2/13/2005

スティーヴ=コールマン「ライヴ イン パリ アット ザ ホット ブラス」

    今週一番よく聴いた音楽は、間違いなくスティーヴ=コールマンだった。20種類近くある彼の新旧様々な音源を手当り次第に、CDやMP3で聴いた。憶えている限りでは、彼が参加していない音源はこの1週間は聴いていないのではないかと思う。前回のソニー=クリスとは同じアルトサックスでも内容はかなり対極的な音楽。コールマンはいまの僕にとって非常に重要なアーチストなのだ。

 彼がジャズシーンにデビュー作「マザーランド パルス」で登場した時は、僕はまだ古いモダンジャズ(?)に心酔していたので、その良さがいまひとつ理解できなかった。それでもファンクやラップを取り入れた彼等の音楽に、これは何かあるなとは感じたものだった。

 僕が彼の音楽に本格的に開眼したのは、2002年に久々にリリースされた2枚組のライヴアルバム「レジスタンス イズ フュータイル」だった。これについてはまたいずれ紹介することにして、それを機に僕は彼のリーダー作のほとんどすべてを3ヶ月程で蒐集してしまった。

 今回取りあげる作品は、1995年にフランスはパリのホットブラスというクラブで開催された彼のプロジェクトの模様を収録したもの。本来は3枚のアルバムとして別々に発売されているもので、3つのCDにそれぞれ異なるユニットのパフォーマンスが収録されている。

 「ミス モード ミーンズ」(写真左)は、「ミスティック リズム ソサイエティ」と名乗る通り、琴やエスニックパーカッション、そしてダンス(もちろんCDでは確認のしようがない)などをフィーチャーしたユニットによる多彩な音楽が展開される。2曲目に収録されている24分の大作「フィンガー オブ ガッド」は、琴のイントロに始まり、祈祷の様なヴァーカル(ちょっと音程のハズレが気になるが)から、グループ演奏へと展開してゆく壮大な内容。その後も、コールマンとエスニックパーカッションのデュオやらと、次々にいろいろなスタイルが飛び出す玉手箱的内容である。

 「ザ ウェイ オブ ザ サイファー」(写真中)では、ラップが全面的にフィーチャーされる。クラブミュージックと異なるのは、リズムが人の手による演奏でしかもその多くが変拍子であること。これをやったラッパーもエラい。コールマンミュージックの醍醐味が堪能できる。一発目の「フリースタイル」から早くもハイテンションな変拍子ラップが、実にさりげなく展開される。続く「ファースト レーン」で一気にテンションが上がりもの凄いことになるのだが、それは実際にアルバムを聴いていただいてお楽しみください。

 「カーヴズ オブ ライフ」(写真右)は彼の活動の核となるユニット「ザ ファイヴ エレメンツ」による演奏。ここでは、2曲目の「カントリー バマ」とラストで、たまたまフランスに来ていてスティーヴのライヴを聴きにきていたフリー系テナーサックスのデヴィッド=マレーが、飛び入り参加してエラいことになるという、うれしいハプニングが収録されている。ラップやエスニックはちょっとな〜、というジャズファンの方には、先ずこのアルバムがお勧めである。

 彼の音楽は彼のサイト上にMP3ファイルで公開されており、BMGとの契約に入って今回の作品以前のものについては、なんと全曲が無料でダウンロードできる。BMGレコードとの契約が続いているものに関しても、各アルバムについて2,3曲がフルレングスで公開されている。文中のリンクからそのままMP3ファイルに直行できるので、お楽しみください。特に「カントリー バマ」のマレーは凄いですよ。

 僕はスティーヴ=コールマンの来日を首を長くして待ち望んでいるのだが、なかなか実現しそうにない。海外のパフォーマンススケジュールが公開されているので、これに合わせて海外に行くのも悪くないかなと考えている。もし僕が日本でライヴを企画できるのだったら、真っ先にお招きしたいアーチストである。来週は仕事が忙しくなりそうだが、この分だとコールマンミュージック三昧のまま、なんとか乗り切れそうである。

M-Base Web Site スティーヴ=コールマンの公式サイトといっていいでしょう。過去の作品のフリーダウンロードやインタビュー、公演記録など情報が満載です。

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