6/13/2006

エリック=リード「ヒア」

 週末、仕事とPCを家に持ち帰り、土曜の夜遅くまで根を詰めて頑張った(実は昼間はあまり捗らなかったのだ)。画面上で図や表の位置合わせをしたりする細かい作業が続いて、気がついたら日付が変わっていた。まだ少しやり残したことはあったけど、頭でまとめ方を考えてからでないと取りかかれそうにない作業だったので、その日はそこまでとした。

シャワーは翌朝浴びることにして、ウィスキーを持ち出して少しオン・ザ・ロックでやることにした。もう1時を過ぎている。風はほとんどなかったが、開けた窓からすーっと冷たい空気が流れ込んでくるのがわかった。

渋谷のディスクユニオンでお奨めCDになっていた、エリック=リードの新作"HERE"を(ユニオンで買わずに)アマゾンのカイマンで取り寄せてあった(モダンショッピングである)。気付いてみると、僕がCDを買う店は"n"で終わるところばかりだな。ウィスキーを口に馴染ませながら、僕はこのCDを聴いた。

エリックはウィントンのグループなどで演奏していたジャズピアニスト。その彼が率いるピアノトリオの最新作がこれだ。内容はとてもしっかりした聴きごたえのある演奏。1曲目に"Stablemates"を持ってくるあたり、ハンコックの名作に挑戦するかのごとくである。しかし、これがまたカッコいい。ミドルテンポでカッコいい演奏を耳にすると、僕はところかまわず深い唸り声をあげてしまう。

アルバムは彼のオリジナル中心に構成されているが、冒頭の曲の他、全部で3曲のスタンダードが入っている。その一つ"It's easy to remember"も見事な美しさ。キースの演奏にテンポやテーマのとり方が似ているのだが、エリックのはもう少し重みのある音色が、雰囲気に深みを増している様に思う。

そしてもう一つは、コルトレーンの"26-2"である。先のブラクストンのスタンダード演奏集に収録されていた。この曲はもともとLPには未収録だったもの。CD時代になってボーナストラックとして初めて知られる様になった曲だが、玄人の演奏意欲を惹き付けずにはいられない曲のようだ。他にもサックスのジョー=ロヴァーノなどもこれを演奏している。エリックの演奏もアグレッシブだが、あくまでも個人芸だけが突っ走るのではなく、トリオの枠でしっかりと演じきるところがよい。

さらに夜が更け、ウィスキーも3、4杯目になった。空気がいっそう冷たく感じられてきたので、窓を閉めてそのままソファーで寝ることにした。いま考えればこれがいけなかった。4時間後、目を覚ました僕は39度を超える熱を出していた。

昔から扁桃腺が腫れやすく、それも大抵は肩の疲れからやってくる。仕事をする様になってからの、僕の発熱パターンはいつもこれだ。このところ歳のせいか予防に敏感になり、少しでも異変を感じたらすぐに何らかの対処をしてきたので、ほとんどは発熱を水際で防いで来たのだが、今回ばかりは酔った隙にあっさりと上陸されてしまい、陥落である。

おかげで日曜日は仕事の続きも出来ず、一日ベッドで寝ていた。40歳を過ぎて39度はかなり身体に堪える。その状態は月曜日の朝まで続いて、結局会社を一日休んでしまった。それでもその日が報告書の入稿日だったので、僕は必要最低限のディテールを家で仕上げて会社に送り、部下にまとめてもらってなんとか締め切りに間に合わせた。

ここ2、3ヶ月間かけて取組んでいたものだけに、入稿の一区切りに伴う解放感をこんな形で味わうのは不本意だった。まあそれでもよく頑張ったものだ。

おかげで熱は月曜日の夜までには下がった。日本の多くの人がテレビで観戦したというスポーツ中継も、さして興味がないので、ひとり寝室で裏番組のヴァラエティを観ていたら、これがツボにハマってしまい、放映中に日本が劇的な逆転で破れたことなど知らずに、独り声をあげて笑いまくっていた。何故かわからないが、テレビを観てあんなに笑ったのは久しぶりだったように思う。

居間でサッカーを観ながら、寝室からの僕の笑い声を聞いていた妻からは、後で「薬か熱でおかしくなったのかと思ったよ」と言われてしまった。だったら心配して看に来てくれてもいいのに。周囲が日本の敗戦に呆れ悲しんでいる間、アパートの僕の寝室からは素頓狂な笑い声がわき上がっていたというわけだ。まあ、しょうがないだろう。僕には笑う理由があったのだから。

というわけで、今週は変則的な更新になってしまった。まあ風邪も大事には至らず、報告書も入稿し(これからが大変なのだが)、とりあえずメデタシである。関東も梅雨に入った。僕は早くも短い半袖シャツや、ハーフパンツやらを買って、夏を心待ちにし始めた。

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