12/13/2009

アパショネード

スタン=ゲッツが晩年にケニー=バロンとのデュオで演奏した「ピープルタイム」が、CD7枚組の完全盤で再発されている。この知らせをネットで見かけた時は一瞬触手が動いたのだが、そこのところは最近抑制が利いていて、すぐさま天の声が聞こえてくる。

「待て、えぬろぐよ。それを買ったところでお前は今後何回それを聴くと思うか?そのなかの2枚分はもうお前のお気に入りのはず。それで満足すればいいのではないか?そんなものよりもっと他に聴かなければならないものはたくさんあるはずじゃ。商売に惑わされてはいかんぞ。」

というわけで、久々にゲッツの名に触れたところで僕が思いだしたのは、彼が生前何かのインタビューで「あなたが最も気に入っている自分の作品は?」と問われて答えていた作品のこと。それが「アパッショネード」である。さっそくiTunesでダウンロードしてみた。

これはゲッツが亡くなる2年前に行われたセッションで、7菅からなるホーンセクションにシンセサイザーやエレキギターなど電子楽器を交えた、いわゆるオーケストラ作品である。ピアノは晩年のパートナーであるケニー=バロンが参加し、変わったところではジェフ=ポーカロがドラムを務めている。

ゲッツの返答は音楽を一聴すればすぐに納得できる。ディテールまでかなり綿密に作り込んだアレンジメントの上を、おなじみの軽快なテナーサックスが駆け巡る。こんな気持ちのよい音楽はそうそうあるものではない。

かなり寒くなってきたものの、まだ冬らしさは感じられない。仕事ではゴタゴタ続きだが、前年を下回ったもののなんとか無事にボーナスも支給され、少しほっとした週末だった。子供を抱っこしてゲッツの咆哮に耳を傾けていたら、いつの間にやら彼はすやすやと眠りに入っていた。それほど(?)心地よいサウンドをたたえたアルバムである。名作!

Stan Getz - Apasionado iTunesでダウンロード

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