長女の演奏するピアノを聴かせてもらった。発表会かなにかを録音したもので、曲目は僕の知らない作曲家が作ったショパン風の小品だった。正直どう思うかと聞かれて、僕は素直に「非常に上手いと思う」と答えた。予め説明を受けていなかったら、そういう人が演奏したものだとは絶対に思わなかったに違いない。
彼自身はいわゆる「プログレ」の大ファンで、学生時代から独学でキーボードやピアノを演奏していて、その割になかなか上手だった。娘さんがその影響をどの程度受けているのかはわからないが、その近辺では割と有名な先生に指導していただいていることもあってか、とても11歳かそこらの子供の演奏には聴こえなかった。彼はこれからこの才能をどうしたものかと考えているようで、目下の悩みは、本人がピアノをまったく楽しんでいないことだとこぼしていた。よくある話だ、僕は頭の中でそうつぶやき、ビールを一口やって、それをタバコの煙のように口から放った。
お互い明日の仕事のこともあるので、その夜は11時過ぎまで飲んで切り上げることにした。短い時間だったが、充実した一時だった。当たり前の話だが、ちょっとした居酒屋でも出て来る料理はどれもおいしかった。翌日の夜も、仕事の関係ですすき野でごちそうになったが、やはり同じことを感じた。慌ただしくでなく、もっとゆっくりと味わい楽しみたい街だが、今回は仕事目的なので仕方がない。またプライベートで訪れようと誓いながら、僕は札幌を後にした。
この2週間で、僕はいろいろな音楽を仕入れた。本当はそれらについても書いてみたいのだが、今回は先々週の末に自宅で観た映画をとりあげたいと思う。僕の好きなヴェンダース監督の最新作で、原題は"Don't come knocking"。日本では今年の2月に劇場公開され、先月末にDVDが発売された。
脚本がサム=シェパードと聞けば、20年前の名作「パリ、テキサス」を思い出さざるを得ない。今回はシェパード本人が主演もしている。テーマは邦題にもある「家族」であり、その意味で「パリ、テキサス」に大きく通じるものがある内容になっている。「パリ、テキサス」は映画の歴史に残る名作としていまもなお根強い人気を持っているが、今回の作品も負けず劣らずの見応えがあるものに仕上がっている。
内容はいつものようにここでは書かない。実力ある豪華なキャスティングと、テーマを裏打ちするに相応しいアメリカのアメリカらしい情景を捉えたカメラワークは、非常に見応えがある。内容について一つだけ書いておくとすれば、「家族を捜す旅」に一応の決着がついた後、ティム=ロス(「海の上のピアニスト」の人ですね)演じる男と、シェパード扮する主役が交わす会話があるのだが、これがこの作品における大きなメッセージとなって存在感を持っている。ここに描かれている現代的な家族の肖像を、実際の生き様として地で行くのがシェパード演じる男だとすれば、ティム=ロスの役柄はそれを現出する社会的な精神の存在を表現しているように、僕には思えた。その辺のところは、実際にご覧いただいて、皆さんなりに考えてみていただければと思う。
ちょうど「パリ、テキサス」がDVDで再発されたので、この作品を観て感銘を受けた僕は、早速購入した。この3連休のうちにゆっくり観ようと思っている。
この3連休に入る前に、僕はまた一つ歳をとって42才になった。今後もこのろぐは続けていきたいと思っているので、よろしくお願いします。
アメリカ、家族のいる風景 映画公式サイト
Wim Wenders公式サイト(英語)
0 件のコメント:
コメントを投稿