11/14/2004

デイヴ=ホランド・クィンテット「エクステンデッド プレイ」

  このところ仕事が少し忙しくなり、不覚にも休日にまで仕事をしなければならないハメになってしまった。この調子では「ん〜えぬろぐもさすがに今週はお休みかな〜」、というところなのかもしれないが、僕に音楽のない1週間などあるはずもないから、そうは言っていられない。

 忙しいにもかかわらず、先日仕事であるセミナーに参加し、その帰りに忙しさを気にしつつも同じ会社から参加した面々で六本木で一杯やって帰ることにした。その中に、今年入社したばかりだという人がいて、話をしていくうちに学生時代(彼はほんの数ヶ月前までは学生だったのだ!)に、ハードロックバンドを結成して、ギターとヴォーカルを担当していたのだということがわかり、少し音楽の話もすることができた。僕とは17〜8歳離れているはずなのだが、彼が一昔前のロックを熱心に聴いていたので、浦島太郎にはならずに済んだ。その彼に、翌日このろぐを読んでもらったところ、就職してしばらく音楽から離れていたのが、また聴いてみようという思いを取り戻したように感じた、というような意味の感想を送ってくれて、なんだか嬉しくなった。今回も頑張ってろぐを書いてみようと思う。

 今年の夏に「東京ジャズ2004」というイベントが開催された。僕はこの手のジャズフェスというやつをもう長いこと観に行っていない。最近では、ジャズの現状をよく反映していて、実に様々なアーチストが出演する。今年はなぜかあの「TOTO」が出演した。まあそれはそれで楽しいのではないだろうか。この模様は先日NHKの衛生放送でもダイジェストで放映され、僕はそれを録画して楽しんだ。

 これを観ながら気づいたのは、ここで演奏されているのが「21世紀の音楽」だということ。その意味で、僕の聴いている音楽、えぬろぐで紹介しているものも含めて、21世紀の音楽が少ないことが気になった。まあ、まだ21世紀になって4年も経っていないのだから当たり前なのかもしれないが、いくつかの若手演奏家たちの音楽はもちろん、20世紀から引き続き活躍しているアーチストも含め、そろそろ新しい動きが出て来ているのかな、ということを漠然と感じた番組だった。若手は皆テクニックはもう完璧である。そして音楽性も豊かである。でももちろん新しいだけではいいものにはならないことは、彼ら自身もよくわかっている。その意味でこういう大御所も出演するイベントへの参加は、なかなかプレッシャに違いない。

 僕が聴いたなかで、さすがだなと感じたのは、ヴォーカルのダイアン=リーヴスが率いるグループ。ドラムのグレッグ=ハッチンソンは、まだ34歳だがここではもう立派なお兄さんである。なかなか貫禄の演奏だった。そして、正体不明のリオーネル=ルエケというギタリスト。このイベントのトリであるハービー=ハンコックとウェイン=ショーター等によるクゥアルテットで、ショーターの名曲「フットプリンツ」に飛び入りで演奏していたが、演奏全体としての出来はともかく、なんとも言えぬ新しいスタイルの演奏だった。そして僕にとっての最大の目玉が、今回紹介するベースのデイヴ=ホランドの出演だった。テレビで放送された演奏について言えば、バンドとしてのまとまりは必ずしもいい感じではなかったが(特に最後の出演者全員によるスーパーセッションはハッキリ言ってサムかった)、彼のベースの醍醐味は随所に現れており、その意味では満足の内容であった。

 デイヴ=ホランドは僕にとってベースのアイドルである。彼の演奏が素晴らしいのはもちろん、作曲やプロデューサとして表現される音楽そのものが、僕にとっては「理想のジャズ」である。CDを探していてメンバーに彼の名前を発見すると、僕の中ではそれだけでプライオリティが上がってしまう。生でも彼の演奏は少なくとも3回観ている。彼について書き出すともう止まらなくなるので、端的に彼の何がそんなにいいのかといえば、彼がフリーからメインストリームまで幅広いミュージシャンから敬愛されていること、そして彼自身がしっかりと持つオリジナリティ溢れる音楽性である。決して何でも屋ではなく、安易なジャンルの混ぜ合わせにも走らず、これは揺るぎない自身の音楽感がなければできないはず。彼のアルバムはいつ聴いても新しい発見をもたらしてくれる。

 今回の作品は現時点での最も新しい彼のグループのライブ演奏を2枚のCDに収録したものである。これは1996年のアルバム「ドリーム オブ ジ エルダース」から始まるユニットの集大成と言える作品である。僕が思うに、これは最も現代的でありまた伝統的でもある「現代のジャズ」の姿だ。いま21世紀のジャズとは、と問われれば僕はためらわずにこの作品を推薦したい。サックス、トロンボーン、ヴァイブラフォン、ドラムの若手4人の演奏も最高である。このグループでの来日公演が待ち遠しい。

Dave Holland 公式サイト

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