6/05/2005

ウルフ=ワケーニウス「エターニティ」

  もう6月である。そろそろ梅雨入りかという感じになってきた。今日も午後は雨と伝えられていたが、見事に晴れた。久しぶりにウェアに着替えて多摩川沿いを軽く歩いてみた。空気や日差しはもはや心地よいという域値を少し超えていたけど、1時間程度のウォーキングは快適だった。

 前回のろぐでアイラーをとりあげたせいで、先週の通勤では、あの作品とマイルスの「ビッチズ ブリュー」を交互に聴く毎日だった。意外にこの取り合わせが絶妙で、アイラー30分間の咆哮に続く「ファラオズ ダンス」がとても自然である。アイラーについてはその後いろいろ資料収集を行っており、もう少し整理したうえで書いてみたいと思う。

 今回は少し以前に購入してとても気に入っている、スウェーデン出身のジャズギタリスト、ウルフ=ワケーニウスの新作をご紹介したい。ジャケットを見たとき多少前衛的な内容を想像したのだが、「ジョー=パスに捧ぐ」というウルフの言葉通り、全編をギター1本でスタンダード演奏に相対した力作である。

 僕は彼のことをこの作品ではじめて知った。ウルフは、あのオスカー=ピーターソン(ジャズピアニストの大御所)のグループで活動し脚光を浴びた逸材である。既に自己名義の作品も数作出しており、この作品はソロ作品としては2作目のものになるらしい。

 ジョー=パスと言えば名作「ヴァーチュオーゾ」をはじめとする、信じられないようなソロギター演奏が有名である。僕もあれを狂ったように聴きまくった時期があった。いつかこのろぐでとりあげることになるだろうと思う。あれに匹敵するソロギターはなかなか出ないだろうなあと思っていただけに、このワケーニウスの作品には期待と不安が入り混じった。

 内容は実に素晴らしいものである。テクニックはもちろん、ソロで演奏を構成する表現力など音楽性も最高である。ジョー=パスとの違いは、ナイロン弦エレアコギター(ライナーノートに掲載された写真ではゴダン社マルチアックの様に見える)を使用している点である。ナイロン弦と言えば、アール=クルーがある時期にソロやジャズギタートリオ作品を発表していて、それなりに好きではあるのだが、やはりナイロン弦特有のどことなくおしゃれな優しい感じがあって、どうしてもサロン風に聴こえてしまう(まあその狙いもあるのだろうが)。ここでのウルフの演奏は、その音色を時には優しく、時にはミステリアスに、そして時には激しくと多彩な表情を見せる。

 どの演奏も素晴らしいのだけど、やはりラストに収録されたロリンズの「ゼア イズ ノー ビジネス ライク ショウ ビジネス」が圧巻である。実にさりげなく展開される超ハイテクなノリノリ演奏。もうこの1曲のためだけに購入しても十分おつりがくる。はじめてこの手の演奏をお聴きになる方には、これが一人で演奏しているということが絶対に信じられないだろう。上記ジャケット写真から発売元のサイトにリンクを貼ったので、「曲目リスト・試聴」のところから是非とも試聴してみて欲しい。

 もう少し彼の他の作品を聴いてみたくなった。そういう場合には、得てして他の作品に手を出すとスベる危険性が高いのだが、彼の場合はなんとなくその点は大丈夫そうだ。

Spice of Life Inc.
Godin Guitars カナダのギターメーカ「ゴダン」公式サイト ここのギターは魅力的です(高いけど)

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