先の週末はいろいろと用ができてしまい、ちょうど体調も少し崩れかけていたので、ろぐをサボってしまった。幸い悪化には至らず、年内の仕事にもメドがついたので日本では祝日の今日ろぐを書いている。
東京はこの1週間でようやく冬らしくなった。それでも僕が上京してきた17年前に比べても、まだ暖かいような気がする。「温暖化」は確実に進んでますね。身近にできるところからなんとかしたいとは思うのだけど、電気で音楽なんか聴いてる場合じゃないよと思うのは寂しい。うちは自家用車を持ってないので、あとはせめて燃えるゴミを減らすこと、部屋のなかでもなるべく厚着をすること、こんなことでも続ければ意味はあるだろう。音楽とインターネットはその分ご勘弁願いたいところだ。
音楽を聴いて暖まるという効果はどの程度期待できるのか。音楽暖房(または冷房)という新しい概念でも提唱するひとがそのうち出てくるかもしれない(というか、僕がいま提唱したのかもしれない)。季節や曜日、時間などにあった音楽と言う考え方は、別に嫌いではないのだが、結局僕のなかではあまり意味の無いことになっているようだ。真夏の現代音楽、朝の通勤時でのフリージャズ、眠れない夜のヒップホップ、どれもまったくOKである。
さて、実のところいまだエレキマイルスブームが続いている。マイルスばかりとりあげてもいいのだけど、あまり一人のアーチストに偏るのはえぬろぐ的ではないので、今日はその関連作品として、あまり知られていないかもしれないがとても面白い、そして素晴らしい作品を紹介しよう。
ギタリストのヘンリ=カイザとトランペット奏者のワダダ=レオ=スミスは、ともにフリーミュージックのシーンで活躍するアーチストである。ともに1970年あたりからシーンに現れ、現在まで様々な作品をリリースしライブ活動も行なっている。僕もそれぞれ個別の作品として、デレク=ベイリーやセシル=テイラー等フリーミュージックの大御所と共演する彼らの演奏をCDで持っている。
そんな2人が突然タッグを組んで1998年に2枚組のCDを発表した。タイトルは「ヨー マイルス!」。ずばり、1970年代のエレキマイルスに捧げた作品である。内容は完全にエレキマイルスのスタイルそのもので、選曲もご機嫌である。ライナーノートを読んでみて驚くのは、彼らがいかにこの時代のマイルスを敬愛し、その音楽を研究していたかということである。エレキマイルスをフリージャズへのアンチテーゼのように言う人もいるが、そこは反動とかそういうことよりも、素直に時代に流れとして連続したものとして受け入れたいと思う。彼らもまさにその通りで、そこはフリーミュージックの中核を担うアーチストとして真摯な姿勢がうれしい。
ゲストミュージシャンとして、なんとローヴァサクソフォンカルテットのメンバーも参加。あの「アガルタ」のテーマをブラスアンサンブルでやってしまうのだから、これはもうカッコ良くないはずがない。2枚合わせて160分近いこの作品を、MP3プレーヤに入れて聴きまくる毎日、これで健康になること請け合いである。聴きながら思うのは、僕もこういうセッションがしてみたい!ということだ。リズムを受持つ身としても、ソロを受持つ身としても、そして演奏を聴く身としても、こんなに自由でエキサイティングで楽しい音楽セッションはないだろう。
このセッションは彼らにとってもお気に入りだったようで、そしておそらくはビジネスとしてもいい実入りになるのだろう。なにせ、フリーミュージックのインディーズ作品なんて、1タイトルあたり世界で3000枚も売れればいい方という世界だ。それに比べればこの内容なら、とりあえず聴いてみようかなと言う人だけでも世界で1万人はくだらないはず。2004年になって、おなじコンセプトでの続編「ヨー マイルス!スカイガーデン」(写真右)が発売され、一層パワーアップした演奏が楽しめる。もちろんローヴァも再びゲストで参上している。そして2005年早々にはさらにもう1作品発売されるそうである。
僕の嫌いな師走の喧噪を吹き飛ばすちょうどいい作品が見つかって、気持ちよい年越しになりそうである。気がつけば年内に書くろぐも残すところ今回を含めてあと2回となった。次回には、この1年間で取りあげた作品をもう一度振り返ってみたいと思っている。
Homepage of Ishmael Wadada Leo Smith ワダダ=レオ=スミス公式サイト
henry kaiser : the official website ヘンリ=カイザ公式サイト
どちらも充実の内容です。レコード会社や事務所が作るおざなりサイトとは異なる、とてもミュージシャンらしい、そしてインターネットらしい、素晴らしいサイトですよ。
0 件のコメント:
コメントを投稿