4/21/2013

マディで夜ごはん

土曜日の夜、妻が以前勤務していたところでのお友達と夕食を楽しむという。なかなか無い機会だろうからどうぞどうぞと見送ったものの、この週末はずいぶんと寒かった。

スイミング教室帰りの子どもを妻から引き受け、ちょっと山下公園の方まで歩いてみたものの冷たい雨が降り始めて、傘を持っていなかった僕たちは、夜ご飯のことを何も考えないまま、早々にバスで帰宅した。

家に帰っておやつを食べて、おもちゃで遊んだりテレビを視たりした。録りためてあった「楽しいムーミン一家」のなかの「ニョロニョロがぞろぞろ」を視た。ニョロニョロ好きにはたまらないお話である(ちょっとナウシカっぽいけど)。

そうこうしているうちに夕方5時半になった。外は相変わらず冷たい雨。家にある残り物で何ができるか考えようか、それとも近場に何か食べに行くか。

子どもに問うたところ、天気のことなど気にもしていないらしく「パパとおそとでたべたい」という。うーん「ほうちゃん」は先週行ったばかりだし、鳥京さんはこの天気だと歩くのはちょっと辛いし、だいわさんも2人だけで座敷を占有するのも忍びないしなあ。

そのとき遠くから聞こえてきた電車の音がある情景に重なり、いままで考えてもみなかったアイデアが浮かんだ。それは駅近くのバー「マディ」。カウンター以外に窓際に小さなテーブルがあって、その窓からは山手駅に出入りする電車が同じ目の高さで間近に見える。

マディ...バーだよなあ。そんなところに子どもを連れて行っていいものだろうか。食べものって何があったっけ。食事目的で入ったことなどはない僕には、他のお客さんがパスタかなんかを食べているかすかな記憶がある程度だった。

開店は6時だからそのタイミングで行けば、このお天気だし他のお客さんはまだ来てないだろう。もしいたら諦めて他の洋食屋さんにでも入ろう、そう決めた僕は子どもに「よしちょっと雨が降ってるけど、お外に行くぞ」と促した。

外は一層に寒くなっていたけど、子どもは大喜びである。出てすぐに近所の奥さんとすれ違ったが、まさかバーに行って来ますとは言えない。

三角形のらせん階段を登りながら、子どもは「このかいだんはどおーして...」と不思議そうだった。幸いまだ他のお客さんの姿はなく、マスターは快く店の中に僕と子どもを入れてくれた。

窓際の席に陣取りながら、やっぱり椅子が高いなあ大丈夫かなあと心配しつつ、先ず食べもののメニューを確認。マスターは「うちはつまみのメニューしかないですからねえ」とご謙遜。

結局、チーズの盛り合わせ、フィッシュ&ポテト、ミートソーススパゲティの3品を注文。忘れずに僕のギネスも入れてもらった。

子どもは薄暗い店内でカウンターだけという見たことのない店内の雰囲気に、幾分緊張気味のご様子。目の前を電車が通っても、ちょっとまだぎこちなく電車と店内を半々に観察している。

チーズ盛り合わせは4種。カマンベール、ゴーダ、スモーク、そしてレーズン入りのチーズに、クラッカーが数枚。

スモークチーズを指差したので渡してやると、いきなり口に一切れ放り込もうとするので、少しずつ、クラッカーと交互にかじるんだよと教えると、一丁前にそうするのだがほとんど5秒ごとに交互にパクつくのでそうそう時間は持たない。まあ仕方ないか。

スモークチーズとレーズン入りのが気に入ったようで、一切れ食べ終わるごとにリクエストがやってくる。クラッカーは当然すべて子どもに捧げた。そうこうしているうちにマスターが大急ぎでフィッシュ&ポテトを揚げてくれた。

ここで僕のギネスはなくなり(ハーフパイントですよ念のため)、バスペールと子どもにはオレンジジュースを注文。ようやく子どもも店の雰囲気に慣れたのか、表情がちょっとくつろいできたが、やはりお話する声は控えめであった。こんな子どもでもやはり察するものがあるんだろうなあ。

まあ変な安いチェーン店で食べるよりはよっぽどちゃんとした食べものがいただける。ミートソーススパゲティは、想像していたよりもはるかに美味しく、これはまた食べにきてもいいなあと思った。子どももさすがに満腹、そりゃそうだろう。

僕はバスのおかわりを注文しながら「やっぱりペースが早くなるねえ」とマスターに話すと「そうですかねえ」と彼も苦笑していた。子どもにもいろいろ話しかけてくれ、いつもと違う(当たり前か)一面をうかがうことができた。

いきなりマスターが「チョコ食べる?」と言ってくれて、もはや僕の顔色をうかがうまでもなく「たべるう」とか言っている。チョコってアレだよなあと思っていると、銀紙に包まれたハーシーズの大型キスチョコがマティーニグラスに盛られて登場してしまった。

こんなガッツりチョコを子どもに食べさせたとわかったらママに怒られると思ったが、当の本人は興味津々で「これがチョコお?」とすーっと手を伸ばしてつまみ上げている。仕方ないので「ひとつだけだよ、少しずつかじるんだよ」とあっさり許可。

冷蔵されていたハーシーをかじるのにはかなり難儀していたが、その味に取り憑かれたように指先をチョコだらけにしながら貪っている姿を見て、これはもう潮時だなと思いました(笑)。

「それ食べたら帰るよ」と言うと、子どもは残ったチョコに目をやり「もらってもいいの」と小声でささやくので、僕は「おじさんにきいてみなさい」(もはやちょっと酔ってましたか:笑)と言ってしまったところ、すかさずカウンターに向かって「もってかえってもいいですかあ」と言っている。こんなときだけはしっかりしてるねえ。

マスターが残ったチョコを快く袋に入れてくださり、お会計を済ませて、また冷たい雨のなか家路に就いたのでありました。他のお客様はまだお店に現れなかったので、幸いにも(?)ゆっくりさせていただき、本当にありがとうございました。料理も美味しかったです。

いつかママを連れてきてあげたいなあと思っていたのですが、まさかこんなことになるとは。翌日子どもからその不思議なお店の様子を聞いた妻は「ママだって行ったことないんだよ、そのお店」と大袈裟に悔しがり、子どもはますます満足げでありました。

今度は3人で行こうかな、いいですかねマスター?


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