7/24/2004

ジョン=スコフィールド「スティル ウォーム」

  この1週間は、前回のろぐでご紹介したジョン=スコフィールドの「エンルート」(フランス語の発音では「アンルート」となるのだそうです)をMP3プレイヤにいれて持ち歩き、仕事の行き帰りには、そればかりをひたすら聴きまくった。あれは本当にいい作品です。1週間聴き続けても飽きません。未聴の方はぜひぜひ。

 その際に、プレイヤの余ったメモリに収録したのが、同じくスコフィールドの1986年の作品「スティル ウォーム」である。国内発売された当時はなぜか「鯔背(いなせ)」というタイトルが付けられていた。わかったようなわからないようなタイトルである。これは、いわば彼の出世作ともいえる作品である。スコフィールドの名が多くの人に知られるようになったのは、ジャズトランペットの巨人マイルス=デイビスのグループへ参加したことがきっかけだった。

 この作品では彼の「変態フレーズ」とも言える独特のギターワールドがたっぷりと展開されている。作品はすべて彼のオリジナルで、その後の彼の十八番となった難解曲「プロトクール」をはじめ、いずれも名曲揃いの内容だ。ここからほぼ20年が経過した現在の彼の姿が「エンルート」だと考えると、その間、常に第一線にいながら、自分のスタイルを研究進化させる彼の努力は並々ならぬものだということが実感できる。煮詰まらない才能とでも言うべきか。多くの演奏家は、自分が変われないので、伴奏やスタイル、ジャンルなど周囲を変えて適応しようとするが、彼は様々なセッションに関わりながら、自身のスタイルも少しずつ進化させているところが素晴らしいと思う。これはきっと音楽の世界だけでなく、様々なところでも大切なことなのだろうと思う。

 さて、今日は朝から、数ヶ月ぶりにベースを持って川崎市内にある音楽スタジオ「八泉」さんに行った。考えてみれば独りでスタジオに入るのははじめての経験だった。そもそもエレキベースは、ヘッドフォンでも練習できるから、独りでやる分にはわざわざスタジオを借りる必要はないのだが、今日はどうしてもアンプで大きな音を出してみたかったのと、エアコンがよく効いた環境でじっくりと指慣らしをしてみたかったという理由から、わざわざスタジオに出向いたのだった。時間は1時間だけと比較的短かったが、指慣らしやら、楽器の調整、それからちょっとした作曲までできてしまい、なかなか充実したひと時だった。

 スタジオの人に訊いてみると、土日はなかなか繁盛しているそうで、この日もお昼以降の予定は3つあるスタジオすべてが夜までほぼ満杯という状態だった。同じ趣味の人がそれなりに頑張って活動しているのだなと知ると、なにやら嬉しくなると同時に自分も頑張らなくてはと感じた。このスタジオは、昨年にオープンしたレンタルスタジオで、何と言っても機材が新しいのが嬉しいところである。僕が学生の頃は、スタジオの機材と言えば、大きなヤマハのベースアンプだった。これはエレクトリックベースの本来の音色を、無味乾燥なうるさい音に変えてしまうという代物で、僕は大嫌いだった。スタジオ八泉さんのベースアンプはすべて米国SWR社のもので統一されており、これはなかなかクリアで力強い音を出してくれる。いい楽器を持っている人ほど、この楽器でよかった〜と感じさせてくれるのではないだろうか。

 最近はスコフィールドやジャコを聴いているせいか、今日は僕が2本持っているエレクトリックベースから、わざわざ重くて古い方のベースを持っていった。こちらはいかにもエレキベースと言う音色が気に入っているもので、今日は自己満ジャコになりきって楽しんだ。といってもなかなか指は思うように動いてくれず、もどかしい思いもした。またしばらくの間は、ちょくちょくスタジオに足を運ぶのも悪くないなと思った。SWRのキャビネット(スピーカのこと)から出てくる大きな音は、それだけで気持ちがよいものだった。

 終わった後は、京都本店のラーメン店「天下一品」でこってりラーメンを食べて、そそくさと家に戻り、ベースを置いてランニングウェアに着替え、午後の多摩川の河川敷を1時間ばかり歩いた。歩いている間は音楽は聴かなかったが、ジャコやスコフィールドの音楽が鳴り響き、僕の指はそれに合わせて動き続けた。

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