8/08/2004

アンリ=テキシェ「モザイク マン」

  土曜日に川崎の自宅から横浜桜木町までを歩いてみた。午前11時過ぎに家を出て、国道1号線に出るまでが45分、そこから国道沿いに歩くこと2時間、横浜みなとみらい地区の真ん中にあるショッピングモールの中華レストランにたどり着いたのは、午後2時半頃だった。自宅からここまで約20km弱。途中、コンビニで水分を補給すること2回、天候は薄曇りでちょうどよい歩き日和だった。大きな国道沿いに歩くのは、距離が短くて済むし、しっかりした歩道があるので効率的なのだが、行き交う自動車に並んで歩くのはそこそこのストレスを感じるもので、意外に疲れる。それでも、目的地に着いて飲んだビールはこのうえなく旨かった。

 その後、海沿いの公園でのんびりと横浜港を眺めながら時間を過ごした。静かな入り江では時折ボラが水面に跳ね上がった。近くに作られた野外ステージでは、矢井田瞳のコンサートの準備が行われていた。そのすぐ近くのヘリポートからは遊覧飛行のヘリコプターがひっきりなしに離着陸を繰り返す。パシフィコ横浜のホールでは、コミックマーケットが開かれていて、アニメや漫画の主人公のコスプレを決めた若者でにぎわていた(話には聞いていたがこういう現場を観たのは初めてだったので少々驚いてしまった)。道中の国道もそれなりに楽しかったが、やはりこういう人が集まるエリアでは、一帯だけで同時に実にいろいろなことが行われているのだなということをあらためて知った。

 前回のろぐで紹介したウィントンの7枚組は、まったく強力な内容である。この1週間もほとんどその7枚を繰り返し楽しむことに費やされた。1枚1枚を毎回とりあげてもいい位だ。僕は結果的にこのウィントン=マルサリスというアーチストに対する思いを新たにした。彼のやや原理主義的な主張もいまとなっては理解できる。ここに記録されている素晴らしい音楽は、急速に広がるジャズのなかで、いま一度その源流を振返るという意味で、ひとつの時代的な要請であったように思えるのだ。ジャズにとって、こんなことができるアーチストは、やはり彼しかいなかったのだ。

 NHKの夜の番組で、歌手の森山良子がジャズシンガーに挑戦し、ニューヨークの名門クラブブルーノートの舞台に立つという番組をやっていた。彼女の父親のエピソードから始まり、森山自身がニューオリンズのバーボンストリートに足を運んで当地のジャズを楽しむ映像などもあり、なかなか楽しめた。ステージのハイライトでマイケル=ブレッカーが登場したのには驚いた。

 さて、そんななか、たまたま出かけた渋谷のディスクユニオンで、中古CDを漁っていて見つけたのが今回の作品である。タイトルの「モザイクマン」とは、ジャケットにあるアフリカの草原を駆けるシマウマの模様にも表されている、アンリ自身のジャズに対するそして現代に通じるひとつの概念である。ジャズは黒人と白人の文化が出会ったことから始まった、というのが通説になっている。リズムやメロディ、ハーモニーなどジャズ音楽のベースになっているは、明らかに黒人の音楽文化であり、まあそのあたりからウィントンのような考え方も出てくるのだろう。テキシェはヨーロッパジャズの人間だから、この作品の意味にもウィントン等の考えにアンチする意味もあったのかもしれない。

 しかしまあそうした歴史的経緯と、音楽の内容そのものは別物と考えたいところである。どちらの意見も間違ってはいないし、どちらの音楽も素晴らしい。音楽はどんなものであれ、争いとは縁のないものであってほしいものだ。スポーツ観戦に熱狂している人たちの話を聴いていると、ついそういう気持ちになる。

 アンリ=テキシェの作品は、記念すべきえぬろぐ第1回目のCDだ。いま読み返してみると、半年前のこととは言え、いったい何書いてんだかという感じでちょっとお恥ずかしいが、あのアルバムはやはりいま聴いてもはじめて耳にした時の感動がよみがえる。相変わらずアメリカからはいいジャズの便りが聞こえてこないが、僕も一度アメリカからヨーロッパへとジャズが広まった道を旅してみたいという気持ちになった。まだまだこの音楽にはいろいろな楽しみがありそうだ。

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