8/21/2011

干反る音

暑い毎日が続いていると思ったら、金曜日から天気が雨模様になり、気温が大きく下がった。週末は半袖半パンではちょっと涼しいのを通り越すぐらいの涼気。クソ暑いよりはいいのだが、なんとなく寂しい感じもする。そういえば日も少し短くなって来たのを感じる。

少し前から高柳昌行の音楽をいくつか聴いているうちに、彼がベーシストの井野信義といろいろな活動をしていたことを知った。僕が気になったのは彼らがデュオでいろいろなところで演奏活動をしていたこと。残念ながらスタジオ録音の作品はない。

2人のデュオ演奏の模様を収録したDVD"The Complete Works of Jojo ; Jazz 1"を、版元のJINYA DISCから買い求めた。名古屋のラブリーでのライヴを収録した8mmビデオ(もはや過去のフォーマットになってしまったようだ)の映像と音声なのだが、そこで初めて映像で見た井野さんのベースには強く惹かれた。

フリーありタンゴありスタンダードありとバライティに富んだ内容は、2人の豊かな音楽性あってのもの。「激しい個性のぶつかり合い」とかいわれるようなものではなく、「息のあった名人芸」という方がしっくり来る。同日の演奏の一部に、別の日の新宿ピットインの演奏を加えたアルバム「リーズン・フォー・ビーイング」も気になるなあ。

もう一つ、2005年に収録されたソロ作品「干反る音」は、井野さんのベースの魅力が詰まった素晴らしい作品だった。正確な技術や深い音楽性の一方で、とても親近感がわく気持ちがいいベースだ。(作品の内容はリンク先でmp3ファイルの試聴ができます)

冒頭、グレゴリア聖歌を題材にアルコで多重録音された「ひせきにこもりて」には、思わず聴き惚れてしまう。以後、高柳に捧げられたタンゴの「忘却」やら「ロータスブロッサム」等々全12曲は、井野さんの豊かなキャリアに裏付けられたベースによる回顧録とでもいう内容。

こういうものを聴いていると、ついついリヴィングに立てかけてあるベースに手が伸びてしまう。井野さんの域には到底達するものではないが、ずっと以前から思っている自分がベースで表現したいものに、少なからずの刺激を受けたことは間違いない。

いつになることかわからないが、その日が来ることに備えて、せめて楽器の感覚だけは忘れないようにしたいものだ。



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