ミシェルの経歴については、下記にリンクをつけた彼女の公式サイト等をご覧いただきたい。簡単に紹介すると、1993年にデビューしたベーシスト/シンガーソングライター(古いか)であり、ヒップホップやジャズ、ブルース等々ブラックミュージックを包括的に取り入れたアーチストである。女性でありシングルマザーでありゲイでありムスリムでもある。彼女の立ち位置としての音楽の存在を考えてみるに、いまや人間にとってここまで大きな基盤になったのだなということが実感できる。
今回の作品は、彼女が組んだジャズプロジェクトとして最初のCDであるが、彼女の呼びかけに対して、それはそれは蒼々たるジャズミュージシャンが集結したのである。全8曲のうち、同じメンバー編成によるものはひとつもなく、インストありヴォーカルあり、2分弱のものから12分近いものまでと様々な形式の作品が収められているのだが、全体的には一貫したコンセプトがはっきりと感じられ、展開されるミシェルの音楽表現は見事に現時点でのジャズである。
ここにすべてを掲載することはできないが、内ジャケットに記載された彼女自身による以下の序文は見事である。
My intention was to create music that allows for free interpretation and self-expression.(中略)May whoever needs it, find it, and all praise is for the creator. I am grateful.僕が思うに、現時点において「ジャズ」というジャンルの流れを汲む音楽については、その受け止め方は、「過去を振り返る」という姿勢と、「これからを見据える」というものに分かれるところが、人によってあるいは作品によってあるのだと思う。この作品に関しては、先にとりあげたスティーヴ=コールマン等と同様、伝統的ジャズをベースにコンテンポラリーミュージックを視野に入れつつ、そのこれからを見据えた作品のなかで特に優れたものとして、素直に捉えられると思う。
ジャズは死んだとかそういう議論にはなんの興味もない。この作品は僕にとっては完璧なまでに素晴らしいコンテンポラリージャズ作品である。過去のジャズ作品で余生を過ごそうと決めた方には、あまり価値が認められない作品かもしれないが、ともすれば目線が後ろを向きがちだった最近のこのジャンルの作品のなかで、これからの行く道をしっかりと照らすヘッドライトの様な役割を果たす作品だと思う。
すべての「前向きな人」、機会あれば是非聴いてみてください。これからの進化が楽しみになりますよ。
Comfort Woman ミシェルの公式サイト
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